気孔の観察、ドクダミでできちゃいました!ムラサキツユクサに頼らない方法

桑子研
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春から初夏にかけて、校庭の隅や塀のきわに、こっそり存在感を放っている植物──それがドクダミです。あの独特なにおいを一度でも嗅いだことがあれば、忘れられないはず。最初はひっそり生えていたはずなのに、気がつけばあたりを埋め尽くすほどに勢力拡大。理科教師としては、この「繁殖力の強さ」自体がすでに観察対象として魅力的なのですが、今回はそんなドクダミを「気孔観察の教材」としてご紹介します。

こちらは春に撮影をしたものです。花がたくさん咲いていますね。

顕微鏡観察といえば、ムラサキツユクサの気孔が有名ですが、

顕微鏡撮影クリップでムラサキツユクサの気孔を観察しよう(顕微鏡撮影クリップTomeco)

葉のうらを、100倍で見ると

なんとドクダミの葉でも観察できるのです。染色もプレパラート作りも不要。葉の裏をそのまま顕微鏡でのぞくだけで、気孔の姿がくっきり見えてきます。これは科学部の活動中、偶然の発見から始まりました。

「ムラサキツユクサがないから今年は気孔観察できないな…」とあきらめかけたとき、ふと手に取ったドクダミの葉。その裏面をのぞいてみたところ──思わず「おおっ!」と声をあげるほど、見事に気孔が広がっていました。

倍率は100倍(対物10倍・接眼10倍)

なんと夏にとると、葉が緑になっています。不思議!

これを適当にちぎって、スライドガラスに乗せればプレパラートの完成です。お手軽!

葉の表側(対物4倍・接眼10倍=40倍)

葉の裏側(40倍)

気孔が裏の方が多いのがわかりますが、わかりにくいので倍率を上げます。

葉の表側(100倍(対物10倍・接眼10倍))

すこ

裏側

明らかに気孔の数が多いですね。

どこにでもある、誰でも手に入る、準備も簡単、観察もしやすい。三拍子そろった理科教材、ドクダミ。さっそく授業に取り入れてみませんか?

【理科の知識ポイント】

  • 気孔とは?

     植物がガス交換(呼吸・蒸散)を行うための小さな穴。葉の裏面に多く分布しており、乾燥防止の工夫とも言えます。

  • ドクダミが観察しやすい理由

     ドクダミの葉は表皮細胞が比較的薄く、光の透過性が高いため、染色しなくても気孔が見えやすいのです。また気孔のある細胞をよくみると、緑色になっているのがわかります。気孔の開け閉めに、エネルギーを使うのでしょうか。面白いところですね。

  • 探究につなげるには?

     日なたと日陰のドクダミで気孔の数に違いがあるか調べたり、他の植物と比べてみたりすることで、個別の探究課題に発展できます。

【授業で盛り上がる小ネタ】

  • ドクダミのにおいの正体は?

     葉や茎をちぎると広がるあの独特なにおい。これは「デカノイルアセトアルデヒド」などの揮発性成分によるもの。抗菌・抗カビ作用があり、植物自身を守る役割を果たしています。

  • 薬草としてのドクダミ

     「十薬(じゅうやく)」の別名を持つドクダミ。古くから民間薬として使われ、抗菌・利尿・抗炎症作用など、多くの効能があるとされてきました。授業中に少し触れるだけで、生徒の関心がぐっと高まるはずです。

そのほかにもドクダミについてはこちらにまとめました。ご覧ください。

驚異の生命力!ドクダミの観察で学ぶ植物の戦略(双子葉類の観察)

【まとめ】

顕微鏡観察の導入にも、植物のしくみの理解にも、さらには探究活動の足がかりとしても、ドクダミの気孔観察は非常におすすめです。何より、身近な自然を教材に変える面白さを、生徒と共有できるチャンスです。理科教師としての“ネタ帳”に、ぜひ加えておいてください!

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