砂糖はどこへ消えた?透明なビーカーに隠された「溶ける」の正体
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
皆さんは、温かい紅茶に入れたお砂糖が、かき混ぜるうちにスッと姿を消してしまう様子を不思議に思ったことはありませんか?「消えてしまった」ように見えますが、実はお砂糖は水の中でいなくなったわけではありません。今回は、当たり前すぎて意外と知らない「溶ける」という現象の正体を、簡単な実験を通して探っていきましょう。
実験:まずは「溶ける」と「溶けない」の区別をしてみよう
身近な材料を使って、水に混ぜた時の変化を観察してみましょう。
<準備するもの>
水(約100mL)を入れた2つのビーカー
薬さじ(またはスプーン)
ガラス棒(または割り箸)
溶けるもの: 砂糖、または食塩
溶けないもの: デンプン(コーンスターチや片栗粉)、または小麦粉
<実験方法>
- 1つ目のビーカーに、砂糖(または食塩)を薬さじで1杯入れます。
- もう1つのビーカーには、デンプン(または小麦粉)を薬さじで1杯入れます。
- それぞれをガラス棒でよくかき混ぜて、様子を観察してください。
こちらは入れた直後の様子です。

かき混ぜた後、2つのビーカーには決定的な違いが現れます。砂糖や食塩を入れた方は、しばらくすると液体が透明になります。これが理科の言葉で言う「溶ける(溶解)」という状態です。一方、デンプンや小麦粉を入れた方は、いくらかき混ぜても液体が白く濁ったままになり、時間が経つと底に粉が沈んでしまいます。
1時間後の様子

3時間後の様子

1日目の様子です。

さらに3日間おいてみると…

ほぼ透明になりました。この「透明かどうか」が、科学的に「溶けている」かどうかを判断する大きな基準になります。どんなに細かいとしても重力は働くはずで、下に落ちていってもおかしくないはずです。なぜ一日経っても、下にたまらないのでしょうか。溶けるは定義できたとしても、溶けるって一体どういうことが起こっているのでしょうか。
科学の視点:ミクロの世界で起きていること
なぜ、砂糖は溶けてデンプンは溶けないのでしょうか?その秘密は、粒の大きさにあります。砂糖が水に溶けると、砂糖の塊はどんどん小さく分かれていき、最終的には「分子」という目に見えないほど小さな単位にまでバラバラになります。この小さな粒が、水の分子の隙間にまんべんなく入り込むため、光を遮ることなく通り抜け、私たちは「透明だ」と感じるのです。
水の中では、水の分子がじっとしているわけではなく、凄まじいスピードで四方八方に飛び回っています。これを熱運動と呼びます。
また、砂糖の分子が重力で下に落ちようとしても、周りにある無数の水分子が猛スピードで砂糖の分子に衝突し、あらゆる方向へ弾き飛ばします。この「水分子による突き飛ばし」の力が、砂糖の分子にかかる重力よりもはるかに強いため、砂糖は下に落ちきることができず、水の中に漂い続けるのです。
対して、デンプンの粒は砂糖の分子に比べて非常に巨大です。水に入れてもバラバラになりきれず、大きな粒のまま水中を漂います。この大きな粒が光を跳ね返してしまうため、水は白く濁って見えるのです。
砂糖がデンプンと違うもう一つの理由は、水分子と強く引き合う性質(親水性)を持っていることです。砂糖の分子が水に入ると、水分子が砂糖の周りをがっちりと取り囲みます(これを水和といいます)。水分子と砂糖が仲良く手をつないでいるような状態になるため、砂糖だけが仲間外れにされて底に沈殿することが難しくなります。
「溶ける」がつなぐ生命のストーリー
この「溶ける」という現象、実は私たちの命を支えるとても大切な仕組みです。私たちが食べた栄養分は、血液という水分に「溶ける」ことで、体の隅々の細胞まで運ばれます。もし物質が水に溶けるという性質を持っていなければ、私たちはエネルギーを全身に届けることができません。コップの中で起きる小さな変化は、実は私たちの体の中でも起きている、壮大な生命維持のドラマの一部なのです。
次に何かを水に混ぜる時は、ぜひその中にある「目に見えない粒のダンス」を想像してみてくださいね。
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