シャーレにコーヒーシュガーを落と広がる科学の世界
今回は、中学1年生の水溶液の導入にぴったりな、シンプルだけど奥が深い観察実験をご紹介します。準備するものも少なく、観察がメインなので、授業時間内に無理なくおさまります。しかも、粒子モデルへの橋渡しにも使えるというスグレモノ。導入に悩んだときにぜひ試してみてください。
実験の概要
シャーレの中心にコーヒーシュガーを一粒。あとは、じっと見ているだけです。すると…じわじわと、でも確実に、均一に溶けていく様子が観察できます。このとき、生徒たちは自然と「混ぜていないのに、なぜ?」という疑問を抱きます。この素朴な驚きが、粒子の世界を考えるきっかけになります。
授業準備に必要なもの
準備物はシンプルで、以下の通りです:
• シャーレ(透明なものがおすすめ)
• コーヒーシュガー(溶ける様子が見やすい)
• 水(できれば常温で。量はシャーレに数ミリでOK)
• 100mLビーカー(注水用)
• 台紙(同心円の目盛り入りのもの。溶け広がりを定量的に観察できます)
※台紙はシャーレの下に敷きます。手作りでもOKですが、私が作成したPDFもありますので、ご希望の方はどうぞ。
同心円(コーヒーシュガーの溶け方)(PDF)
観察のしかたと授業の流れ(例)
1. 水をシャーレに入れる(底がうっすら隠れる程度)
2. 中央にそっとコーヒーシュガーを落とす(できるだけ静かに)
3. 混ぜないでそのまま放置
4. 2分おきに、10分間観察
(台紙の同心円に合わせて、広がり方を記録していきます)
ポイントは「混ぜないこと」。生徒は自然と「拡散」の概念に触れていきます。
理科的な背景と指導のヒント
この実験は、「粒子は目に見えないが、運動している」という考え方を導入する前の、“体感的な納得”を得る場になります。
生徒に問いかけてみましょう:
• なぜ混ぜていないのに広がるのか?
• どの方向にも均等に広がったのはなぜ?
• これを粒子で説明するなら、どう考えればいい?
このような対話を通じて、粒子の運動=拡散のモデルを自分なりに構築しはじめることができます。また、粒子モデルを描かせるアクティビティにつなげることで、さらに理解が深まります。
「砂糖が溶けるだけ」――だけど、ここに科学の核心があります。
生徒たちは、こうしたシンプルな現象の中に、理科で学ぶべき“見えない世界”を感じ取ることができます。
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・運営者・桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!