ワイルドミニ四駆で綱引きバトル!勝つのは「重い方」か「軽い方」か?

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

ワイルドミニ四駆をつかった科学実験

みなさんは、タミヤの「ワイルドミニ四駆」を知っていますか? 普通のミニ四駆はスピードを競うスマートなマシンですが、それよりもタイヤが2〜3倍も大きくて、ゴツゴツとした車体を持ち、障害物を軽々と乗り越えていくのがワイルドミニ四駆です。まさに「オフロードの王者」といった風格ですね。

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外で走らせるとミニ四駆との違いがよくわかります。このワイルドミニ四駆を眺めていて、あることに気が付きました。 この大きなゴム付きの車輪は、中が中空(空洞)になっていて、地面に食い込むように変形し、摩擦力(まさつりょく)が大きくなるように作られています。つまり、グリップ力がものすごく強いのです。

「もしかしたら、摩擦力の実験に使えるかもしれない!」

そう思って2台を買ってきてあれこれ試していたら、物理の法則が目に見えてわかる、とても面白い実験ができることがわかりました。今日はワイルドミニ四駆をつかった「科学のレシピ」のご紹介です。

科学のレシピ

目的:

2台のワイルドミニ四駆を背中合わせにして「綱引き」をさせます。 このとき、摩擦力の要素である「摩擦係数(面のザラザラ具合)」や、「垂直抗力(重さ)」を変化させると、どちらのミニ四駆が勝つのかを調べます。

用意するもの:

ワイルドミニ四駆(2台)、糸(たこ糸など)、おもり(みかん等でも可)、ぞうきん、やすり、下敷き

方法:

① ワイルドミニ四駆を2台組み立てます。 【重要ポイント】 このとき、電池ボックスに工夫をして、電池1本(1.5V)でも動くように導線を通してください。本来の電池2本(3V)だと、モーターのトルク(回転する力)が強すぎて、綱引きをした瞬間にウィリーしてひっくり返ってしまい、うまく実験ができません。

② 2台のワイルドミニ四駆のお尻同士を、たこ糸で結びます。

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③ 2台のスイッチを同時に入れて、綱引きをさせます。 条件が同じなら、その場で車輪が空まわりして、拮抗(きっこう)します。(実はこれだけでも、生徒たちは「おおー!」と喜びます)

④ この状態で、片方のマシンの下の地面に「雑巾」「やすり」「下敷き」などを敷いて、面の状態を変えたときに、どちらに動くのかを観察します。

⑤ 片方のミニ四駆の上に「おもり(みかんなど)」をのせたりして、重さを変えるとどのようになるのかを観察します。

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例えばみかんを載せてみると…。

結果:

実験をしてみると、直感的に面白い結果が得られます。 つるつるした下敷きの上ではタイヤが滑って負けてしまいますが、雑巾ややすりの上だと踏ん張りが効いて勝ちます。 また、おもり(みかん)を乗せた方のマシンのほうが、明らかに綱引きに強くなることがわかります。

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この実験の科学:なぜ「重い」ほうが勝つのか?

高校物理の問題では「摩擦力が無視できるとき(摩擦はないものとする)」という条件がよく出てきます。そのため、摩擦力=動きを邪魔する悪者、というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、車やミニ四駆にとって、摩擦力は前に進むための大切な力(駆動力)なのです。 氷の上で走ろうとしても滑って進めないのと同じで、タイヤが地面をしっかりと捉える(摩擦がある)からこそ、その反作用で前に進むことができます。ワイルドミニ四駆を手の上で走らせてみると、タイヤが皮膚をグイグイと蹴る力を感じるはずです。これが摩擦力の正体です。

車輪の作用・反作用の関係

この綱引きに勝つためには、より大きな摩擦力が必要です。摩擦力の大きさは、以下のシンプルな公式で表されます。

F = μN

(最大摩擦力 = 静止摩擦係数 × 垂直抗力)

この式を今回の実験に当てはめてみましょう。

  • μ(ミュー):静止摩擦係数 これは「面の滑りにくさ」を表します。ぞうきんややすりを敷くと、この数値が大きくなり、摩擦力がアップして勝ちます。
  • N(エヌ):垂直抗力 これは、地面が物体を支える力で、平らな場所では「重さ」に比例します。おもりやみかんを乗せると、タイヤが地面に強く押し付けられ、摩擦力がアップして勝ちます。

重い場合と軽い場合

生徒たちに予想させると、「重いと動きにくいから負けるんじゃない?」と考える子もいます。 しかし、相撲と同じで、押し合い(引き合い)の勝負では、体重が重いほうが地面を強く捉えることができるので有利になるのです。理屈だけでなく、実際に目の前でミニ四駆が競い合う姿を見ることで、摩擦の公式がスッと頭に入ってくるおすすめの実験です。

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