リビングは未知の惑星?0歳児という名の探検家が教える「学び」の本質

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

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リビングの床を転がり、見慣れた景色を新鮮な驚きで塗り替えていく。大人の目には見慣れた光景でも、赤ちゃんにとってはすべての瞬間が「科学の実験」であり、壮大な冒険の連続なのです。かつての我が子も、家という名の未知の惑星を調査する若き探検家のようでした。

今回は、そんな日常の何気ない動きの中に隠された、深い学びの物語についてお話しします。

日常という名の冒険

昔のことになりますが、子供(0歳)の動きを見ていると、本当に飽きることがありません。毎日、家の中を元気にかけずりまわっています。親である私からすれば、家の中は隅々まで知り尽くした退屈な場所に思えますが、彼からすれば、そこは知らないことだらけの「フロンティア」なのでしょう。

ソファの下に潜り込んだり、絨毯をめくってみたり。成長が少しゆっくりだった彼は、当時、横にころころと転がりながら家の中を大移動していました。この「転がる」という動作一つをとっても、実はすごい物理学の塊です。「重力」をどう受け流し、床との「摩擦」をどう利用して推進力を得るか。彼は言葉ではなく、全身の筋肉と感覚を使って物理法則を学び取っていたのかもしれません。

原因と結果の発見:リトル・サイエンティスト

そんな彼が当時夢中になっていたのが、ゴミ箱のペダルでした。本来は足で踏んで蓋を開けるための部品を、一生懸命に手で何度も押しているのです。

彼からすると、「Aという行動(ペダルを押す)の結果、B(蓋が開く・音が鳴る)が起こる」という因果関係がたまらなく刺激的なのでしょう。自分のアクションに対して、物理的な世界が即座に反応を返す。これは科学の基本である「観察と実験」であり、論理的思考の芽生えと言えます。

まだ言葉を話さない時期でも、頭の中では「次はどうなるかな?」という仮説と検証が繰り返されています。新しいことが少しずつ目に見えてできるようになっていく姿は、見守る側にとっても科学の進歩を見ているような大きな喜びがあります。

マズローの欲求階層と自己実現の芽生え

心理学者のアブラハム・マズローは、人間の欲求には階層があるという理論を提唱しました。

それまでの心理学が「足りないものを埋めること」に注目していたのに対し、マズローは人間にはより高次な、自分らしくありたい、能力を発揮したいという「自己実現の欲求」があることを示しました。

0歳の子供にも、もしかしたらこのピラミッドの頂点にある「もっと知りたい」「自分で何かを成し遂げたい」という種が、すでに備わっているのかもしれません。もちろん、お腹が空いたときには生命を維持するための「生理的欲求」が最優先されるようですが、満たされた瞬間に彼らはまた次の探検へと向かいます。

大人の成長と学びの設計

私たち大人になると、自分が成長している実感を抱くことが難しくなりがちです。しかし、昨日できなかったことが今日できるようになる喜びは、本来いくつになっても嬉しいものです。

これは教育の現場でも全く同じことが言えます。生徒のやる気を引き出すとき、単に知識を詰め込んだり、他人に勝つための効率的な攻略法を教えたりするだけでは不十分です。大切なのは、生徒自身が「自分の成長を肌で感じられる」ように授業をプランニングすること。

「わかった!」「できた!」「面白い!」という手応えは、0歳の子供がゴミ箱のペダルを押すときに感じる興奮と同じ、人間が持つもっとも純粋で力強い学びのエネルギーなのです。

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