鉄球も羽も同時に落ちるNASAの実験!なぜ羽と鉄球は同時に落ちるのか?ガリレオも驚いた「落下の法則」!
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
木から落ちるリンゴを見て、かのニュートンは「万有引力の法則」を発見したと言われています。スマホをつるんと手から滑り落とす、ありふれた日常の一コマ。しかし、このありふれた「落ちる」という現象にこそ、宇宙の法則につながる壮大なドラマが隠されているのです!
突然ですが、クイズです。一枚の紙と重たい石を同時に手から離したら、どちらが先に地面に着くでしょうか?
「そんなの、重い石に決まってる!」
そう思ったあなた、物理の世界へようこそ!実はその「常識」、ある条件が加わると覆ります。この記事では、ものが落ちる運動、すなわち「落下運動」の奥深い世界にご案内します。
常識を疑え!ガリレオが挑んだ「落下の謎」
今から400年以上も昔、偉大な科学者ガリレオ・ガリレイも同じ疑問を抱きました。当時の人々は「重いものほど速く落ちる」と信じて疑いませんでした。しかしガリレオは「もし空気の邪魔がなければ、すべての物体は重さに関係なく同じ速さで落ちるはずだ」と考えたのです。
この考えを証明するために、彼がピサの斜塔から大小の玉を落として見せた、という伝説はあまりにも有名ですね。(※諸説あります)
「いやいや、でもやっぱり羽とボールを落としたら、ボールの方が先に落ちるじゃないか!」
その通りです。私たちの周りには**「空気抵抗」**という、目に見えないブレーキ役が存在します。軽い羽は空気抵抗の影響を大きく受けるため、ゆっくりと落ちるのです。では、もしその空気抵抗がなくなったら…?物理学の常識を覆す、衝撃の実験映像があります。
NASAが証明!真空では羽も鉄球も同時に落ちる

イギリスの放送局BBCが、なんとNASAの巨大な施設を使って、驚くべき実験を行いました。それは、巨大な真空チャンバー(真空状態を作り出す部屋)の中で、鳥の羽と鉄球を同時に落とすというもの。
最初は空気がある状態で落とすので、もちろん鉄球が先に着地します。しかし、部屋の空気をすべて抜き、巨大な真空空間を作り出した後、再び二つを落下させると…!

BBCTWOより、鉄球と羽が同時に落ちている様子
なんと、フワフワの羽と重い鉄球が、見事にそろって同時に地面に到達するのです。これこそが、落下運動の正体である**「等加速度運動」**が真の姿を現した瞬間です。
この記事では、「自由落下」と「鉛直投げ下ろし」という2つの代表的な落下運動を、数式とともにやさしく解説します。学校の物理を思い出しながら、科学の真実に触れる楽しさを味わっていただけたら嬉しいです。
数式で冒険しよう!落下運動の2大パターンを解き明かす
落下運動は、地球の重力が物体を引っ張ることで起こります。このとき、物体の速さは一定の割合でどんどん加速していきます。この加速の度合いを「重力加速度 (g)」と呼び、地球上ではおよそ 9.8m/s^2となります。これは「1秒間に 9.8m/s ずつスピードがアップしていく」という意味です。
このルールを使えば、落下運動は等加速度運動の公式で解くことができます。
パターン1:自由落下
手をそっと離して物体を落とす、最もシンプルな落下運動です。初速度が 0 なのがポイントです。例えば、小球をある高い木の上から初速度 0 で落下させ、ちょうど 2.0 秒後に地面に着いたとします。この木の高さを求めてみましょう。
使うのは、等加速度直線運動の距離の公式
\[y = v_0t + \frac{1}{2}at^2\]
です。落下運動の場合、加速度 a が重力加速度 g に、初速度 v_0 が 0 になるので、式はこう変わります。
この式に、t=2.0 秒、g=9.8m/s^2を代入すると…
\[y = \frac{1}{2} \times 9.8 \times 2.0^{2} = 19.6 \approx 20\text{m}\]
木の高さは約 20m と求めることができました!ビル5階分くらいの高さから落としたことになりますね。
パターン2:鉛直投げ下ろし
次に、下に向かって「えいっ!」と初速度をつけて投げる場合です。例えば、初速度 5.0m/s で、鉛直下向きに小球を投げおろしたときの、2.0 秒後の速さと落下距離を求めてみましょう。
今度は初速度 v_0 が 5.0m/s です。等加速度運動の公式をカスタマイズしましょう。
それでは 2.0 秒後の速さを求めてみましょう。速度の式に値を代入すると、
\[v = 9.8 \times 2.0 + 5.0 = 19.6 + 5.0 = 24.6 \approx 25 \text{ m/s}\]
時速にすると約 90km/h!かなりのスピードですね。次に 2.0 秒後の落下距離は、
\[y = \frac{1}{2} \times 9.8 \times 2.0^2 + 5.0 \times 2.0 = 19.6 + 10 = 29.6 \approx 30\text{m}\]
となります。このように、基本の公式を状況に合わせて使いこなしていくのが物理の面白いところです。より詳しい解説はこちらの動画もご覧ください。
『大人のための高校物理復習帳』(講談社)という本も執筆しました。自由落下運動に加えて、二次元の運動である放物運動や、そのほかの物理の公式と身近な例についてとりあげています。
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