微積でスッキリ!円運動の加速度を数学的に導いてみよう(微積分その4)

ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。

高校の物理では、数学の進度の関係もあり、微積分を使わずに説明されることが一般的です。しかし、実際には微積分を用いることで、物理の概念をよりスッキリと理解できることが多くあります。

例えば、運動の公式やエネルギーの関係式など、微積を使えば「なぜこの式になるのか?」という疑問がクリアになります。ただ暗記するのではなく、理論的な背景を理解できるのが微積の強みです。

今回は、微積を使ったほうが理解しやすい範囲の解説シリーズ第4回として、「円運動の加速度」の導出を行ってみましょう!

円運動とは、物体が一定の半径を持つ円軌道を描きながら運動する現象です。このとき、物体には「向心加速度」と呼ばれる加速度が生じます。この向心加速度を、微積を使ってどのように導出できるのか、一緒に考えていきましょう!

前回の記事はこちらをご覧ください。

ベクトルの成分表示を使いこなす!斜方投射と微積分その3

円運動の加速度の大きさは、

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と表されますね。向きは円の中心方向を向きます。このことについて考えてみましょう。次の図のように円上を等速で動く、ある点Pの速度vは、点Pでの接線方向を示す単位ベクトルkを使って、

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(速度=速さ×接線方向の単位ベクトルk)

と表されます。ここで太字はベクトル量を示します。

 

加速度の定義から、速度を微分してみましょう。

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となります。ここで右辺の1項は速さの変化(dv/dt)を示しています。等速円運動の場合には、速さの変化がないので、この項はdv/dt=0より、0になります(等速ではない場合には、必要になります)。2項は単位ベクトルkの変化による加速度を示します。つまり速度の向きの変化によって必要な加速度です。

 

今回は等速円運動の場合について考えるので、1項は0にして2項にのみ焦点を絞ります。

スクリーンショット 2015-06-17 16.10.03

それでは、このdk/dtについて求めていきましょう。

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dkを求めるために、2つのベクトルの始点をそろえて、Δkについて考えてみましょう。ここでnバーについては、三角形BCの方向を持つ単位ベクトルとしました。単位ベクトルkの変化量であるΔkは、2つの速度の単位ベクトルk(t)とk(t+Δt)を並べて見ると、次の場所になります。

スクリーンショット 2015-06-17 16.10.20

このことからdk/dtについては次のように表すことができます。

スクリーンショット 2015-06-17 16.10.24

二等辺三角形ABCの角Aから二等分をすると、直角三角形2つにわけられます。

スクリーンショット 2015-06-17 16.10.31

このためΔkの値の大きさは、1×sin(Δθ/2)×2となります。BCの向きを向いた単位ベクトルnバーを使うと、

スクリーンショット 2015-06-17 23.16.27

となります。Δtを0に近づけると、Δθは0に近づき、かつ角ABCは90°になるため、nバーは、ABの接線である単位ベクトルになります。また別の数学の公式として、

スクリーンショット 2015-06-17 18.52.24

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という関係式があります。これも使います。

 

それでは、これらのことから、式②のdk/dtを作り替えていきます。

スクリーンショット 2015-06-17 23.17.07

ここで、Δt→0のときΔθ→0なので、

スクリーンショット 2015-06-17 23.17.39

となり、またΔt→0のとき、nバーは単位ベクトルになるので、

スクリーンショット 2015-06-17 16.10.54

となります。このことから、加速度は次のようになります。

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公式を導くことができました。

高校物理の教科書を開くと、このようなことについて微積を使わないで説明がされています。ただし少し違和感を覚えるところがあるかもしれませんね。それは、今回のような微積を使わないで、頑張って説明をしているからそう感じるのかもしれません(^^;)。

参考としたのは、新物理入門と数学の本です。新物理入門は理系に進む人は必読書です。少しむずかしいですが、ぜひ受験中または、終わった時に手をだしてみてくださいね。

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