空港で活躍!?物体の温度が触れずにわかる「サーモグラフィー」の仕組み

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ケン博士
サイエンストレーナーの桑子研です。このサイトで科学を一緒に楽しみましょう。 

サーモグラフィーとは、目に見えない物体の温度を可視化する装置、またはその画像のことを指します。次の写真は人のサーモグラフィー画像の様子です。

サーモグラフィー画像での人の様子

 ぼくの持っているサーモグラフィーはこれ。

 服から露出した部分の温度が高いことがわかります。サーモグラフィー装置を使うと、その物体に触れることなく温度を知ることができるため、新型コロナウィルスなどでは空港に設置をして発熱のある人を探すのに活用されたりしていました。また次の写真は消しゴムで机の上をこすったときの写真です(図1)。これをサーモグラフィー画像で見てみると図2のように見えます。

図2の青色が温度の低い部分、赤色が温度の高い部分を示しています。皮膚や消しゴムで擦った箇所の温度が高くなっているのが、確認できます。このような画像(熱画像)はどのようにして得ることができるのでしょうか。目には見えませんが、すべての物体は赤外線を放射しています。この赤外線は電磁波の1種で、可視光線よりも波長が長いものです。可視光線はその名前のとおり、目が感知することができる範囲の電磁波で、この範囲外の波長の電磁波は、目で見ることができません。

赤外線はその名の通り、赤の波長の外側の波長にある電磁波なので、赤外線という名前がついています。赤外線は空間を伝わることができるという特徴があります。そのため赤外線は身近な場所ではテレビのリモコンの送信部にも使われています。テレビのリモコンのボタンを押しても、可視光は出ていないので光っているようには見えませんが、スマートフォンの赤外線を捉えることができるカメラなどを近づけて覗いてみると、赤外線が出ていることがわかります。リモコンは赤外線を飛ばして、テレビ本体に情報を送っています。

スクリーンショット 2016-02-24 15.20.05

図3 リモコンの赤外線

 すべての物体は赤外線を出していますが、温度の高い物体ほど赤外線のエネルギーは大きくなります(絶対温度の4乗に比例)。

図4 温度と赤外線のエネルギーのイメージ図

参考 ステファン-ボルツマンの公式

I=σT^4

I :放出されるエネルギー[ W/cm2 ]
σ:ステファン・ボルツマン定数5.7×10-12[ W/cm2K4 ]
T:物体の温度[ K ]

 温度が高いほど放出している赤外線のエネルギーが大きくなるので、物体から空間へと放出されている赤外線のエネルギーを捉えることができれば、発している物体の温度もわかるります。サーモグラフィー装置では、この赤外線のエネルギーをレンズに通して、赤外線を検出することができる素子に集めます。そして素子から電気信号となり、それをデジタル処理をして、サーモグラフィーの画像(熱画像)は作られています。

デジタルカメラは可視光線に、サーモグラフィー装置は赤外線に反応するように作ってあります。基本的には同じような仕組みであると言えます。

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