バイカルアザラシは丸い窓から外を見ている【科学のネタ】
先日、僕は箱根園水族館へと足を運びました。そこで僕の目を釘付けにしたのは、巨大なバイカルアザラシの水槽です。この水槽は、その構造に類まれな工夫が凝らされており、観覧スペースが2つに分かれています。二階からは陸上にいるアザラシたちの愛らしい姿を、そして一階からは水中にいる彼らの優雅な泳ぎを観察できるのです。僕が訪れた時、アザラシたちはまるで空を舞うかのように、水中を右へ左へと滑らかに泳いでいました。時折、息をするために水面へとふわりと上昇し、鼻先を出すと、またすぐに水の中へと戻っていく。その一連の動作は、重力から解き放たれたかのような自由さに満ちていました。
このアザラシ水槽を目の当たりにしたとき、僕の脳裏には、以前訪れたすみだ水族館の「ペンギン水槽」の光景が鮮やかに蘇りました。
あの水槽では、水中にいながらにして、まるで空に浮かぶ不思議な丸い窓を通して外の世界を覗き見ることができたのです(詳細はこちらのリンクを参考に)。もしかしたら、このアザラシ水槽でも同じような体験ができるのではないか?そんな期待を胸に、僕は一階へと降り、アザラシたちの水中での様子を眺めながら、ゆっくりと目線を上へと向けていきました。すると、やはりそこに、その「丸い窓」はありました。水の中から見えた、あの神秘的な円形の窓が。
水槽の中から水面を通して外の世界がどのように見えるかについて、まさにこの現象が捉えられています。動画では、アザラシのいる水槽の中から視線を上げていくと、水面が鏡のようになり、外の世界が見えなくなる様子が映し出されています。目線を少しずつ上にあげていくと、
水面に注目
この状態では、水面に水底の岩が映り込んでいるのが確認できます。しかし、さらに視線を上げていくと、水面に丸い穴が開き、そこから外の世界が見えるようになるのです。
丸い窓発見!見えました。丸い窓です。
この「丸い窓」の縁の部分こそが、物理学における「臨界角」の境界線なのです。この窓の中には、水槽の外の世界がはっきりと映し出されます。この現象の原理は、光の「屈折」と「全反射」という二つの重要な物理現象によって説明できます。
簡単に原理を説明すると、このような図になります。光の逆進性を使って、逆に見ていくとよくわかりますよね。
外の世界が見えるのは、外から水の中に入ってきた光が屈折して僕たちの目に入ってくるからです。しかし、水面が鏡のように見えるのは、外から入ってこようとした光が、ある角度を超えると水の中に入ることができず、水面で全て反射されてしまう「全反射」という現象が起きているためです。そのため、僕たちの目には、水底の様子や水中のアザラシたちが映り込んでいるように見えるのです。
この「臨界角」や「全反射」といった概念は、高校の物理で学ぶ内容ですが、水族館という身近な場所で、これほどまでに鮮やかにその現象を体験できるとは、まさに科学の醍醐味と言えるでしょう。
ちょっとしたことですが、身近ないろいろなところに科学が潜んでいますね。みなさんも水族館の大型水槽などを見たときには、ぜひこの「丸い窓」を探してみてください。きっと、新たな発見と感動が待っているはずです。
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