科学は進歩しない!?『新しい科学論』が突きつける

ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。

「新しい科学論」―科学の見方がガラリと変わる1冊!

今回は、村上陽一郎先生の**『新しい科学論 ~「事実」は理論をたおせるか~』**を読んだので、その衝撃をみなさんにシェアしたいと思います。

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amazon:新しい科学論 ~「事実」は理論をたおせるか~

この本、1979年に初版が出て、49刷以上科学書としてはモンスター級のロングセラーなので、ご存じの方も多いかもしれません。

「新しい」って、むしろ古い?

タイトルに「新しい」とついていますが、最初に出たのは1979年。「え、全然新しくないじゃん?」と思うかもしれません。でも、この本はそんな単純な話ではありません。むしろ、今読んでも衝撃的で、科学に対する考え方が根本からひっくり返る可能性があります。自分の中の科学の捉え方が変わりました。

「事実」は理論をたおせるか?

本書のサブタイトル**「事実」は理論をたおせるか**。なんとも挑戦的な問いですよね。これは、

「古い理論があったとき、新しい事実(データ)が集まれば、その理論は倒されるのか?」

という問いかけです。

「そりゃ、倒れるでしょ?」

「だって、科学は進歩するものじゃん?」

そう思いますよね。ケプラーの惑星の法則の発見とか、いろんな科学の歴史を見れば、事実によって古い理論が覆された例はたくさんあります。でも、本書では**「必ずしもそうとは限らない」**と述べられています。えっ、どういうこと!?

ニュートン力学と相対性理論の関係

たとえば、ニュートン力学(古典力学)は、相対性理論の発見によって「内包」されました。つまり、完全に否定されたわけではなく、より広い理論の一部として組み込まれたんですね。ここで本書は驚きの主張をします。

「内包されたニュートン力学と、内包される前のニュートン力学は別物である」

「え? いや、同じでしょ?」

そう思うかもしれません。でも、本書を読めば、「あ、これは確かに別物だ…!」と納得するはずです。これは、科学の理論が社会通念や文化と切り離せないほど密接に関係していることとも関係があります。

科学は「進歩」しない!?

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「科学の進歩」という言葉をよく耳にしますが、本書では、科学は「進歩する」ものではなく、「革命」によって変わっていくと述べられています。つまり、少しずつ積み重ねて前進していくのではなく、ある時点でガラリと変わる瞬間があるということです。まさに、パラダイムシフトですね。

客観的事実って、本当に客観的?

これも驚きのポイント。本書では、「客観的事実」というものは、すべての人にとっての客観的事実ではありえないと指摘しています。つまり、

「ある特定のコミュニティー」にとっての客観的事実があるだけ

しかも、その客観的事実にはレベルがある「え、でもそれって科学として大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、「それはそれで良い」というのが本書のスタンスなんです。

読まなきゃ損!

この本には、まだまだ驚くべきことがたくさん書かれています。そして最後には、村上先生からの**「私たちは科学とどう向き合うべきか」**という問いが投げかけられます。特に印象的なのが、**「もし必要ならば…。」**という最後の言葉。ここに込められた意味を考えると、ますます深く考えさせられます。正直、この紹介文だけでは本書の魅力を全部伝えきれません。

むしろ、読めば読むほど「うわぁ、これはすごい…」と感じるはず。

理系・文系問わず、絶対に読むべき1冊です。ぜひ、手に取ってみてください!

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