科学実験で遊ぼう!「人間リレー」で解き明かす脳と神経の不思議な関係(反応速度)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

「もしもし、あなたに伝言です!」…なんて、糸電話で遊んだことはありますか?では、もしその伝言ゲームを、あなた自身の体を使って、電気信号の速さでやってみたらどうなるでしょう?今日は、人間の反応速度の不思議に迫る、ちょっとスリリングな実験をご紹介します。

A group of people holding wrists in a circle for an experiment

神経を駆け抜けるリレー!実験方法は?

先日、実習生の皆さんと「反応速度」を計測する面白い実験を行いました。ルールはとてもシンプルです。全員で輪になり、隣の人の手首を片手でそっとつかみます。(中学生くらいだと、まだ手を繋ぐのは少し恥ずかしいかもしれませんからね!)

一人がストップウォッチを持ち、スタートの合図と同時に、隣の人の手首を「キュッ」と握ります。手首を握られた人は、感じ取った瞬間に、今度は自分が反対の手で隣の人の手首を握ります。

これをリレーのようにどんどん伝えていき、最後の一人がストップウォッチを持っている人の手首を握ったら、その瞬間にタイムを止めます。まさに、体を使った「伝言ゲーム」ですね!スタートの「握る」という情報が、人の体を次々と駆け巡っていくわけです。

驚きの結果!思考のスピードはどれくらい?

今回、実習生の7名で挑戦してみたところ、タイムはなんと1.31秒でした!

実習生7名で手を繋いで輪になっている様子

動画をご覧ください。

単純に7で割ってみると、一人当たりの反応時間は約0.187秒となります。ここで生徒に質問をします。あと2回やるけれど、みんなが集中して行えば、これは限りなく0秒に近づくのだろうか?この問いをすることによって生徒はどのような経路で処理をされているかについて考えるようになります。

このわずか0.187秒の間に、私たちの体の中では一体何が起こっているのでしょうか?

Diagram showing the path of a nerve signal

実は、これだけの壮大なドラマが繰り広げられているのです。

【入力】片方の手で「握られた!」という皮膚の感覚をキャッチします。

【伝達】その情報が、電気信号となって感覚神経という超高速ケーブルを通り、腕から脊髄、そしてへと届けられます。

【処理】脳が「よし、次の人を握れ!」という指令を決定します。

【伝達】その指令が、今度は運動神経という別のケーブルを通って、もう片方の腕の筋肉へと送られます。

【出力】指令を受け取った筋肉が収縮し、「握る」という行動が完了します。

この一連の流れが、たった0.187秒で終わっているとは、驚きですよね!私たちの体は、とてつもなく高性能な情報処理システムを持っているのです。

「触覚」と「視覚」、速いのはどっち?

今回は「触覚」からの反応を見ましたが、例えば目で見て反応する「視覚」の場合はどうでしょうか?陸上の短距離走で、ピストルの音を聞いて(聴覚)スタートするのと、目で旗が振られるのを見て(視覚)スタートするのとでは、反応速度に違いは出るのでしょうか。

実は、どの感覚器からの情報かによって、脳での処理の仕方や伝わる経路が少しずつ違うため、反応速度も変わってきます。この「目で見てからの反応」についても調べてみると、さらに面白い発見がありますよ。

ぜひ、こちらの記事も合わせてご覧ください。比較してみると、人体の神秘がもっと見えてくるはずです。

定規で反応速度を確かめよう!反応時間を確かめる実験その1(視覚→脳→脊髄→手の動き)

目で見てからでは間に合わない!お札キャッチで学ぶ「0.2秒の壁」の正体(反応速度)

 

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