ポケットの中の物理実験室!スマホセンサーで解き明かす振り子や円運動の加速度!

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

みなさんのポケットに入っているスマートフォン。実は、小さな「科学実験室」でもあることをご存知でしたか? ゲームでキャラクターを動かしたり、地図アプリで方角を示したり。これらはすべて、スマホに内蔵された高性能なセンサーのおかげなんです。傾きを感知する「加速度センサー」や「ジャイロスコープ」、方角を知る「磁力センサー」。これらが連携して、スマホは自分が「今どんな状態か」を常に把握しています。

これは実験に使わない手はありませんね!!

スマホの「感覚」を覗いてみよう!

そんなセンサーの「声」を聞くことができるアプリが、今回ご紹介する「加速度・ジャイロスコープ・磁力センサーロガー」という、少し名前の長いアプリケーションです。1このアプリは使い方がとても簡単。ダウンロードしたら、左上の「開始」ボタンを押すだけです。

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この状態にして、iPhoneを横に振ったり(x軸)、上下に振ったり(y軸)、前後に振ったり(z軸)すると、そのときどきの「加速度(動きの変化)」をとらえて、3軸のグラフ(x軸・y軸・z軸)がリアルタイムで動いていきます。いろいろと振ってみると、自分の動きがそのままデータになるので、とてもおもしろいですよ!

挑戦!スマホで自由落下実験

これは何かいろいろなことができそうな予感ですよね!まずは教科書でおなじみの「自由落下」実験を試してみました。高いところから手を離して、地面に付く前にiPhoneをキャッチ!

(※ 壊れるかもしれないので、絶対に真似しないでくださいね!特に生徒のみなさんにはやらせられない実験です。)

物理の教科書では、ものの落ちる速さ(重力加速度)は約 $9.8 m/s^2$ と習います。でも、実際にやってみると、なかなかその数字にはなりませんでした。これは、スマホが回転しながら落ちてしまったり、空気抵抗があったり、またセンサーが測定できる時間の細かさ(時間分解能)などに関係がありそうです。この実験、数字を精密に測るのには向きませんでしたが、いつ加速度が大きくなるのか?(例えば、キャッチする瞬間の衝撃!)ということを、おおまかに知る実験としてはとても興味深い結果になりました。

科学のレシピ:スマホで解き明かす物理の法則

いろいろ試す中で、うまくいった2つの「おうち実験」について紹介します。

<実験1:振り子の秘密を探る>

用意するもの:

  • iPhone(加速度センサーアプリ)
  • iPhoneカバー(100円ショップのものでOK)
  • きり(穴をあけるため。大人の人と一緒に使いましょう)
  • ひも

手順:

  1. iPhoneカバーにキリなどで穴をあけてヒモを通しておきます。
  2. iPhoneにカバーをつけて振り子を作ります。
  3. 加速度センサーを開始して、振り子を揺らします(スタンドや柱などに固定して揺らすとキレイに揺れます)。
  4. データを観察します(テキスト出力をしてエクセルで解析もできます)。

観察と発見:

この実験をやってみると、加速度が正弦曲線(サインカーブ)になっていることがわかります。

これは、物理でいう「単振動」という動きのとても大切な特徴です。振り子がいちばん端(折り返し地点)にきたとき、中心に戻ろうとする力が最大になり、加速度も最大になります。逆に、振り子の真下(いちばん速い地点)を通過するときは、力が一瞬ゼロになり、加速度もゼロになります。この「最大→ゼロ→最大」という力の変化の繰り返しが、きれいな波(正弦曲線)を描き出すのです。すごいですよね! 😲

この波の形から、振り子が一往復する時間(周期)を正確に求めることもできました。


<実験2:円運動の「見えない力」を捉える>

用意するもの:

  • iPhone(加速度センサーアプリ)
  • 回転テーブル(ターンテーブル、回転するイスなど)

手順:

  1. iPhoneを回転テーブルにのせて(できれば)固定します。

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  2. 加速度センサーを開始して、テーブルを回します(できるだけ一定の速さで=等速で)。

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観察と発見:

この実験をやってみると、加速度がある軸(私の実験の場合はx軸にのみふれました)にしか現れていないことが確認できます。

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少し見えにくくてごめんなさい!ぶれてしまいましたが、x軸(赤の線)が動いているのがわかりますね(山になっています)。動画はこちらをどうぞ。

これは、物体が円運動を続けるために必要な「向心力(こうしんりょく)」による加速度を捉えています。たとえ同じ「速さ」で回っていても、ぐるぐる回るということは常に「向き」が変わっていますよね。物理の世界では、向きが変わるだけでも「加速度」が発生していると考えます。そして、その加速度は常に円の「中心」を向いているのです。センサーが、その中心に向かう加速度を検知してグラフに表示していた、というわけです!

今後の課題としては、このデータをテキストに吐き出して、回転運動の周期(目測)と、iPhoneをおいた中心からの半径から、計算で求めた加速度( $a = r\omega^2$ や $a = \frac{v^2}{r}$ )と、実際のデータがどのあたりまであっているのか調べておくということです。

まとめ:スマホは最高の実験道具!

本当に、いろいろなことができる時代になってきました。高価な実験器具を安くすませるためにも、また何より生徒が科学を身近に感じられるようにするためにも、生徒がもっているスマホを扱わない手は無いのではないかと思っています。 🔬✨

みなさんは実験でどんな使い方をしていますか?ぜひ教えてください!

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