なぜ髪は風船にくっつく?プラスとマイナスが織りなす静電気の世界【簡単・理科実験】
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
冬、セーターを脱ぐときの「バチッ!」という痛み。あるいは、小学生の頃、下敷きで髪の毛をこすって「フワッ」と浮かせて遊んだ記憶。
誰もが一度は体験したことがある、あの不思議な現象、「静電気」。 今日は、その静電気のパワーを目に見える形で体験できる、とても簡単で面白い実験をご紹介します。準備するものは、あなたの髪の毛と、たった一つの風船だけです!
準備するもの(たったの2つ!)
風船(ふくらませたもの。100円ショップのものでOK!)
あなたの髪の毛(乾いている方がうまくいきます)
実験!髪の毛を逆立ててみよう
実験はとてもシンプルです。まず、風船を髪の毛に強めに、シャカシャカと擦り付けます。髪の表面全体をまんべんなく、10秒くらいこすってみましょう。そして、風船をゆっくりと髪の毛から離していきます。


さあ、どうなりましたか? 風船を追いかけるように、髪の毛がフワフワと逆立っていくはずです!まるで髪の毛が風船に恋をして、引き寄せられているみたいですよね。
なぜ?静電気の「引き合う力」と「反発する力」
この現象、もちろん魔法ではありません。すべて「静電気」の仕業です。私たちが風船を髪に擦り付けたとき、実は目に見えない小さな粒、「電子(でんし)」が移動しています。今回の実験では、髪の毛から風船へと電子が引っ越していきました。
電子を失った髪の毛は「プラス(+)」の電気を帯びます。
電子を受け取った風船は「マイナス(-)」の電気を帯びます。
理科の授業で習ったかもしれませんが、電気には「プラスとマイナスは引き合い、同じ種類(プラス同士、マイナス同士)は反発する」という大切なルールがあります。だから、マイナスの風船を近づけると、プラスの髪の毛は「会いたい!」とばかりに引き寄せられます。 それだけではありません。髪の毛一本一本がすべて「プラス」になっているので、髪の毛同士は「あっち行け!」と反発し合います。この「引き合う力」と「反発する力」の合わせ技で、髪の毛は見事に逆立つのです!
電気の語源は「琥珀(こはく)」
改めて見ると、触れてもいないのにモノが動くなんて、本当に面白い現象ですよね。昔の人々もこれに驚きました。古代ギリシャでは、「琥珀(こはく)」(木の樹脂が固まった宝石)を布でこすると、軽いゴミや羽毛を引き寄せることに気づいていました。
当時は電子のことも知らなかったので、人々はこれを「魔法の力だ」と思っていたそうです。なんだか納得ですよね。
そして、ここからが面白いのですが、英語で電気を意味する「Electricity(エレクトリシティ)」という言葉、実はギリシャ語で「琥珀」を意味する「ēlektron(エレクトロン)」が語源なんです。 そう、私たちが今学んでいる「電子(electron)」も同じ言葉から来ています。
大昔に「魔法の石」だと思われていた琥珀の力が、時を経て、私たちの生活を照らし、スマートフォンを動かす「電気」の正体だと分かったなんて、なんだか壮大なロマンを感じませんか?
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