0.001秒の攻防!自己誘導が作る「ゆったり流れる電気」の不思議「自己誘導の観察実験」

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「天邪鬼(あまのじゃく)」という言葉、聞いたことがありますか?実は、電気の世界にも「変化を嫌って、言われたことの逆をやろうとする」面白い部品があるんです。それが「コイル」です。スイッチを入れた瞬間に「流れるな!」と踏ん張り、スイッチを切った瞬間に「止まるな!」と粘る。

今回は、肉眼では決して捉えられない0.001秒単位のコイルの抵抗を、最新センサーを使って暴いてみましょう。

天邪鬼な電子部品?「自己誘導」の不思議

電気回路にコイルを組み込んでおくと、スイッチをON・OFFしたときに電流が一気に流れずに、ゆるやかに変化するという現象が起きます。これは自己誘導と呼ばれる現象です。コイルに急激に電流が流れると、コイル内を貫く磁束が急激に変化します。コイルはこの「急な変化」を嫌い、変化を打ち消そうとする向きに逆起電力を発生させるのです。まさに電気の世界の「慣性」のようなものですね。教科書にも載っているこの事実ですが、あまりに一瞬の出来事であるため、普通の電流計や電圧計では針が動くのを観察することすら困難です。

そこで今回は、高精度センサー「イージーセンスV-Hub」を使って、この一瞬のドラマを可視化してみました。Go-Directという電流センサもおすすめです

科学のレシピ:実験の準備

目に見えない電気の動きを捉えるためには、正確な道具立てが必要です。
準備するもの
• 抵抗(20Ω)×3
• コイル(0.05H)
• スイッチ(プッシュスイッチがおすすめ)
• ブレッドボード、ジャンパーコード
• 単三電池×2(3.0V)+電池パック
• イージーセンスV-Hub
• 電流センサ(100mA用、または1A用)

イージーセンスV-HUB

実験開始!自己誘導を可視化する

① まずは次のような回路を組みます。電流計を置くべき場所に、イージーセンスの電流センサを割り込ませるのがポイントです。

回路の構築にはブレッドボードを使用しました。抜き差しが簡単で、実験には欠かせないアイテムですね。


② 次に、一瞬の変化を逃さないようイージーセンスの設定を行います。
• 測定時間:500ms(0.5秒)
• 測定間隔:2000/500μs
• トリガー:電流が15mAを超えた瞬間に記録開始(プレトリガー25%)
このトリガー設定が重要です。スイッチを押した瞬間の「前後」を記録することで、立ち上がりの様子を完璧に捉えることができます。


③ 準備ができたら、プッシュスイッチを「ポチッ」と押して測定します。

結果が語る「コイルの意地」

グラフを見てみましょう。縦軸が電流値(mA)、横軸が時間です。

青色のラインはコイルなし(抵抗のみ)の結果です。スイッチを入れた瞬間に、垂直に近い角度で電流が立ち上がっています。
対して赤色のラインがコイルありの結果です。スイッチを入れた瞬間、斜めにゆっくりと電流が増えていくのが分かりますね。これこそが、コイルが逆起電力を発生させて「急に流れるのはお断りだ!」と抵抗している証拠です。
グラフの最大値に少し差があるのは、コイル自体が持っているわずかな抵抗(銅線の抵抗)の影響かもしれません。こうした「理想とは違う現実のデータ」に触れるのも、実験の醍醐味ですね。

さらに深い世界へ:スイッチを切ったその瞬間

自己誘導の面白さは、スイッチを入れたときだけではありません。回路図の次のような位置に電流センサを入れてみましょう。

今度は、電流が流れている状態からスイッチをパッと切ります。すると、コイルは「電流を止めないでくれ!」とばかりに、これまで流れていた方向に電流を押し流そうとします。

これが、スイッチを切った瞬間に火花が散ることがある理由です。コイルはとにかく変化が嫌いなのです。
この他にも、コンデンサと組み合わせて電流が交互に流れる「電気振動」など、コイルの個性あふれる現象はたくさんあります。ぜひ皆さんも、センサーという「科学の目」を使って、目に見えない電気のドラマをのぞいてみてください。

電気が奏でるリズムを捕まえろ!V-Hubで挑む「電気振動」可視化大作戦(V-Hub8)

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