味噌汁はなぜ滑る?日常に潜む物理の謎を解き明かす

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

みなさんは、熱々の味噌汁を食卓に置いたとき、お椀がスーッと滑ってしまった経験はありませんか?

「ああ、危ない!」とヒヤリとしたり、「なんでこんなに滑るんだろう?」と不思議に思ったり。

そんな、誰もが一度は経験する、ごく日常の小さな出来事。実はその裏に、知的好奇心をくすぐる意外な科学が隠されています。今回は、そんな日常の「なぜ?」を解き明かしてくれる、心ときめく物理の入門書についてご紹介します。それがこちらの本です。

「眠れなくなるほど面白い物理の話」(日本文芸社)(Amazon)

ハマってしまいました!

お、おもしろい!何が面白かったのか!今日はこの本についてご紹介します。

目のつけどころがすごい!味噌汁のお椀が滑る理由

この本は、私たちの身の回りにある現象を、豊富なイラストとわかりやすい文章で解き明かしていく一冊です。数式は極力使わず、誰もが直感的に理解できるように工夫されています。

左側にイラスト、右側に文章だから、見やすい構成

「日常の物理」をテーマにした本はたくさんありますが、この本がユニークなのは、その目のつけどころです。パラパラとページをめくると、まず登場するのは「表面張力」の解説。

「ちょっと地味だな…」そう思ったのも束の間、次のページで驚きの問いかけが待っていました。

「濡れた台ふきんで食卓を拭いた後、温かい味噌汁のお椀を置くと、なぜかスーッと滑ってしまうのはなぜ?」

思わず「ああ、それ!」と膝を打つような、まさかのテーマ。

誰もが経験していそうで、でも誰も深く考えたことがないような、そんな**「超ちっさい話題」**にスポットを当てているのです。

科学のロマン!「ボイル・シャルルの法則」が関係していた

「たしかに気になる!」と前のめりになり、その理由を読み進めると、そこには驚くべき科学のつながりが隠されていました。食卓がわずかに濡れていると、お椀の底と机の間に水が入り込みます。この水が表面張力によってお椀の足を包み込み、机とお椀の間を密閉します。

さらに、温かい味噌汁から出る熱がこの密閉された空気を温めます。すると、空気は膨張し、お椀を上向きに押す力が生まれます。この現象こそ、高校物理で習う**「ボイル・シャルルの法則」**です。

この上向きの力が、お椀の重力をわずかに打ち消すことで、摩擦力が小さくなり、お椀が滑りやすくなるというのです。

科学は日常に宿る

味噌汁の「温かさ」までが原因だったとは、驚きですよね。冷たいお椀では滑りにくいのは、この法則が関係しているからなのです。日常のささいな出来事にも、こんなにも奥深い科学のロジックが隠されている。

この本は、そんな「科学は日常に宿る」という当たり前のようでいて忘れがちな、科学の醍醐味を思い出させてくれます。理系だから、物理が得意だから読む、という本ではなく、誰にとっても身近な「なぜ?」を大切にすることで、科学の面白さを再発見させてくれる一冊です。

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