鏡の中の自分は「細胞」の集合体だった!綿棒一本で始めるミクロの探検隊(ほお(頬)の細胞の観察)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
鏡の中に映る自分。私たちはその姿を「ひとつの体」として捉えていますが、その内側をのぞいてみると、実は何十兆個もの小さな「細胞」が集まってできた、巨大な都市のような存在であることに気づかされます。
中学理科の「生物の観察」で登場する実験の中でも、特にワクワクするのがヒトの頬(ほお)の粘膜細胞の観察です。何といっても、自分自身の体の一部を、その目でありのままに確認できるのですから。特別な器具は必要ありません。身近な綿棒一本で、自分のミクロな正体に会いに行けるのです。
今回は、誰でも失敗せずに「自分の細胞」を鮮明に捉えるためのコツと、その裏側に隠された生命の神秘について、プロの視点で解説していきます。
自分自身のパーツを見てみよう!実験の手順
この実験は非常にシンプルですが、丁寧に行うことで顕微鏡操作のスキルがぐんと上がります。プレパラート作成の「ちょっとしたコツ」が、観察の成功を左右します。
細胞の採取
まず、清潔な綿棒を使って、自分の頬の内側をやさしく数回こすります。

※口の中は唾液による自浄作用がありますが、衛生面を考え、綿棒は必ず袋から出したての新品を使いましょう。
スライドガラスへの塗布
採取したばかりの細胞をスライドガラスにこすりつけて広げます。このとき、「薄く、均一に」伸ばすのがポイントです。塊になってしまうと、顕微鏡で見たときに細胞同士が重なってしまい、構造がよく見えなくなってしまいます。
水ありプレパラートの作成
比較のために、まずは染色しない状態を作ります。スライドガラスに水を1滴たらし、カバーガラスをかけます。ここで「柄付き針」の出番です。カバーガラスを端からゆっくり斜めに倒していくと、気泡(空気の泡)が入らず、プロのような仕上がりになります。
染色プレパラートの作成
次に、細胞の構造をはっきりさせるための「染色」を行います。酢酸カーミン液を1滴落とし、3分ほど待ちます。なぜ待つのか? それは細胞の「核」に染料がじっくり染み込む時間が必要だからです。液を使いすぎると細胞が流されてしまうので、「ほんの1滴」を意識しましょう。3分後にカバーガラスをかけます。
準備ができたら、いよいよ顕微鏡をのぞきます。40倍(10×4)で探していくと、ゴミみたいで生徒は探しにくいと思います。

ですので、コツとしては、2つ目の、100倍(接眼10倍×対物10倍)で探すといいと思います。細胞が散らばっている場所を宝探しのように探します。例えばこちら。何か塊がありますね。

くしゃくしゃっとしていますが、核が見えます。「これだ!」というものを見つけたら、一気に400倍へ。そこには、平らで不規則な形をした細胞と、その中心で赤く染まった「核」が姿を現します。
(40×10)

複数の細胞が重なっていますが、見えました。核が染まっていて、ボールのようなものが見えますね。

こちらは別の細胞です。100倍。


そして一番よくみられたのがこちらです。とても綺麗ですね。


核の中には、あなたの髪の色や目の形、そして生命を維持するためのあらゆる情報が詰まった「DNA(設計図)」が保管されています。なぜ核は赤く染まるのでしょうか。
細胞の核の中には、遺伝情報を持つDNAが詰まっています。DNAは化学的に「リン酸基」という部分を持っており、水溶液中では負の電荷を帯びています。染色液である酢酸カーミンに含まれる「カーミン(色素)」は、酢酸に溶けることで正(プラス)の電荷を持つようになります。このように、プラスの電気を持ち、マイナスの性質を持つ物質を染める色素を「塩基性色素」と呼びます。
プラスの電気を持つカーミン分子は、磁石のようにマイナスの電気を持つDNAに強く引き寄せられ、結合します。これにより、DNAが密集している「核」や「染色体」に色素が集中し、濃い赤色に見えるようになります。
名前に「酢酸」と付いているのには、単に溶媒としてだけでなく、重要な2つの役割があります。
• 細胞の固定: 細胞を生きている状態に近いまま固め、構造が崩れないようにします。
• 浸透の促進: 細胞膜の通りを良くして、色素が核まで届きやすくします。
まとめると、細胞全体にも少しは色が付きますが、核にはマイナスの電気を持つDNAが非常に高い密度で存在しているため、他の部分に比べて圧倒的に多くの色素が結びつきます。その結果、顕微鏡で見たときに核だけがくっきりと赤く浮かび上がって見えるのです。
頬の粘膜をほんの少しこするだけで見える、この小さな世界。私たちは、このような細胞が途方もない数集まって、考え、動き、笑っています。植物の細胞(タマネギなど)と見比べてみると、動物の細胞には「細胞壁」がないことに気づくでしょう。この「柔らかさ」こそが、私たちが複雑に体を動かせる理由のひとつです。顕微鏡を通して見る景色は、ただの知識ではなく、私たちが「生きている」という実感を教えてくれます。
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