安全ピン1つで静電気消滅!?あの「バチッ!」を防ぐ驚きのライフハック

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

冬の冷たく乾いた空気の中、ドアノブに手を伸ばした瞬間、指先に走る激痛。「バチッ!」という音と共に火花が見えるようなあの衝撃は、まさに自分自身の指先から放たれる「小さな落雷」のようです。誰もが一度は経験したことのあるこの冬の悩みを、なんと「安全ピン一つ」で解決できることをご存知でしょうか?

「袖口に安全ピンをつけるだけで、静電気を防げる」

果たして本当に効果があるのでしょうか?もし本当なら、私たちの体の中で一体何が起きているのでしょうか。理科教師としての好奇心が抑えきれず、さっそく徹底検証してみました!

なおこの技について、2026年1月6日(火)に放送された「ありえへん∞世界」(テレビ東京)夜6:25〜の番組にて、科学監修・出演して説明をしました。ちょっとしたコツで静電気のお悩みから解放されます。お試しください。

静電気が起こりにくくなる裏ワザ「ありえへん∞世界」(テレビ東京)【科学監修・出演】

「安全ピンが静電気を防ぐ」は本当か?いざ実験!

このウワサの真相を確かめるために、私の実験室から秘密兵器「帯電ガン」「帯電椅子」を持ち出しました。これらを使えば、目に見えない静電気を数値(電圧)として可視化することができます。

まずは、何も対策をしていない「基準」となる状態を測ります。帯電椅子に座り、帯電ガンで体に電気を送り込んでみると……。

なんと、体に溜まった電圧は18,000V(ボルト)付近を突破しました!家庭用コンセントが100Vであることを考えると、とんでもない数字です。静電気は流れる電気の量(電流)が極めて小さいため命に関わることはありませんが、電圧だけで言えばまさに「ミニ落雷」のエネルギーを蓄えている状態なのです。

次に、この電気を帯びた状態で、服の袖口をそっと机に近づけてみます。これは、日常生活で私たちが何気なく家具や壁に触れる動作を再現したものです。すると、電圧は13,000V付近まで下がりました。服の繊維を通して、わずかに電気が逃げていることがわかります。

そして、いよいよ真打ち登場です。袖口に金属製のクリップ(安全ピンの代用)を装着し、そのクリップが机に触れるようにしてみると、驚きの結果が待っていました。

写真はわかりやすいように目玉クリップで試している様子です。

なんと、最大電圧が9,000Vまで一気に低下!さらに、クリップと机がしっかり密着すると、電圧は5,000Vまで抑えられました。

何より注目すべきは、「電気が抜けていく速さ」です。安全ピン(金属)がない状態ではなかなか下がらなかった電圧が、金属をつけるだけでスルスルと下がっていきました。これは、「安全ピンが電気の逃げ道となり、体に高電圧が溜まるのを防いでいる」という明確な証拠です。ウワサは紛れもない事実でした!

なぜ安全ピンで?小さな金属が果たす大きな役割

なぜ、たった一本の安全ピンがこれほどの効果を発揮するのでしょうか。その秘密は、金属の「電気の通しやすさ」にあります。

静電気の「バチッ!」という衝撃は、溜まった電気が一気に一箇所から流れ出すことで起こります。しかし、袖口に安全ピンをつけておくと、机や壁などの近くを通るたびに、金属を橋渡し役にして電気が「こっそり、少しずつ」逃げていってくれるのです。ダムの水が溢れて決壊する前に、小さな排水溝から少しずつ水を流し続けているようなイメージですね。

番組でも紹介しましたが、金属の時計や、ブレスレットをしていても効果があります。百円ショップなどにも腕につける静電気除去グッツがありますよね。

昔の知恵と現代をつなぐ科学の物語

実はこの原理、私たちの身近なところで古くから活用されています。例えば、ビルの屋上にある「避雷針」。これも、雷という巨大な静電気を安全に地面へ逃がすための仕組みです。また、昔の車には「アースベルト」と呼ばれるゴム製のベルトが地面に垂れ下がっているのがよく見られました。これも、走行中に車体に溜まった静電気を路面に逃がすためのもので、今回の安全ピンと全く同じ役割を担っていました。

さらに面白いことに、以前私は「靴の裏にホチキスの芯を打つ」という実験も行いましたが、これも金属が地面とのアース(接地)になることで静電気を防ぐ効果がありました。

靴にホチキスの針を刺したら静電気が5000Vも減った!中学生が都市伝説をガチ検証【科学監修】(THE突破ファイル)

 

一本の小さな安全ピンから、巨大な避雷針、そして懐かしい車の知恵まで。科学の原理は、形を変えて私たちの生活をずっと守り続けてくれているのですね。もし今年の冬、指先の衝撃に怯えている方がいたら、ぜひセーターの裏側に「お守り」として安全ピンを一つ忍ばせてみてください。

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