なぜ棒は止まるのか?フレミング左手の法則「斜面問題」の落とし穴を攻略せよ!

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

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「目に見えない磁石の力で、重い金属の棒が斜面をスルスルと登ったり、ピタッと止まったりする」。そんな魔法のような現象が、理科の教科書には登場します。フレミング左手の法則。中学生で習うこの有名な法則ですが、いざ試験の「滑り台の問題」として出てくると、急に難易度が上がったように感じてしまいませんか?実は、この問題が難しく感じるのには、私たちの脳が起こす「ある思い込み」が関係しているのです。

フレミング左手の法則と滑り台の謎

よくある「滑り台の上を滑る棒」が、どんな仕組みで動いたり止まったりするのか、頭の中が混乱してしまいます。この問題は高校入試や定期テストでの定番ですが、図が複雑で「どの力がどっちに向いているのか」がわからなくなってしまう生徒さんが多いようです。私は今年、高校2年生の授業は担当していませんが、それでも多くの生徒から「ここがどうしても苦手なんです!」と質問を受けます。皆さんが一番やってしまいがちな間違いが、下の画像のように「導体棒に斜面上向きの力が直接はたらいている」と思い込んでしまうことです。

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「斜面を登らせたいんだから、斜面方向に力があるはずだ」という直感は自然なものですが、物理の世界ではその直感が落とし穴になります。苦手意識がある方は、ぜひ今回の解説を読んで、視点の切り替え方をマスターしてくださいね。

今回挑戦する問題:静止する導体棒

鉛直方向(真上向き)に磁場(磁束密度 B)がはたらいている空間に、傾斜角 θ の滑り台をつくりました。スクリーンショット 2015-02-05 8.16.03滑り台の幅は $L$ で、摩擦はないものとします。ここに自由に動く導体棒をのせ、電流 I を流しながら手を離したところ、磁束密度をうまく調整したため、導体棒は静止したまま動かなくなりました。このときの磁束密度の大きさ B を求めてみましょう。

解答・解説:大切なのは「真横」から見ること

重力に逆らって止まっているのだから、電流が磁場から受ける力 F = LIB が、最初から「斜面上向き」を向いていてほしいですよね。その気持ちは本当によくわかります。

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しかし、実際には力は斜面上方向を直接向くわけではありません。このような3次元の立体的な問題を解くコツは、「特定の方向から見た2次元の図」に切り取ることです。今回は斜面の真横から、この装置を覗いてみましょう。

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この目の方向から見ると、図は次のようにシンプルになります。

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さあ、ここで左手を使ってみてください!中指(電流)、人差し指(磁場)を合わせてみましょう。親指は斜面上方向を向いていますか?

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こうはなりませんよね!実際に左手で確認すると、親指は「水平な右方向」を向くことがわかります。

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このように、電流が磁場から受ける力は水平方向を向きます。ここまでわかれば、あとは力学の知識で解決できます。導体棒にはたらく力をすべて書き出してみましょう。

力の見つけ方

1 重力をひく(今回は電流が磁場から受ける力 $LIB$ もここでプラス!)

2 物体が触れているもの(斜面)から受ける力「垂直抗力 N」を引く

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この状態で導体棒は静止しているので、力のつり合いの式を作ります。斜面の問題では、力を「斜面に沿った方向」に分解するのが鉄則です。

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図から、斜面方向の力のつり合いを考えると以下のようになります。

斜面方向:LIB cosθ = mg sinθ (式①)

(斜面を登ろうとする力 = 斜面を降ろうとする力)

ちなみに、斜面に垂直な方向は以下の通りです。

斜面垂直方向:$N = mg cosθ + LIB sinθ (式②)

今回求めたいのは磁束密度 $B$ なので、式①を $B$ について解くと…

B =  スクリーンショット 2015-02-06 14.52.26

となります。これが答えです!

学びのまとめ:物理は「視点」で決まる!

今回のような3次元の問題を考える最大のポイントは、「視点の切り替え」「適切な断面での切り取り」です。私たちの目はついつい全体を眺めてしまいがちですが、複雑な現象ほど「自分が一番考えやすい方向」から切り取って見ることが大切です。特に斜面の問題は、斜面の角度がはっきりと見える「真横」から見るのが一番の近道。

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物理の計算は、式を立てるまでが勝負です。今日のお土産として、この「横から見る切り取り術」をしっかり持って帰ってくださいね!

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