わかっていても絶対驚く!鉄球も羽も同時に落ちるNASAの実験(落下運動)

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「落ちる」って、こんなに奥が深い!~落下運動の正体は“等加速度運動”だった~

ものが落ちる――それは、だれもが一度は見たり経験したことがある、ありふれた出来事です。リンゴが木から落ちたり、スマホをつるんと手から滑り落ちたり…。日常ではよくある“うっかり”ですが、実はこの「落ちる」現象、物理の世界ではとんでもなく重要なんです!

たとえば、紙と石を同時に手から離したら、どっちが先に地面に着くでしょう?
「そりゃあ重い石でしょ?」と思ったあなた――実は、それが物理の面白いところなんです。

どんなものでも、空気の影響がなければ、すべて同じ加速度で落ちる。つまり、落下運動は「等加速度運動」として説明できるんです!

「…いやいや、でも羽とボールを落としたら、やっぱりボールの方が先に落ちるよね?」

そう思いますよね。実際、BBCのある動画では、鳥の羽とボールを落としてみる実験が登場します。最初は確かに、ボールのほうが速く落ちています。でも――驚くべきはそのあと!

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BBCTWOより、鉄球と羽が同時に落ちている様子

BBC TWO より引用

なんと真空にしてボールと鳥の羽を落とすと、同時に落ちると言う実験が紹介されています。しかもめちゃくちゃ大規模な実験でとっても面白いです。NASAの施設を利用したそうです。

以下この記事では落体の運動について少し解説をしようと思います。「自由落下」「鉛直投げ下ろし」「鉛直投げ上げ」という3つの典型的な落下運動を、数式とともに“やさしく”“わかりやすく”解説します。

理科がちょっと苦手な方も、学校の物理を思い出しながら楽しんでいただけたら嬉しいです。

○ 自由落下

私たちの住む世界には重力という力がはたらいています。重力により物体は地面に向かって落ちていきますが、この加速度aを測定すると、地球上どこでも一定で、およそ9.8m/s2となります。これを重力加速度といい、gをつかって示します。

重力加速度g = 9.8m/s2

「え!同じ速度で落ちるなんて嘘だ!重い物のほうが速く落ちるのではないか?」

そう思うかもしれません。実際には空気抵抗という空気の粒子がぶつかる影響によって、
空気抵抗の影響を受けにくい物体は重いほうが速く落ちます。

しかし真空で実験をすると、なんと羽もボーリングの玉も同じ時間に落下します。
つまり9.8m/s2の加速度で落ちていきます。

そんな驚くべき実験の様子がこちらです。

落下運動はこのように、質量によらず真空中であれば加速度が一定の等加速度運動なので、
等加速度運動の公式を使うことにより、今までの問題と同じように解くことができます。

例えば、小球をある高い木の上から初速度0で落下させたとします。この小球がちょうど2.0秒後に地面に落下した音がしました。
この木の高さを求めてみましょう。

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まずは等加速度直線運動の公式を、作り変えていきます。

縦方向(婉曲方向)に物体が動く場合には、y軸を使っていますが、x軸と同じで位置を示すだけですから、あまり気にしないでください。
一般的に水平方向はxを、鉛直方向はyを使うことが多いだけです。y軸の向きは物体がはじめに動く方向、つまり下方向にとりましょう。

次に加速度と初速度を問題文からみつけると、a=+g、v0 = 0だということがわかります。これを位置の式に代入します。

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最後に2秒後に落下した音が聞こえたということから、t=2を、またg=9.8を代入して高さを求めると、

y = 1/2×9.8×22 = 19.6≒ 20m

となります。求めることができましたね。

○ 鉛直投げ下ろし

次に鉛直投げ下ろしについて考えてみましょう。例えば初速度5.0m/sで、鉛直下向きに小球を投げおろした場合を考えてみましょう。このときの2.0秒後の速さと落下距離をもとめてみます。

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それではa,v0を見つけて等加速運動の公式に代入してみましょう。

重力加速度はgとしていますが、この中には重力加速度の値、9.8という数字が入ります。

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それでは2秒後の速度を求めてみましょう。速度の式にg=9.8,t=2を代入して計算すると、

v = 9.8×2+5 = 24.6

有効数字を合わせると、25m/sとなります。また2秒後の落下距離は、位置の式にg=9.8,t=2を代入して計算すると、

x = 1/2 ×9.8×22 + 5×2 = 39.6

およそ40mとなります。このように等加速度運動の公式は、カスタマイズして使っていきましょう。

動画での解説はこちらを御覧ください。

『大人のための高校物理復習帳』(講談社)という本をかきました。自由落下運動に加えて、二次元の運動である放物運動や、そのほかの物理の公式と身近な例についてとりあげています。

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