失敗しない・怪我しない蒸留実験の極意(安全面・時短法)
今回は、中1で行うワインの蒸留を通じて、液体の蒸発・凝縮の性質を学ぶ実験を行いました。アルコールの性質を理解し、安全に配慮しながら実験を進めました。使用したワインはこちらの安めのものを使いました。事故の多い実験なので、初めての先生方が分かるように、丁寧に注意点についてまとめました。ご参考にしてください。
用意するものは以下のものです。
枝付き丸底フラスコ、試験管3本、ビーカー、スタンド、ガスバーナー、三脚、金網、ゴム栓付き温度計、ワイン、マッチ、もえさしいれ、濡れ雑巾、軍手、保護メガネ
ワインはこちらを用意しました。
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amazonだとこちら。アルコール度数が大切です。
【色】 赤 【甘辛度】 やや甘口 【味わい】 ミディアムボディ 【アルコール度数】 11% 【おすすめの飲み方】 軽く冷やして
安全対策 特に火傷などの事故が多い実験です。安全対策については、注意を払う必要があります。 授業で使うスライドも共有します。これから説明することについて写真を使ってまとめたものです。最後のチェックなどで利用してみてください。
実験の手順
1 事前準備
・ワインを10mLずつ10本の試験管に分け、各班に配布。
・軍手、保護メガネを着用し、安全対策を徹底。
・実験器具(枝付き丸底フラスコ、試験管、ガスバーナー、金網、温度計など)を準備。
アルコール度数をよく確認しておきましょう。注意点が多い実験で、火傷なども多いので、前時で私のほうで実際に演示実験をしておきました。そして2時間目に生徒に実際に実験をしてもらいました。ワインをあらかじめ10mLずつあらかじめ10本の試験管にとって用意をしておきました。当日はこちらを配りました。
2 フラスコへの注ぎ方
・枝付き丸底フラスコにワインを入れる際、枝の方に流れないよう、枝を上に向けて注ぐ。
・温度計をゴム栓につけ、枝のあたりにセット。
実験器具は全てその試験管を各班(10班)にそれぞれ渡していきます。注ぎ方に注意が必要で、枝付き丸底フラスコにワインを入れていきますが、枝のほうにワインがいかないように、枝を上に向けて入れるように指示をしました。
そのほかの実験道具は、2クラス連続だったので、はじめのクラスの生徒は準備を、終わりのクラスの生徒は片付けをさせました。かなりタイトな時間の実験です。
軍手は蒸留をしたときにゴム管を取り替えるときの火傷防止でつけさせました。試験管は、1mLのところにマジックなどでマークをつけておくか、メモリ付き試験管を使うと良いですが、今回は試験管の下から0.5cmくらいが1mLであることを伝えて、実際に1mLの量を生徒に見せました(小指の爪の長さくらい)。赤ワインは色がついているので、蒸留をしたときの色の変化を観察するにも適しています。
ゴム栓につけた温度計は、枝のあたりにセットします。枝のあたりでの気体の温度を測りたいからです。またアームは枝の分岐点の上側を持つようにしましょう。下側をもつと、蒸発して気体になったエタノールがまた液体に戻ってしまい、効率的に集められません。
3 加熱の開始
・沸騰石を入れて突沸を防止。
・金網を使用し、炎が一点に集中しないよう注意。
・ガスバーナーの火力を調整しながら加熱し、温度上昇を観察。
集める試験管のそこにゴム菅の先がつかないように、1cmくらい浮かせておきましょう。またゴム菅がおれまがっていると危ないので注意します。
セットをしたら、沸騰石をいれて、ガスバーナーで温めていきます。沸騰石は突沸という現象を防ぐために入れます。 #突沸 については、こちらをご覧ください。ガスバーナーを強火にしすぎると、沸騰した時に液体が跳ね上がって、枝の方に流れてしまうことがあることも注意が必要です。
4 蒸留の観察
・温度が70℃を超えると、枝の方に液体がたれ始める。
・ゴム管を通して試験管に液体を回収(1mLずつ3本採取)。
・試験管交換時は、ビーカーごと動かすとスムーズ。
温度をみながら弱火で熱していくと、はじめはなかなか温度があがりません。気体の温度をはかっているので、液体があたたまってもなかなか反応しないためです。沸騰し始めると、ググッと温度が上昇してきます。この点も観察させたいところですね。
あたためるときには、金網をつかって、炎が一点に集中しないようにしましょう。ガラス器具の場合は金網を使います。ある部分だけ膨張して、ガラス機具がわれないようにするためです。丸底フラスコではなく、試験管をつかって熱する方法もあります。
温度が70度を超えてくると、枝の方に少しずつ液体がたれはじめます。
これをゴム管を通して、試験官でキャッチします。1mLくらいずつわけて、3本程度とりましょう。なお温めすぎないように、温度計をみながら適宜ガスバーナーの炎の当たり方や大きさを調整してください。
5 実験終了時の注意
・ガスバーナーの火を消す前、または消してすぐにゴム管を試験管から抜く(逆流防止)。
・取り外したゴム管は水の入ったビーカーには入れず、濡れ雑巾の上に置く。
1本目がおわって次の試験管をいれるときに、手こずることがありますが、このときは試験管が入ったビーカーごと動かすと、うまくいきます。なお管が熱いことがあるので、軍手をはめると良いでしょう。
3本とれて、実験を終える際は、ガスバーナーの火を消す前か、消してすぐに、必ずゴム管を試験管からぬいてください。こうしないと、なかの気体が収縮する時に、冷えた液をすってしまい、それが丸底フラスコや試験管に落ちることで、急激な温度変化によってガラス器具がわれることがあります。 #逆流 という現象です。
液体を吸い上げていきます。
こちらの動画をみるとその危険性がよくわかると思います。
よく取り去った管を、水の入ったビーカーに入れてしまう生徒がいますが、これも危険です。机の上に直接おくのが気になると思いますが、濡れ雑巾などをひいておいて、その上におくと良いでしょう。
ただ逆流したからといって、必ずしも割れるわけではありません。
6 結果と考察
・燃焼試験:1本目・2本目の液体は青い炎を発し、アルコールが含まれていることが確認できた。
・冷却効果:液体を指に垂らすと、気化熱により冷たく感じた。
・匂いの変化:アルコールのにおいと、ワイン由来の香りがわずかに残っていた。
1本目や2本目の液体を、蒸発皿などにとってマッチで火をつけてみると、あおい炎がみえます。3本目や4本目は火がつきにくかったり、またつかなかったりします。
また1本目や2本目の液体を指にたらすと、スーッと冷たくなるような感覚があります。また匂いをかいでみると、アルコールのにおいがするのですが、ワインの匂いもわずかにします。10mL生徒に配っています。今回のアルコール濃度が11%なので、大体1mLエタノールが含まれていることになります。そのため、1本目の試験管はほぼほぼエタノール、2本目は水とエタノール、3本目は水という結果になるようにしています。
ワインの蒸留実験を通じて、液体の蒸発・凝縮の性質を学べます。また、逆流防止の重要性や、温度管理のポイントについても理解を深めることができます。
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