波のプロフィールを大公開!5つのキーワードと最強公式 v=fλ をマスターしよう【スマホで物理 #03-1】

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験!

音楽を聴くときの「音」、スマホで情報をやりとりする「電波」、電子レンジで食品を温める「マイクロ波」。私たちの生活は、目には見えないたくさんの「波」であふれています。これらの波は、一体何がどう違うのでしょうか?

その謎を解くカギは、波の性質を表すいくつかの「キーワード(物理量)」に隠されています。今回は、この波を解読するための特別なコトバと、それらが織りなす最も重要な「波の公式」について学んでいきましょう。この記事を読み終える頃には、波の世界がぐっと身近に感じられるはずです!

波の世界を旅する準備(前回の復習)

まずはおさらいです。波を理解するには、2種類のグラフが登場しましたね。

前回(#02)のまとめ

y-xグラフ:ある一瞬を切り取った波の「写真」。空間的な形がわかる。

y-tグラフ:ある一点の揺れを追いかけた「定点観測カメラの記録」。時間的な変化がわかる。

 

物理の世界では、距離を x や L [m]、時間を t [s] という文字で表すのがお約束です。これから、波のプロフィールを明らかにする5つの重要な物理量(キーワード)を、この2つのグラフから読み解いていきます。

波の「かたち」を捉える! y-xグラフからわかるキーワード

まずは波の「写真」であるy-xグラフから見ていきましょう。ここからは波の「姿かたち」に関する情報がわかります。

  • 波長(はちょう): λ (ラムダ) [m]波の山と谷のワンセット、つまり「一波ぶんの長さ」のことです。波の「歩幅」のようなものだとイメージしてください。記号の λ はギリシャ文字で「ラムダ」と読みます。なんだか強そうでカッコいいですよね!
  • 振幅(しんぷく): A (エー) [m]波の揺れの大きさ、つまり「中心からの最大の高さ」を表します。これは波が持つエネルギーの大きさと関係があり、例えば、音の波なら振幅が大きいほど「大きな音」に、光の波なら「明るい光」になります。山の頂上から谷底までの長さではないので、注意してくださいね。

そして、この波そのものが進んでいく速さを速度 v [m/s]で表します。これはy-xグラフ一枚の写真だけではわかりませんが、波の進行方向を示す矢印と一緒に書かれていることが多いです。

波の「リズム」を感じる! y-tグラフからわかるキーワード

次に、ある一点をじっと見つめた「定点観測」のy-tグラフです。ここからは波の「リズミカルな動き」に関する情報がわかります。

  • 周期(しゅうき): T (ティー) [s]観測している点(媒質)が、山→谷→山と「1回振動するのにかかる時間」のことです。これは、ちょうどその場所を1つの波が通過するのにかかる時間と同じです。波のゆったりとした「一回の呼吸」にかかる時間と考えると分かりやすいかもしれません。

この「ある媒質が1回振動する = 1つの波がそこを通り過ぎる」というイメージは非常に大切です。こちらの動画で確認してみてください。

y-xグラフの λ と、y-tグラフの T は、見た目が似ているので混同しがちです。横軸が距離[m]なのか、時間[s]なのかを必ず確認するクセをつけましょう!

  • 振動数(しんどうすう): f (エフ) [Hz]周期とは逆に、「1秒間に何回振動するか」という波のせっかちさを表す量です。単位はHz(ヘルツ)。ラジオの周波数などで聞いたことがありますね。例えば、1秒間に2回振動すれば、振動数は f=2 [Hz] です。音の波では、この振動数が「音の高さ」を決めます。振動数が大きい(ヘルツが高い)ほど、高い音になるんですよ。

リズムと時間は裏返し? 周期 T と振動数 f の秘密の関係

「1回振動するのにかかる時間(周期 T)」と「1秒間に振動する回数(振動数 f)」。この2つは、実は同じ現象を別の角度から見ているだけで、密接な関係があります。

考えてみてください。もし振動数が 2 Hzなら、1秒間に2回振動するわけですから、1回の振動にかかる時間は 1÷2=0.5 秒ですよね。つまり周期は 0.5 秒です。もし 3 Hzなら、周期は 1/3 秒、4 Hzなら 1/4 秒です。

表にまとめると、この通り。

振動数 f [Hz] 1 2 3 4
周期 T [秒] 1 1/2 1/3 1/4

そう、この2つは単純な逆数の関係になっているのです!

T=1/f

この関係式はとても重要なので、しっかり覚えておきましょう。

波の世界の最強方程式! v=fλ

さて、いよいよクライマックスです。これまで学んだキーワードたちをつなぐ、波動分野で最も大切で美しい公式を紹介します。

原点から振動数 2 Hzで波が発生している状況を想像してください。

振動数が 2 Hzということは、1秒間に2回の振動が起き、結果として2個の波が送り出されることを意味します。1つの波の長さは波長 λ [m] でしたから、波の先頭は1秒間で 2×λ [m] 進むことになります。

「1秒間に進む距離」…これは、まさに「速さ」そのものですね!

このときの「2」という数字は振動数 f のことですから、以下の式が成り立ちます。

v=fλ

(速さ = 振動数 × 波長)

波の「速さ」、波の「リズム(振動数)」、波の「かたち(波長)」という、波の重要な3つの要素が、この1つのシンプルな式で見事に結びついているのです。これが波の世界の最強方程式です!

以上が、波の世界を旅するための基本的なキーワードと公式です。最後に一覧で確認しておきましょう。

これらの言葉の意味をしっかり理解すれば、波の現象はもう怖くありません。次回は、これらの知識を使って、さらに波の奥深い世界を探検していきます。

続きます。

波のはじめの関所!波の見ため止まった問題【スマホで物理 #03-2】

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波については拙著も参考にしてみてください。

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