100均でOK!水に入れると消える「忍者ボール」の秘密 (光の屈折マジック)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
このガラス瓶、何が入っていると思いますか?

「え、何も入っていない空っぽの瓶…?」
いいえ、違うんです。実はこの中、プルプルのボールでパンパンに入っています! まるで忍者の「隠れ身の術」か、カメレオンの「カモフラージュ」のようですよね。今日の科学のレシピは、昨日やってみたいと書いた高吸水性樹脂(こうきゅうすいせいじゅし)を使った実験です。さっそく100円ショップで買ってきて、自宅でやってみました。
本当に忍者のように隠れてしまう面白い物質。なぜ水の中では見えなくなり、別の液体だと見えてしまうのか? その「光のマジック」の秘密もあわせて、実験方法と結果をまとめます!
科学のレシピ
用意するもの:
高吸水性樹脂(こうきゅうすいせいじゅし)
ガラス瓶(または透明なコップ)×2
水差し×2
水
砂糖水(水に砂糖を多めに溶かしたもの)
高吸水性樹脂は100円ショップでは「植物が育つ不思議なゼリー」という名前で売られています。

拡大すると、

プルプルしていて、子供が好きそうな素材です。この物質、実は「紙おむつ」の中で、水分をガッチリ吸収してゼリー状にしてくれるヒーローでもあります。今回は園芸用を使ってみましょう。
実験の手順
ガラス容器を2つ用意します。それぞれ同じ分量の高吸水性樹脂(水でふくらませた状態)を入れます。水差しに、水と、砂糖水をそれぞれ入れておきます。1つの容器に砂糖水を、もう一つの容器に水を、ボールが浸るまで注ぎます。それぞれの様子を確認します。
実験の結果:見えたり、見えなかったり?
動画にまとめました。御覧ください。
左が水で、右が砂糖水です。どうですか? 砂糖水のほうは、プルプルのボールが入っているのがハッキリと見えますよね。 一方、水のほうはほぼ見えません。

上から見ると、その差は一目瞭然です。

水に入れた方は、カメレオンか、はたまた忍者なのか、きれいに隠れています。
なぜ? 忍者の秘密は「光の屈折」
なぜ水の中では見えなくなり、砂糖水では見えるのでしょうか? このマジックのタネは、「光の屈折率(くっせつりつ)」という性質にあります。光は、空気中から水の中へ入るように、違う物質に進むときに進路が曲がります。コップの水に入れたストローが、水面で折れ曲がって見える、あの現象です。 あれが「屈折」です。私たちがモノの「形」を認識できるのは、そのモノの表面で光が反射したり、屈折したりして、目に入ってくるからです。
【水の場合:見えなくなる理由】
高吸水性樹脂は、水をたっぷり吸うと、ほぼ「水」そのものに近い「光の屈折率」を持ちます。 つまり、光から見れば「水」も「樹脂ボール」も、ほとんど同じ仲間。光はボールの表面でほとんど曲がったり(屈折)、跳ね返ったり(反射)せず、スーッと通り抜けてしまいます。
だから、私たちの目にはボールの輪郭(りんかく)が見えなくなり、まるで消えてしまったかのように見えるのです。完璧なカモフラージュですね!

【砂糖水の場合:見える理由】
一方、水に砂糖を溶かすと、その液体の屈折率が変わります(水よりも屈折率が大きくなります)。 すると、「樹脂ボール(水に近い)」と「周りの液体(砂糖水)」の屈折率に差(ズレ)が生まれます。光は、その「差」がある境界面でハッキリと屈折・反射します。だから、ボールの輪郭がくっきりと私たちの目に見えるようになるのです。

これは光の屈折の授業にぴったりです!
おうちで忍者マジック!
こちらの実験は、自宅で撮影しましたが、もちろんご自宅でもすぐにできます。100円ショップの材料でOKです。お子さんも大喜びする実験ですよ。「ほら、何も入っていないよ〜」とかいって、おもむろにコップの水をあけると、中からボロボロとたくさんのボールが出てくる…! きっと驚く顔が見られるはずです。ぜひお試しください。
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