目で見てからでは間に合わない!お札キャッチで学ぶ「0.2秒の壁」の正体(反応速度)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
目の前でひらひらと落ちていく1000円札。もし、これを指でパッとつまんでキャッチできたら、お札はあなたのもの…!そんな夢のようなチャレンジがあったら、挑戦してみたくなりませんか?😉一見すると、とても簡単なゲームに見えますよね。でも、実はこのチャレンジには、人間の体の驚くべき秘密と、物理法則のちょっぴり意地悪な現実が隠されているのです。
お札キャッチチャレンジ!
ルールは至ってシンプル。
Aさんがお札の上端をそっと持ち、Bさんは指をお札の中央あたりに構えます。Aさんが予告なしにお札を離し、Bさんがそれをキャッチする、ただそれだけ。もしキャッチできたら、お札をプレゼント!…なんて言われたら、燃えてしまいますよね。


しかし、何度挑戦してもうまくいかないはず。それもそのはず、このチャレンジは、科学的に見て「ほぼ不可能」な、意地悪実験なのです!
なぜキャッチできないの?「0.2秒の壁」の正体
その秘密は、人間の「反応時間」にあります。私たち人間が、目で見たものに反応して行動を起こすまでには、一連のプロセスが必要です。
お札が落ちるのを目で見る(情報入力)→その情報が視神経を通って脳に伝わる→脳が「お札が落ちた!指を動かせ!」と判断し、指令を出す🧠→指令が運動神経を通って指の筋肉に伝わる→筋肉が収縮して、ようやく指が動く(行動)💪
この一連の流れにかかる時間、実はどんなに反応が速い人でも、およそ0.2秒かかると言われています。では、この「あっという間」に思える0.2秒の間に、お札はどれくらい下に落ちてしまうのでしょうか?ここで登場するのが物理法則、「自由落下」です。物が重力に引かれて落ちるときの距離は、時間の2乗に比例してどんどん長くなります。少し難しい式で書くと、 y=1/2gt^2 となります。
この式に、反応時間である t=0.2 秒を入れて計算してみると…
y=1/2×9.8 m/s2×(0.2 s)2=0.196 m≈19.6 cm
なんと、約19.6cmも落下してしまうのです!ご存知の通り、1000円札の縦の長さは15cm。つまり、あなたの脳が「落ちた!」と認識して指を動かし始めた頃には、お札はもうあなたの指の下を通り過ぎてしまっているのです。目で見てからでは、もう間に合わない。これが、お札をキャッチできない科学的な理由だったのです。
日常に潜む「反応速度」
学校の授業でこの実験をすると、いつも大盛り上がり!「先生、今のは惜しかった!」「次こそは!」と、みんな目を輝かせて挑戦しますが、結果は同じ。悔しがる生徒たちの顔を見るのも、また一興です(もちろん、学校なのでお札はあげられませんが!)。
この「反応速度」は、実は私たちの生活の様々な場面に関わっています。例えば、車の運転。危険を察知してブレーキを踏むまでのわずかな時間に、車は進み続けますよね(空走距離)。これも反応時間が原因です。また、陸上競技のスタートで、号砲(聴覚)が光(視覚)よりも使われるのも、聴覚の方が反応時間がわずかに短いから、という理由もあるんですよ。
一見すると単純な遊びですが、実は 人間の体の仕組み(生物)と物の動きの法則(物理) が絶妙に組み合わさった、奥深い科学実験なのです。日常に潜む「なぜ?」を探求すると、世界はもっと面白く見えてきますよ。あわせてこちらの記事もご覧ください。
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