色々な水溶液に電流が流れるかどうかを確かめる実験(中3理科 水溶液とイオン)
今日は「水溶液に電流が流れるかどうか」をテーマにした実験を紹介します。私たちが普段使っている食塩や砂糖、エタノールなど、身近な物質が電気を通すのかどうか、確かめてみました。教員向けの記事になっています。実験準備には大体40分くらいかかりました。時間を見つけて行いましょう。
実験で使った物質たち
今回使用したのはこちらの水溶液および固体です。
1.精製水 (H₂O)
2.食塩水 (NaCl aq)
3.砂糖水 (ショ糖水溶液 C₁₂H₂₂O₁₁aq)
4.塩酸 (HCl aq)
5.エタノール (C₂H₆O aq)
6.水酸化ナトリウム水溶液 (NaOH aq)
7.固体の食塩 (NaCl)
8.固体の砂糖 (C₁₂H₂₂O₁₁)
この中で「電流が流れるもの」と「流れないもの」をチェックしていきます。果たしてどんな結果が出るのでしょうか?
用意した時はこんな感じです。8班編成で1〜4までと5〜8までの溶液で分けて、それぞれ4個ずつ同じのものを作っておき、後でばっと取り替える感じです。
ラベルは黄色ビニテに油性マジックで書きました。
ラップをつけておくと長めに保存できます。
なお食塩水と塩酸は毎回クラスが終わったら取り替える必要があるので400mLずつ作りました。理由としては変色が見られるためです。
実験の進め方
生徒たちはセルプレートを使って、それぞれの水溶液を小分けにし、ステンレス製の電極を入れて電圧をかけ、電流が流れるかどうかを調べました。電圧は5Vに設定してあり、使用した電流計はアナログ式。微妙な変化も見逃さず確認できます。
回路はこんな感じです。
実験が終わるたびに蒸留水で濯ぐこともお忘れなく。また、固体の食塩と砂糖に関しては、電極を突っ込んで電流を測定します。
塩酸で見られる面白い現象
塩酸(HCl aq)での実験結果から。ビーカーに塩酸を入れ、電流を流すとどうなるか…観察してみると、1.13Aの電流が流れました。かなり大きな電流です!さらに、片方の電極から泡がたくさん出てきました。この泡は電気分解の産物で、見ていてとても面白い現象です。
塩酸に電極を長時間入れていると塩素が発生し、水に溶けて独特の塩素臭が漂ってきます。また、塩素水ができ、溶液の色が変化するのも確認できました。
なお観察後は電極を出すという必要があります。というのも、塩酸の場合は塩素が発生して水に溶け出し塩素臭がします。また塩素水となり色が変化します。また食塩水の場合はステンレス電極が溶け出して、水溶液の色が変化してしまいます。こちらが塩酸、黄色や緑色になります。
実験前と実験後
食塩水ではどうなる?
食塩水(NaCl aq)でも同様に電流を流してみると、ステンレス電極が溶け出し、こちらも溶液の色が変わってきました。長く電流を流していると、食塩水の中にオレンジ色の沈殿物が現れるのも興味深いところ。
実験前と実験後
電気分解後の食塩水。オレンジ色の沈殿物ができます。
長く時間を流しておくとこのようにはっきりと色が出てきます。左が塩酸、右が食塩水。
電流が流れたのはどの水溶液?
さて、最終的にどの水溶液が電流を通すのかを表にまとめてみました。実験結果はこうです!
•精製水…流れにくい
•食塩水…流れる
•砂糖水…流れにくい
•塩酸…流れる
•エタノール…流れにくい
•水酸化ナトリウム水溶液…流れる
•固体の食塩…流れない
•固体の砂糖…流れない
この結果を見ると、食塩水や塩酸、水酸化ナトリウム水溶液が電流を流すことがわかりました。対して、精製水や砂糖水、エタノールは流れにくく、固体の食塩や砂糖は電流を全く通さないことが確認できました。あるものでは流れない・流れると、それぞれ生徒が判断する場合があります。そんな時は、量の問題があるので、全体でデータを共有すると、検討がしやすくなるかなと思います。その際に利用したのがこちらのスプレットシートです。
コピーして利用してみてください。こちらはその一例ですが、
表にまとめると精製水は流れにくい、砂糖水も流れにくい、エタノールも流れにくい、食塩・砂糖は流れないことがわかります。対して、食塩水・塩酸・水酸化ナトリウムが流れるということがわかりますね。