電流が語る静かなドラマ、コンデンサー放電の科学(センサーを使った充放電実験のススメ)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

コンデンサーから流れ出る電流は、なぜこんなにも美しくカーブを描くのか

もし目に見えない電気の流れを、リアルタイムで「グラフの線」として見ることができたら――。そんな夢のような実験を、今回行ってみました。使ったのは1F(耐電圧5.5V)という大容量のコンデンサーです。電池3本でこれを充電し、10Ω、5Ω、20Ωというそれぞれ異なる抵抗をつないで、放電させてみました。結論から言うと、これがもう感動的なくらいきれいな曲線を描くのです。使用したセンサーは、ナリカで購入したDataHarvestのEasySense V-Hubです。

アナログ電流計では見えなかった「本当の姿」

以前、この手の実験をアナログの電流計だけで行っていた頃は、針がゆっくり動いていく様子をなんとなく目で追うことしかできませんでした。「だんだん減っていくんだな」という感覚はあっても、それがどんな数式に従っているのか、どれくらいの速さで減っているのかは、正直よくわからなかったのです。

抵抗を変えても、電気量は同じだった。リアルタイム計測が教えてくれた物理の真実(コンデンサーの充電・放電実験)

ところが、センサーでリアルタイムに電流をグラフ化してみると、その正体がはっきりと見えてきます。これは指数関数的減衰と呼ばれる、自然界のあちこちに登場するカーブです。実は、放射性物質が崩壊していく様子や、熱いお茶が徐々に冷めていく様子も、数式の形としてはこの放電カーブとそっくりなのです。コンデンサーの中の電気は、まるで冷めていくお茶のように、抵抗という「関所」を通りながら、少しずつ少しずつ外へ流れ出ていきます。EasySence2アプリを使って観測した様子がこちらです。

ゼロ補正というささやかな、でも大事な仕事

EasySence2アプリの地味に嬉しいポイントが、ゼロ補正機能です。プラスマイナス1Aのセンサーを接続したとき、センサーを少し動かしながら「Set Tera」というボタンを押すと、その瞬間の値が「0」として補正されます。これは料理でいうところの「はかりの風袋引き」に近い作業です。ボウルの重さを差し引いてから中身だけを量るように、センサー自体が持っているわずかな誤差を差し引いてから、本当に知りたい電流の値だけを取り出す。小さな一手間ですが、これがあるとないとでは、その後の実験の精度がまったく変わってきます。

放電開始、電流が描く「静かなドラマ」

準備が整ったら、いよいよ実験開始です。コンデンサーを一度しっかり充電してから、放電をスタートさせます。すると面白いことに、電流はいきなり最大値までピンと立ち上がり、そこから徐々に、本当に徐々に、時間とともに小さくなっていきます。まるで、全力疾走から始まったマラソンランナーが、少しずつペースを落としながらも走り続けているような、そんな「静かなドラマ」がグラフの中に描かれていくのです。



グラフが少しずつ動いていく様子は、見ているだけでも十分にわかりやすく、まるで心電図のモニターを眺めているような感覚になります。

積分という「面積」が教えてくれること

最終的に得られたグラフがこちらです。

上のピンクが5オーム、下の赤が10オームで実験をしたときの様子です。

電流のグラフをよく見ると、線の下側に「面積」があります。実はこの面積こそが、コンデンサーから流れ出た電気の総量、つまり電気量を表しています。これを求める作業が積分です。以前は、この積分作業を手作業やグラフ用紙のマス目を数えるようにして行っていましたが、EasySenseを使えば瞬時に計算してくれます。おかげで、授業時間内にきちんと結果まで出せるようになりました。抵抗の値が違っても、電気容量の計算値がほぼ近い値になるという結果は、まさに理論通りであり、生徒にとっても「ちゃんと物理法則が成り立っている」という実感につながる瞬間です。

数値としてみると、5Ωのほうは、

5.3Ω、電圧が4.60V、領域積分(電気量)が、4.582As

10Ωのほうは、

10.2Ω、4.50V、領域積分(電気量)が4.457As

という結果でした。

抵抗の大きさが変わっても、コンデンサーに蓄えられていた電気の総量はほぼ一定という、当たり前のようでいて実感しにくい法則が、数字としてしっかり裏付けられました。

入試にもつながる、身近で本質的な実験

この実験は、共通テストなどでも狙われやすいテーマだと感じています。というのも、コンデンサーの放電という現象は、電気回路の基本でありながら、指数関数的な変化という自然界に広く通じる考え方ともつながっているからです。グラフが描く一本のカーブの中に、電気の世界だけでなく、自然界全体に共通する「減っていくものの法則」が隠れている。そう考えると、目の前の実験が少し違って見えてきませんか。

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