蛍光灯と太陽は全然違う光?手作り分光器で「スペクトルの秘密」に迫る!
桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
ご家庭や学校にも眠っているかもしれない、「いらなくなったCD」。今回はそのCDの欠片を使って、なんと「簡易分光器」を作る方法をご紹介します! 自作の分光器で身の回りの光を覗けば、蛍光灯の光と太陽の光が、実はまったく異なる「色の組み合わせ」でできていることに気づくでしょう。
自作分光器で光の正体を暴け!授業での活用ポイント
このCD分光器は、以下の単元で大いに活躍します。
- 「光の性質」
- 「光と色」
- 「光と物質」(発展として)
市販の分光器は高価だったり、取り扱いが難しかったりすることもありますが、この自作分光器なら、手を動かし、光のスペクトルを直接観察できます。「光って、こんなにたくさんの色でできているんだ!」「蛍光灯と太陽の光って全然違う!」という感動は、知識の定着だけでなく、科学的な探究心を育むきっかけとなるでしょう。
準備方法と必要なもの・手順
簡易分光器の作製は、驚くほど簡単で、身近な材料で完結します。
準備するもの
- CD(不要になったもの): 光の回折に利用します。DVDでも代用可能ですが、CDの方がアルミ層を剥がしやすい傾向にあります。
- アルミ缶(空き缶): 分光器の本体として利用します。ジュースやお茶の空き缶でOKです。
- ペンチ、カッターナイフ、ハサミ: CDの切断やアルミ缶の加工に使います。取り扱いには十分注意し、必要に応じて保護者や教員が介助・監督してください。
- マスキングテープ: 加工部の安全確保や、CDの固定に使います。
- 光源: 蛍光灯、白熱電球、LEDライト、太陽光など、様々な光を比較するために用意しましょう。
- 定規、ペン: 作業の補助に。
実施手順
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CDの加工:
- CDをペンチなどで小さく切り取ります(一辺2~3cm程度)。
- 切り取ったCDの破片の上についているアルミの部分を、カッターナイフやハサミの刃先などで慎重にカリカリと削り取ります。すると、青みがかった透明な部分が現れます。これが「回折格子」として機能する部分です。
- この透明な部分の面積が広すぎると、スペクトルが見えにくくなることがあるので、適度な大きさに調整しましょう。
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アルミ缶の加工:
- 空き缶の「飲み口」部分に、加工したCDの透明な部分をテープなどでしっかりと固定します。光を覗き込む部分になります。
- 缶の「側面」に、カッターナイフなどで細長いスリット(幅1mm程度、長さ1~2cm程度)を開けます。これが光を取り込む穴になります。
- 開けた穴の周囲は鋭利になりがちなので、怪我をしないようにマスキングテープを貼って保護しましょう。
- 空き缶の「飲み口」部分に、加工したCDの透明な部分をテープなどでしっかりと固定します。光を覗き込む部分になります。
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実験の実施:
- 作成した分光器のスリットに様々な光を当てながら、飲み口に固定したCDの破片部分を覗き込みます。
- 蛍光灯の光を覗いてみる: きれいに分かれた**「線スペクトル」**が観察できるはずです。それぞれの色の光が、特定の波長を持つことを視覚的に捉えられます。
- 太陽光を覗いてみる: 蛍光灯とは異なり、途切れることなく連続的に色が変化する**「連続スペクトル」**が見えるでしょう。これは、太陽光が様々な波長の光を連続的に含んでいることを示しています。
- その他、白熱電球やLEDライト、スマートフォンの画面など、身の回りの様々な光源を分光器で覗いて、それぞれの光の「色分解」を観察し、記録してみましょう。
分光器・回折格子から生まれる疑問
- 蛍光灯の光が線スペクトルになるのはなぜだろう?(原子が出す光と関連付けて)
- 太陽光が連続スペクトルになるのはなぜだろう?(熱源が発する光と関連付けて)
- 回折格子が光を分ける原理は?(光の波としての性質、回折現象)
- 異なる光源によってスペクトルが違うのは、私たちの目に届く「光の正体」がそれぞれ異なるからだ、ということを生徒に気づかせましょう。
この自作分光器の実験は、光の波としての性質、物質から放出される光の多様性、そして光が私たちの目にどのように色として認識されるのか、といった多岐にわたる科学的視点を提供してくれます。
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