驚きの実験!静電気入りビリビリ水・静電気茶・静電気ドリンクの作り方とその仕組み(静電気実験)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

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ビリッと痺れる不思議な飲み物、通称「静電気ドリンク」。テレビ番組でタレントさんが驚きのリアクションをしているのを見たことはありませんか?

「一体どんな味がするの?」「体に電気が流れるってどういうこと?」

そんな疑問が尽きないこの実験、実はそのルーツを辿ると、なんと250年以上も前の大発明に行き着きます。そして、特別な装置がなくても、原理さえ分かれば皆さんのご自宅でも(もちろん細心の注意を払って!)その現象を再現できてしまうのです。

今回は、有名女優さんも驚いた「静電気ドリンク」の秘密を解き明かしながら、科学史に名を刻む発明「ライデン瓶」の世界へとご案内します。

女優・広瀬すずさんもビックリ!静電気ドリンクの衝撃

以前、私が科学監修をさせていただいたテレビ番組で、女優の広瀬すずさんにこの静電気ドリンクを体験してもらったことがあります。

一口飲んだ広瀬さんは、「唇を内側から殴られたみたい!」とその衝撃を表現。ただの飲み物が、一瞬にして驚きの体験に変わった瞬間でした。この実験の面白さは、味ではなく体の中で電気が流れる感覚をダイレクトに味わえる点にあります。(その時の詳しい様子はこちら

しかし、この強烈な体験には相応の注意が必要です。電気の量を少しでも間違えると危険が伴うため、この記事を読んで安易に真似することは絶対にやめてください。試す場合は、必ず科学の専門家の立ち会いのもとで行う必要があります。ペースメーカーを使用されている方はもちろん、心臓の弱い方への実施は厳禁です。

科学の魔法瓶!「ライデン瓶」の秘密

さて、実験の前に、この現象の主役である「電気を溜める仕組み」について少しだけお話ししましょう。

この実験で使うアルミ箔を巻いたコップ、実はこれは世界で初めて電気を溜めることに成功した装置**「ライデン瓶」**とほぼ同じ構造なのです。ライデン瓶は18世紀のオランダ・ライデン大学で発明された画期的な蓄電器で、後の電気研究の発展に大きく貢献しました。

仕組みはこうです。コップの中の水(やアルミ箔)に、バンデグラフなどを使ってマイナスの電気(電子)を流し込みます。

すると、内側に溜まったマイナスの電気に反発して、コップの外側(を持っている手)にあるマイナスの電気が体を通って地面へ逃げていきます。その結果、外側はプラスの電気が残った状態になります。プラスチックのコップは電気を通さない「絶縁体」なので、内側のマイナスの電気と外側のプラスの電気が引き合ったまま、お互いがコップを挟んでにらみ合う形になります。

この「プラスとマイナスが絶縁体を挟んで向かい合っている状態」こそが、電気を溜める装置、すなわち「コンデンサー」の基本原理。皆さんは今、250年前の科学者たちと同じ興奮を追体験する準備をしているのです。

自宅で再現!静電気ドリンクの作り方

それでは、現代版ライデン瓶、「静電気ドリンク」の作り方を見ていきましょう。

用意するもの

プラスチック製のコップ

アルミ箔

水(お茶やジュースでもOK)

静電気発生源:バンデグラフ、または(自宅で試すなら)風船とタオル、下敷きと乾いた雑巾など

方法

1.まず、コップの外側にアルミ箔を巻きつけます。底から1cmほどの高さに帯状に巻くのが基本ですが、実はこのアルミ箔の幅が、溜まる電気の量を決める重要なカギになります。

2.コップの中に、もう一枚のアルミ箔で作った帯を入れ、そこに水を注ぎます。

3.いよいよ電気を溜めます。バンデグラフの場合は、中のアルミ箔に触れさせて電気を流し込みます。

4.バンデグラフがない場合は、タオルでこすって静電気を溜めた風船を、中のアルミ箔に何度もこすりつけましょう。特に**空気が乾燥している冬(12月~2月)**は静電気が発生しやすく、成功率が上がります。

これで準備は完了です。

さあ、飲んでみよう!唇がビリッとする理由

外側のアルミ箔にしっかり触れるようにコップを持ち、飲もうとすると…「バチッ!」という音とともに、唇に衝撃が走ります。

ウッ!

これは、コップの内側に溜まっていたマイナスの電気が、唇と水を通して体の中を通り、コップを持つ手のほう(外側のプラス側)へ一気に流れ込んだためです。この急激な電気の流れ(放電)が神経を刺激し、唇の筋肉を収縮させることで「ビクッ!」という衝撃になるのです。まさに、あなたの体が電気の通り道になった瞬間です。

プロの現場から~テレビ撮影の裏話~

テレビ番組でこの実験を行う際は、その日の気温や湿度によってアルミ箔の幅をミリ単位で調整します。例えば、乾燥した冬なら帯の幅は1cmで十分ですが、湿度の高い梅雨の時期には4cmくらいまで広げないと、タレントさんがリアクションできるほどの電気は溜まりません。

これは冬用の1.5cm幅。乾燥しているとこれでも強力です。

「櫻井・有吉THE夜会」という番組で俳優の鈴木亮平さんに試してもらったときは、ご本人が「静電気に強い」とのことだったので、通常よりかなり長めのアルミ箔を用意しました。

このように、単純に見える実験も、最高のパフォーマンスを演出するためには、科学的な知見に基づいた細やかな調整が不可欠です。だからこそ、専門家の監督が必要なのです。しつこいようですが、大きな装置で作ったり、静電気に弱い人や心臓が弱い人に試したりすることは絶対にやめてください。安全第一で科学を楽しみましょう。

※ 静電気発生装置を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします

【特集】やめられなくなる!静電気実験

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