割り箸一本で持ち上がる!?お米とペットボトルの科学マジック(摩擦力のパワー炸裂)
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
割り箸一本で、お米がぎっしり詰まった重いペットボトルを持ち上げられるとしたら、信じられますか?「そんなの無理だよ!」と思うかもしれませんね。でも、ある”ちょっとした工夫”をするだけで、まるで魔法のように持ち上がってしまうんです。今日は、そんな不思議で面白い科学実験をご紹介します。使うものは、どこのご家庭にもあるものばかり。さあ、一緒に科学の魔法の扉を開けてみましょう!
やってみよう!割り箸チャレンジ
まずは、この現象がどれだけ驚きに満ちているか、実際に体験してみましょう。
ステップ1:普通のやり方
ペットボトルにお米をサラサラと入れ、そこに割り箸をすっと差し込みます。
そして、割り箸を持ってそっと持ち上げてみてください。…どうですか?おそらく、割り箸だけがスッと抜けてしまったはずです。まあ、当然そうなりますよね。
ステップ2:魔法のひと手間
ここからが本番です!お米が詰まったペットボトルを、机などでトントンと軽く叩いてみてください。すると、お米の間の隙間が詰まっていき、全体の量が少し沈むのがわかります。隙間がなくなるように、さらにお米を足して、またトントン。これを繰り返して、ペットボトルの中をお米でぎゅうぎゅう詰めの状態にします。
さあ、準備はできました。そのぎゅうぎゅうのお米の中心に、今度はぐっと力を込めながら割り箸を突き刺してください!そして、先ほどと同じように割り箸を持って持ち上げてみると…
なんと、お米がぎっしり詰まったペットボトル全体が、割り箸と一緒に持ち上がったではありませんか!まるで、お米と割り箸が強力な接着剤でくっついたかのようです。不思議ですよね。
魔法の正体は、小さな力のオーケストラ!
この現象、実は魔法ではなく、私たちのとても身近にある「摩擦力(まさつりょく)」という力が主役です。
手をこすり合わせると温かくなりますよね。これも摩擦力のおかげです。摩擦力とは、物体と物体が触れ合う面で、動きを妨げようとする力のことです。
ではなぜ、お米をぎゅうぎゅうに詰めると摩擦力が強くなったのでしょうか?ポイントは「垂直抗力(すいちょくこうりょく)」という、もう一つの力にあります。難しく聞こえるかもしれませんが、「物体を押し付ける力」だと思ってください。
お米をトントンと詰めることで、一粒一粒のお米が、隣り合うお米や割り箸、そしてペットボトルの壁を、あらゆる方向から強く押し付け合う状態になります。この「押し付ける力(垂直抗力)」が強くなればなるほど、それに比例して「動きを妨げる力(摩擦力)」もぐんと強くなる性質があるのです。数式で表すと、摩擦力(f)は以下のようになります。
f=μN
μ(ミュー)は滑りにくさを表す係数、そして今回の最大のポイントがN、つまり垂直抗力です。ぎゅうぎゅうに詰めることで、このNが非常に大きくなったのです。
一粒のお米が生み出す摩擦力はとても小さいですが、ペットボトルの中には何千、何万というお米の粒があります。その無数の米粒たちが生み出す小さな摩擦力が合わさることで、まるでオーケストラのように一つの大きな力となり、割り箸をがっちりと掴んで離さなかったのです。その力の合計が、お米とペットボトルの総重量を上回った瞬間、この不思議な現象が起こるというわけです。
この原理は、粉(こな)や粒(つぶ)がたくさん集まった「粉体(ふんたい)」と呼ばれるものの面白い性質の一つで、科学の世界でも活発に研究されているんですよ。ぜひ、お友達や家族の前でこの科学マジックを披露してみてください。きっと驚かれるはずです!
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