波の正体は『写真』と『ビデオ』で解き明かす! y-x, y-tグラフ完全攻略ガイド【スマホで物理 #02】

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

水面に広がる美しい波紋、ギターが奏でる心地よい音色、そしてスマートフォンに情報を届ける電波。私たちの世界は、目に見えるものから見えないものまで、たくさんの「波」であふれています。

この捉えどころのない「波」の正体を正確に理解するために、科学者たちが使う”2つの魔法の地図”があるのをご存知ですか? それが今回ご紹介する**「y-xグラフ」と「y-tグラフ」**です。一見すると難しそうですが、ちょっとしたコツさえ掴めば、波のすべてが手に取るようにわかるようになりますよ!

前回(#01)のまとめ

  • 波は振動が次々に伝わっていく現象
  • 「波」には、波を伝える物質(媒質)が必要
  • 波の形(山)の移動に合わせて、媒質が動くわけではない。

 

波を『パシャリ!』と撮る写真、y-xグラフ

まずは波の基本形から。波の盛り上がった部分を「山」、へこんだ部分を「谷」と呼びます。そして、この山と谷のワンセットで「1つの波」と数えるのが基本です。

波の山と谷

y軸が高さを、x軸が水平方向の広がりを示す。このグラフをy-xグラフという。

このグラフは、縦軸(y)が波の高さ、横軸(x)が水平方向の位置を示しています。これは難しく考えず、波の形をある瞬間に「パシャリ!」と撮影した一枚の写真だと思ってください。

この「写真」を見れば、波が今どんな形をしていて、船がちょうど山の頂上にいる、といった空間的な広がりが一目でわかります。y-xグラフは、時間を止めて、波の形そのものを写し取ったスナップショットなのです。

では、実際に波が動く様子をアニメーションで見てみましょう。下の画像をクリックして、波の形(山の移動)と、船(媒質)の上下の動きの違いを観察してみてください。

波の動きのアニメーション

時間経過による波の変化

上の図のように、時間を追って何枚も写真を並べると、波が進んでいく様子や、原点にある船が上下に振動している様子がよくわかりますね。

しかし、ここがy-xグラフの弱点です。もし手元に写真が1枚しかなければ、その船が次に上に動くのか下に動くのか、未来の動きは全く予測できません。走っている人の写真1枚だけ見ても、その速さがわからないのと同じです。

そこで登場するのが、もう一つの魔法の地図、「y-tグラフ」です!

一点をじっと見つめるビデオカメラ、y-tグラフ

では、今度はある一点だけに注目してみましょう。先ほどのアニメーションで、赤いボール(船)の動きだけをじっと見つめてください。

波の動きのアニメーション

赤いボールは、その場で上下に振動を繰り返しているだけですよね。この「ある一点の動き」を時間の流れと共に記録したものが、y-tグラフです。まるで、一点に設置したビデオカメラの映像のようなものだと考えてください。

y-xとy-tグラフの関係性1

y-xとy-tグラフの関係性2

完成したy-tグラフ

この新しくできたグラフは、縦軸(y)が波の高さ、そして横軸(t)が経過時間を示しています。これを見れば、船(媒質)が「何秒後に山の頂上にきて、何秒後に谷の底に沈むか」という時間の変化が手に取るようにわかります。これなら船酔いしやすい人も心の準備ができますね!

このように、ある場所にある媒質の時間の変化を示したグラフがy-tグラフなのです。

y-xグラフ(写真)だけでは「未来の動き」がわからず、y-tグラフ(ビデオ)だけでは「全体の形」がわからない。波という現象を正しく理解するためには、空間を切り取る「写真」と、時間を記録する「ビデオ」、この2つの視点がどちらも不可欠なのです。

地震計が記録する揺れのグラフなども、このy-tグラフの一種なんですよ。

(続く)

2つのグラフでバッチリ!波で使う5つの量【スマホで物理 #03-1】

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