「磁場ニャン」へのツッコミが科学的に深すぎた話(磁石?それとも磁場?)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

10年以上前の話です。Twitter(現在はXとなりました)にて「ねえ、『磁場ニャン』って知ってる?」…先日、友人からこんなダイレクトメールが届きました。一瞬、大人気キャラクターの「ジバニャン」のことかと思いきや、どうやら違う様子。この「磁場ニャン」が、目に見えないはずの「磁石の力」をめぐる、とっても楽しくて奥深いお話の始まりでした。

衝撃のイラスト「磁場ニャン」との出会い

友人が教えてくれたのは、漫画家の村田さん(@NEBU_KURO)が描かれたという、こちらのイラストです。

An illustration of the character Jibanyan with iron filings arranged around it, mimicking a magnetic field.

猫(ジバニャン)の周りに、砂鉄がびっしりと、しかも規則正しく並んでいます。最初、血のようにも見えて「怖い!」と思ってしまいましたが、これが磁石の周りにできる模様、つまり磁場を表しているから「磁場ニャン」なのだとか。なるほど!と、思わず吹き出してしまいました。

専門家登場!それ、実は「磁石ニャン」です

ところが、この話には続きがあります。物理学者の前野さん(@irobutsu)から、「これは磁場ニャンではなく、『磁石ニャン』ですね」という、専門家ならではのツッコミが入ったのです。

どういうことでしょう?

実は、科学的に言うと、このイラストでジバニャン自身がなっているのは、砂鉄を引きつける力の源である「磁石」そのものです。そして、その磁石の力が及んでいる空間、つまり砂鉄が模様を作っている部分が「磁場」なのです。

理科の実験を思い出してみてください。棒磁石の上に紙を置いて砂鉄をまくと、砂鉄が線のような模様を描きますよね。あの線一本一本が「磁力線」とよばれるもので、磁力線が集まってできている空間全体が「磁場」というわけです。

つまり、最初のイラストは「ジバニャンが磁石になった姿」だったのですね。

では、本当の「磁場ニャン」とは?前野先生が、自ら描いてくれました。それが、こちらです!

An illustration where multiple Jibanyans are arranged to form magnetic field lines.

なんと、猫たちがN極からS極へと向かう「磁力線」のように並んでいます!これこそが、ジバニャンで「磁場」そのものを表現した、正真正銘の「磁場ニャン」!一本取られました。

さらに続く知の探求!もっと正確な「磁場ニャン」へ

この知的なお遊びは、さらに高みへと向かいます。前野先生が、さらに正確さを追求して描き直してくれたのがこちらのバージョン。

A more refined illustration of Jibanyans forming magnetic field lines, showing density variations.

どこが違うかわかりますか?磁石の両端(磁極)に近いほど、猫の密度が高くなっていますね。これは、磁力線が磁極の近くで密になっている(=磁場が強い)という性質を完璧に表現しています。すごい!ただ、ご本人曰く、プログラムの都合で重心が少しS極側に寄ってしまったとか。これを修正すべきか、という会話まで交わされていました。

一見すると「どうでもいい〜!」と笑ってしまうようなやり取りですが、実はこれこそが科学の面白さの本質なのかもしれません。専門家が本気で遊び、楽しみながら知識を深掘りしていく。こういう知恵の「最高の無駄遣い」、私は大好きです!

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