【物質の溶け方】一粒の砂糖が語る宇宙の法則?混ぜずに広がる「拡散」のドラマを観察しよう

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験!

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紅茶を入れたカップに、そっと角砂糖を沈める。かき混ぜていないのに、琥珀色の波紋がゆっくりと、しかし確実に広がっていく…。そんな光景を目にしたことはありませんか?

「まあ、溶けるんだから当たり前だよね」

そう思うかもしれません。しかし、その「当たり前」にこそ、私たちの目には見えないミクロな世界の、壮大なドラマが隠されています。今回は、たった一粒の角砂糖が主役の、静かで美しい科学実験をご紹介します。中学1年生が「水溶液」の世界に初めて触れるとき、その面白さと奥深さをきっと感じてもらえるはず。準備は驚くほど簡単。さあ、一緒に見えない世界の扉を開けてみましょう。

静寂の中で始まる、色のダンス

実験の主役は、シャーレと一粒のコーヒーシュガー。そして、ただじっと見つめるあなたの目です。シャーレの水の中に角砂糖を置くと、まるで魔法のように、じわじわと色が広がり始めます。

誰もかき混ぜていないのに、まるで意志を持っているかのように、均一に、静かに。生徒たちはきっと、自然とこう呟くはずです。「なんで、混ぜていないのに広がるの?」

用意するもの

まずは身近な道具を揃えましょう。特別な薬品は必要ありません。

  • シャーレ(透明で底が平らなものが観察しやすいです)
  • コーヒーシュガー(色がついていて、ゆっくり溶けるザラメ糖が最適)
  • (常温でOK。シャーレの底が隠れる程度で十分です)
  • 100mLビーカー(水を静かに注ぐために使います)
  • 台紙(同心円の目盛り入り。色の広がりを記録できます)

※台紙はシャーレの下に敷いて使います。手作りでももちろんOKですが、私が作成したPDFをご用意しましたので、よろしければご活用ください。

同心円(コーヒーシュガーの溶け方)(PDF)

観察のしかたと授業の流れ

実験を成功させるコツは、とにかく「動かさないこと」です。

  1. 水をシャーレに静かに入れます(底がうっすら隠れるくらい)。
  2. 水の動きが止まったら、中央にそっとコーヒーシュガーを落とします。
  3. ここが一番のポイント!絶対に混ぜず、揺らさず、息をのんで見守ります。
  4. 2分おきに10分間、色がどこまで広がったかを台紙の目盛で記録します。

ただ静かに変化を観察する時間そのものが、豊かな学びにつながります。

コントラストを強くすることで、また違った世界が見えてきます。

見えない世界を探るヒント【科学の核心へ】

さて、ここからが科学の時間の本番です。この現象は「拡散(かくさん)」と呼ばれます。目には見えませんが、水の粒(分子)も、砂糖の粒(分子)も、実はじっと静止しているわけではありません。彼らは常にブルブルと震え、動き回っています。これを「熱運動」と呼びます。

シャーレの中では、無数の水の分子が、まるで小さな子供たちのように元気いっぱいに動き回り、砂糖の分子に次々とぶつかっていきます。ぶつかられた砂糖の分子は、少しずつバラバラになり、水の分子たちに押されて四方八方へと運ばれていくのです。

生徒たちに、こんな問いを投げかけてみましょう。

1.なぜ、かき混ぜていないのに広がったんだろう? → 見えない水の粒が、砂糖の粒にぶつかって運んでくれたんじゃないか?

2.なぜ、上下左右、どの方向にも同じように広がったんだろう? → 水の粒は、特定の方向だけでなく、本当にメチャクチャに、あらゆる方向に動いている証拠だね。

3.もし、これがお湯だったら、広がる速さはどうなると思う? → 温度が高いほど、水の粒の動き(熱運動)は激しくなる。だから、もっと速く広がるはず!

このように、シンプルな観察から「粒子は絶えず運動している」という科学の基本的なモデルを、生徒たち自身が体験的に、納得感をもって作り上げていくことができます。「砂糖がただ溶けるだけ」――。しかし、この小さなシャーレの中で起きていることは、香水が部屋中に広がるのも、肺で酸素が血液に取り込まれるのも、そして遠い宇宙で星雲が広がっていくのも、すべて同じ「拡散」という原理に基づいています。ミクロな世界の法則が、私たちの体や、果ては宇宙にまでつながっている。そう感じられたなら、理科はもっと面白くなるはずです。

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