波のグラフ問題完全攻略!「y-tグラフ」と「y-xグラフ」の違いがスッキリわかる【スマホで物理 #03-2】
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
波の世界を探る冒険へようこそ!これまで、波の基本的な性質について学んできましたね。今回は、その知識が本当に身についているかを試す、少し頭を使う「挑戦問題」を用意しました。一見するとただのグラフ問題ですが、実は大きな罠が隠されています。それは、止まって見えるグラフから、動いている波の「未来の姿」を予測しなくてはならないこと。まるで科学探偵のように、与えられた手がかりから波の全体像を推理する、そんな思考の面白さを体験できるはずです。あなたの波マスター度、ぜひ試してみてください!
挑戦状:波の正体を見破れるか?
まずは問題です。じっくり読んで、自分なりの答えを考えてみてください。ポイントは、2種類のグラフ「y-tグラフ」と「y-xグラフ」の違いを正確に理解することです。
問題
次の図のy-tグラフは、あるx軸の正の方向に2m/sで進む波の、原点(x=0)の媒質の様子を示している。次の各問に答えなさい。
(1) この波の周期・振動数・振幅はいくらですか。それぞれ求めなさい。
(2) この波の0.25秒後のy-xグラフを描きなさい。なお最低1波長分は描き、軸には物理量が読み取れるように、適当な数値も記入しなさい。
解けましたか?それでは、ここから思考のプロセスを一緒にたどっていきましょう。
ステップ1:グラフから基本情報を読み解く【(1)の解説】
まずは小問(1)です。与えられたy-tグラフは、例えるなら「原点(x=0)」という一点に設置された定点カメラの映像のようなものです。時間が進むにつれて、その一点がどのように上下に振動するかを記録しています。
- 周期 (T):媒質が1回振動して元の位置に戻ってくるまでの「時間」です。グラフの山から次の山までを見ると、1回の振動に0.5秒かかっていることがわかりますね。これが周期です。
- 振動数 (f):周期が「1回の振動にかかる時間」なら、振動数は「1秒間に何回振動するか」を表します。これは周期の逆数なので、公式 f=1/T に当てはめると…
1秒間に2回振動することがわかります。答えは2Hz (ヘルツ)です。
- 振幅 (A):振動の中心から、最も高い(または低い)場所までの距離です。グラフから、中心(y=0)からの高さは最大で0.2mだと読み取れます。よくある間違いは、山の頂点から谷の底まで(0.4m)を振幅としてしまうこと。気をつけましょう!
ステップ2:動く波の「瞬間写真」を撮る【(2)の解説】
ここからが本番です!(2)で求められているy-xグラフとは、波全体の形をある瞬間に「パシャッ!」と撮ったスナップ写真のようなもの。定点カメラの映像(y-tグラフ)だけをヒントに、このスナップ写真を完成させなければなりません。
推理①:まずは「時刻0秒」の波の形を暴く
いきなり0.25秒後の姿を考えるのは難しいので、まずは基準となる「時刻0秒」のy-xグラフがどんな形をしているのかを推理しましょう。
y-tグラフを見ると、時刻0秒のとき、原点の媒質は y=0 の位置にいます。
この条件に合う波の形は、次のAかBの2パターンしか考えられません。
推理②:未来を予測して、正しい形を特定する
どちらが正しい形なのでしょうか?ここで再びy-tグラフに注目します。時刻0秒の直後、原点の媒質はマイナス方向(下向き)に動いています。では、AとBの波を、問題文の通り「正の方向(右向き)」に少しだけ動かしてみましょう。
すると、波形Aを右に動かしたときだけ、原点(x=0)の媒質が下に動くことがわかります。これで確定です!時刻0秒の波の形はAの形だと特定できました。
推理③:波の「歩幅(波長)」を計算する
スナップ写真を完成させるには、波の「山から山までの長さ」、つまり波長(λ)が必要です。これは、おなじみの公式 v=fλ (速さ = 振動数 × 波長) を使って計算できます。
2.0[m/s]=2.0[Hz]×λ[m]
これを解くと、λ = 1.0m となります。これで、時刻0秒時点の完璧なy-xグラフが描けますね!
最終ステップ:時間を進め、未来の姿を描く!
さあ、いよいよゴールです。私たちが描いたのはあくまで「時刻0秒」の姿。問題で問われているのは「0.25秒後」の未来の姿です。
波は秒速2mで進むのですから、0.25秒間では、
進む距離 = 速さ × 時間 = 2.0 [m/s] × 0.25 [s] = 0.5 [m]
だけ進みます。つまり、先ほど完成させた時刻0秒のグラフを、そのまま右へ0.5m平行移動させれば、それが答えとなります!
みなさん、この未来の姿を描くことができたでしょうか?「定点カメラの映像」から「動く波の瞬間写真」を描き出すこのプロセスこそ、波の理解を深めるための最も重要なステップです。これができれば、あなたはもう波マスターです!
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