数百円で物理現象を巨大化!ホースと砂で作る、感動の「巨大ウェーブマシン」
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
ギターの弦はなぜ美しい音色を奏でるのでしょう? 大縄跳びの縄は、なぜ不思議な形に波打つののでしょう? その秘密は、物理の世界で「定常波(ていじょうは)」と呼ばれる、波の特別な姿に隠されています。
今回は、そんな目には見えにくい「定常波」の正体を、誰の目にも明らかにする、ダイナミックな実験装置の作り方をご紹介します。授業を面白くするコツ、そして科学に興味をもってもらうコツは、現象を「大きく」して、五感で感じられるようにすること。ホームセンターと100円ショップの材料で、理科室が驚きと発見の空間に変わりますよ!
科学のレシピ
【用意するもの】
水道ホース: 2〜3mほど。中の様子がわかる透明なものがおすすめです。
砂: 100円ショップなどで手に入るもので十分です。
材料は、たったこれだけ。水道ホースは数百円、砂も100円程度で手に入ります。驚くほど手軽に、本格的な物理実験の準備が整います。
【手順】
ステップ1:まずは、そのまま振ってみる
まず、空っぽのホースを天井などから吊るして、適当な長さに切ります。そして、手で持って左右に振ってみましょう。
どうでしょうか? ホースはくにゃくにゃと動くだけで、教科書で見るようなきれいな波の形には、なかなかなってくれません。なぜなら、波が伝わるスピードが速すぎて、私たちの目では捉えきれないからです。
ステップ2:魔法のひと手間「砂」を投入!
ここからが科学の面白いところ。ホースに「砂」を詰めて、「線密度(せんみつど)」、つまり「1メートルあたりの重さ」を大きくしてみましょう。
ホースの片側をビニールテープでしっかりと塞ぎ、上から砂をサラサラと流し込みます。全体に砂が入ったら、上側もテープでしっかり蓋をしましょう。
弦やロープを伝わる波の速さは、その「重さ(線密度)」に大きく関係します。重くなればなるほど、波はゆっくりと伝わるようになります。これは、ギターの弦が、太い弦(重い弦)ほど低い音(振動がゆっくり)を出すのと同じ原理です。この一手間が、見えなかった世界を見せてくれます。
ステップ3:再び振って、定常波を捕まえよう!
砂でずっしりと重くなったホースを、もう一度天井から吊るします。そして、いろいろな速さ(振動数)で振ってみてください。すると…
どうでしょう!さっきとは全く違い、ホースが美しい波の形を保ったまま振動するのがはっきりと見えます。大きく膨らんでいる部分(腹)と、全く動いていない点(節)が交互に現れる、これこそが「定常波」の正体です。
波がゆっくり伝わるようになったことで、ホースの端で反射した波と、手から送り出す波がうまく重なり合い、このような不思議な現象が生まれるのです。その実際の様子を動画で撮影しました。ぜひご覧ください。
いかがでしたでしょうか。とても簡単に、そしてダイナミックに物理現象を体験できますよね。いろいろなものを詰めて試しましたが、細かくて均一に詰まる「砂」が個人的にはベストでした。ぜひ、皆さんも身の回りのもので試して、科学の面白さを体感してみてください!
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