【危険な実験】巨大振り子を作って力学的エネルギーの保存則を体感しよう
大きくて危険な実験
今日はちょっとばからしいのですが、実験を大きくすることで面白くなる事例を紹介します。ご自宅でも工夫をすればできるので、お子さんを驚かせてみてください。なお、理論上は大丈夫なのですが、この実験は少し危険も伴いますので、必ず保護者といっしょにやりましょう。
実験のコツ
実験をするときのコツは2つあります。1つ目は、2人に1つができるように実験を用意すること、もう1つ目が、それができない場合は大きく見せることです。
よくないのは、小さな実験を生徒の前で演示で行うことです。実験道具が小さいので、なかなか全員が見ることができず、見えない生徒から不満がでたり、授業自体に興味を失うことがあります。
そこで実験を大きく見せる工夫をするわけですが、コツは2つあります。1つ目は書画カメラをつかって小さいものでも大きくして見せるということです。もう1つは実験道具を大きく作り直すということです。
今回はその作り直すという事例についてご紹介します。
振り子の実験は非常に現象が小さくて全員に見せることが困難です。ただし巨大化させるのは比較的労力はいりません。今日はそんな巨大振り子をつかった実験をご紹介します。
科学のレシピ
用意するもの:
鉄アレイ(1〜3kg程度)、丈夫な糸(荷重を見て買いましょう)、ストップウォッチ、メジャー
方法:
① 鉄アレイに丈夫な糸をつけて天井から吊るします。できるだけ大型化させるのがコツなので、天井から床すれすれまでの振り子を作りましょう。
② この振り子のそばに椅子をおき、椅子にすわって鉄アレイをもちあげて顎につける。
③ そっと手をそっとはなしたときに(初速度0)、振り子運動をしてかえってきた鉄アレイが顎を砕かないということを観察する。
見ている人の反応
実際にやってみると、力学的エネルギーが保存するので同じ高さ以上にはかえってこないことがわかっていても、かなり怖い。生徒の前で実演をする前には何度か練習をしておくといいとおもいます。
また生徒の様子を見ていると、「わー!!」「きゃ〜〜!!」など、悲鳴をあげて観察をします。理論と現実とのギャップが楽しい実験です。
この実験の科学
この実験は、仕事が0の場合、力学的エネルギーが保存をするという法則を利用しています。力学的エネルギーとは、位置エネルギーmgh・運動エネルギー1/2mv^2・(弾性エネルギー1/2kx^2)の和のことです。手を離す前の鉄アレイは、位置エネルギーをもっていて、運動エネルギーはもっていません。
例えば次の図のように力学的エネルギーが100Jだとすると、その内訳は位置エネルギー100J、運動エネルギー0Jということになります。
鉄アレイには今回糸からの張力が働いていますが、この張力は運動に対して垂直なので、仕事(W=Fx)をしません。
このとき最下点にきたときの力学的エネルギーは、位置エネルギーが0J、運動エネルギーが100Jの合計100Jとなり、速度が最大になっています。このように振り子運動では力学的エネルギーは常に同じ値になります。これを力学的エネルギーの保存といいます。
ストロボ写真の映像です
この力学的エネルギーが常に保存をして変化しないので、鉄アレイが到達できる最大の高さは、はじめに手を離した場所となるので、顎をくだくことはありません。
発展系 振り子の周期
せっかくこの実験を組んだので、振り子の周期を測ってみるとおもしろいとおもいます。糸の長さをあらかじめ測っておき、物理基礎の場合には、周期を計算して(T=2π√L/g)、求めておきます。その値を生徒の前で予告しておきます。そして振り子を任意の振れ幅で(生徒にやらせるとよい)ゆらして、振り子が10回振れて戻ってくるまでの時間をストップウォッチで測定し、その時間を10で割り、1周期の時間を求めます。
それを予測値と比べると、ピッタリと一致するので感動をします。これは振り子を大きく作っているので、カウントがしやすくなったり、おもりの質量が大きいため空気抵抗による誤差が減り、ぴったりと一致しやすくなるためです。
物理(発展)を選択している生徒がいる場合は、生徒に振り子の周期を公式をつかって計算をさせて(T=2π√L/g)、実際に確かめると公式の有用性に気がつくでしょう。
参考
ルーウィン先生の『これが物理学だ!』にこれらの実験は収録されていますので、もしよろしければ御覧ください。非常におもしろく、本とDVDを私も買ってしまいました。
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