紙コップの中で磁石が踊り出す!手作り電線でスピーカーの原理を体験しよう
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「目に見えない磁界が、音を運んでくる」
そんな魔法のような体験をしたことはありますか?先日、科学館「つくばエキスポセンター」を訪れた際、思わず足が止まる展示に出会いました。それは、コイルを使った不思議なスピーカーです。台座から出ている目に見えない磁場のなかに、コイル付きのスピーカーをかざすだけで、電磁誘導によって音が聞こえてくるというものです。

遠ざけると微かな音になり、近づけるとグンと大きな音に変わります。磁場が空間を飛び越えて電流を生み出す様子は、理屈ではわかっていても、実際に体験すると「おおっ!」と声が出てしまうほど面白い現象です。
今回は、この「空間を跳ねる電気」を自宅で再現する方法をご紹介します。主役は、100円ショップの材料と少しの工夫で手作りできる魔法の導線、パスカル電線です。
これは、複数の導線が束になったコード(10芯コードなど)を活用したお手製の実験器具です。作るにはハンダ付けが必要ですが、一度作ってしまえば安価で抜群の効果を発揮します。
科学のレシピ
用意するもの:
パスカル電線(自作) 紙コップ ネオジム磁石(小さくても強力なもの)

手順:
1 パスカル電線を交流の電源装置につなぎます。
2 電線を紙コップの底と同じくらいの大きさにぐるぐる巻いて、コイル状にします。
3 紙コップの中に、ネオジム磁石を入れます。

準備ができたら、交流電流を流して、コップの中の様子をじっくり観察してみましょう。
実験結果:踊る磁石と聞こえる「音」
実際に実験した様子を動画に収めました。ぜひ、音量をあげて再生してみてください。
いかがでしたか? スイッチを入れた瞬間、まるで意志を持っているかのように、紙コップの中で磁石が踊り出すのがわかりますね。
なぜ?を解明:磁石が踊るワケ
静かだった磁石が、なぜ突然暴れ出したのでしょうか。その秘密は「交流」と「電磁石」のコンビネーションにあります。

電流が作った磁場によって、磁石はガタガタと振動します。
私たちが普段使っているコンセントの電気は「交流」です。乾電池のような「直流」とは違い、電流の向きが行ったり来たりをくり返しています。その回数は、1秒間に東日本で50回、西日本で60回。目にも止まらぬ猛スピードです。
パスカル電線を巻いたコイルに電流を流すと、そこは「電磁石」になります。では、交流を流すとどうなるでしょうか。そう、電磁石のN極とS極が、1秒間に何十回も激しく入れ替わるのです!
この超高速で極が入れ替わる電磁石の上にネオジム磁石を置くと、磁石は「引きつけられる」と「反発される」を猛烈な速さでくり返します。その結果、磁石はガタガタと激しく振動し、まるで踊っているように見えるわけです。
「交流の鼓動」とスピーカーの原理
この振動する磁石をビニールテープなどで紙コップの底にしっかり固定し、コップに耳を当ててみてください。

「ブーン」という低い音が聞こえてきませんか?
この音は、磁石の細かな振動が紙コップの底を震わせ、それが周りの空気を震わせて生まれたものです。まさに交流の鼓動そのものです。ちなみに、この音の高さは1秒間の振動回数で決まります。東日本の50回と西日本の60回では、音にするとドとミ♭くらいの差があり、西日本のほうが少し高く聞こえるはずです。もし両方の地域で実験できたら、聞き比べてみるのも面白いですね。
そして実は、この仕組みこそがスピーカーの原理なのです!
私たちが普段聴いている音楽も、もとは「複雑に変化する電気信号(交流)」です。その信号をスピーカーの中のコイルに流し、磁石との力で振動板を震わせることで、「音」として私たちの耳に届けています。冒頭のつくばエキスポセンターの展示は、この流れを逆向きにたどったもの、つまり磁場のなかでコイルが動くと電気が生まれるという電磁誘導を、音として体験できるようにした装置だったのですね。
紙コップと磁石、そして手作りの電線。こんなにシンプルな材料で、現代テクノロジーの象徴であるスピーカーの仕組みが手に取るようにわかります。これこそが科学の醍醐味ですね。少しの時間と好奇心があれば、誰でも電気の「声」を聴くことができます。ぜひ皆さんも、自宅でこの「交流の鼓動」を体験してみてください!
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