「ガンダム」じゃダメだった!女子校物理教師が発見した物理を教える最強のネタはあのテーマパーク!

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

授業の導入で大失敗!生徒の心を掴む「身近な科学」を見つけるまで教育実習や人前で何かを教えるとき、「どうやって話を始めるか」に頭を悩ませたことはありませんか? 授業の最初の数分間で、聞き手の興味を一気に引きつけられるかどうか—これは、教える内容がどれだけ頭に入るかを決める、非常に大切なカギになります。今回は、一般的に誰かに物事を教えるときにも役立つ、私の失敗談から得た教訓についてご紹介したいと思います。

教師デビュー直後の大失敗談!「ガンダム」で生徒は凍りついた

みなさんは授業の導入でどんなお話をしていますか?私が教師として務め始めた当初は、よく「ガンダム」について話しをしていました。ガンダムは、その世界観が非常に綿密に作られており、物理法則などの説明をするときに、重力や慣性、熱力学など、授業で使えるいろいろな科学的なネタがあるのですね。私は熱心に語りました。しかし、私が当時勤めていたのは女子校でした。熱を込めてガンダムの話しをしても、生徒はまったく反応せず、冷ややかな目でこちらを見つめるだけでした。確かスペースコロニーと慣性力の話だったと思います。

生徒反応の様子

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まさに、こんな反応です!

それもそのはず、ガンダムは当時の女子生徒にとって、まったく興味がないテーマだったためです。スクリーンショット 2016-06-09 5.32.27生徒の心を掴むキーワードはどこに?導入で話すネタが生徒に響かないと、その後の授業の集中力まで落ちてしまいます。この失敗から、「生徒が本当に好きなもので、しかも物理や科学に繋がるテーマは何だろう?」と真剣に悩み続けました。生徒の興味関心を知るために、普段の会話やアンケートを繰り返した結果、とうとう見つけたのがこちらです。

スクリーンショット 2016-06-07 5.30.01この写真は、ディズニーランドのオフィシャルガイドブックに載っていたものです。そう、答えは「ディズニーランド」でした

スプラッシュ・マウンテンに隠された「物理の法則」

いろいろ調べてみると、私の勤めていた学校の生徒は、ほぼ100パーセント毎年ディズニーリゾートへ行っていることが分かりました。私の田舎では、一生に一度か二度行くかどうかという場所だったのですが…。そこで、私は生徒たちが大好きで身近なテーマであるディズニーリゾートのアトラクションを徹底的に調べることにしました。スクリーンショット 2016-06-09 5.36.54今回示した「スプラッシュ・マウンテン」のガイドブックには、クライマックスの滝壺への落下が「時速62km」と書かれていました。ジェットコースターは、高いところまで持ち上げられた後は、エンジンを使わずに単に重力によって落ちていきます。つまり、位置エネルギーが運動エネルギーに変換されているだけです。ですから、落差(高さ)さえわかれば、エネルギー保存の法則を使って最高速度を計算することができるのですね。調べてみると、ガイドブックに「落差16m」と書かれていました。これをもとに物理の数式に代入してみると、落下時の最高速度  は、落下開始時の高さ、重力加速度  から、次のように計算できます。スクリーンショット 2016-06-09 5.32.37なんと、ガイドブックに書かれていた時速62km(約17.2m/s)とかなり近い値になります。これには生徒たちも「へぇ!」と驚き、目を輝かせてくれました!この成功体験をきっかけに、他のジェットコースターの落差と最高速度を調べ始める生徒まで現れたのです。こうして、生徒を物理の世界に引き込むことができました。

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より詳しくはこちらの記事もご覧ください。

落差16mの恐怖、理科で解明!スプラッシュマウンテンを数式でのぞく【ディズニーランド物理学】

教えることは「生徒の目線に立つ」こと

生徒の興味を理解して、授業のネタに変換する。このちょっとしたことですが、教える側の視点ではなく、生徒の目線から考えることが、授業や講義を作るときにとても大切になります。教育実習をされる方、また誰かに何かを教える機会がある方は、ぜひ普段から生徒や聞き手が好きなものを会話の中から聞き出してみてください。それが、学びを深める第一歩になりますよ。

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