キッチンで火山大噴火!ホットケーキミックスが解き明かす、山の形のふしぎ
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
キッチンに立つあなたも、今日から火山学者! お菓子作りに使う、あの甘い香りの「ホットケーキミックス」。実はこれさえあれば、地球の奥深くで起こっているダイナミックな火山の噴火を、食卓の上で安全に再現できてしまうんです。なぜ富士山はあんなに美しい円錐形で、ハワイの火山はなだらかな丘のような形をしているのでしょう? その秘密は、ドロドロと流れる「マグマの粘り気」に隠されています。
さあ、ホットケーキミックスを使って、あなただけの火山を作り、地球の神秘に迫る甘くておいしい実験を始めましょう!
キッチン火山学者のための準備リスト
今回の実験で地球の内部を再現するために用意するのは、意外にもお菓子作りの材料と身近な道具だけです。
主役(マグマの素):ホットケーキミックス
マグマを混ぜる道具:紙コップ(2個)、水、やくさじ
噴火口を作る道具:ビニール袋、ハサミ
火山の大地:黒いボール紙
その他:ビーカー、電子天秤(量を正確に測りたい場合)
実験開始!2種類の火山を噴火させよう
準備はできましたか? それでは早速、性質の違う2つのマグマを作り、火山の形がどう変わるか観察してみましょう。
ステップ1:マグマ作り
まず、1つ目のマグマを作ります。紙コップの中に、ホットケーキミックスを15gほど入れ、水20mLを加えてよく混ぜ合わせましょう。少しサラサラした、流れやすそうなマグマができましたか?
ステップ2:噴火準備
作ったマグマをビニール袋に入れ、できるだけ空気を抜いて口を縛ります。これがマグマだまりです。次に、黒いボール紙の真ん中に小さな穴を開け、その下にビニール袋の先端が少しだけ出るようにセットします。
ステップ3:噴火!
いよいよ噴火です! ビニール袋の先端をハサミで少しだけ切り、袋をゆっくりと押し出してください。流れ出たマグマは、どんな形の山を作りましたか? おそらく、なだらかで、横に広がった形の火山ができたはずです。
ステップ4:ねばり気の強いマグマで、もう一度!
一度実験が終わったら、今度はマグマの性質を変えてみましょう。新しい紙コップに、今度はホットケーキミックスを30gと、多めに入れて同じ量の水(20mL)で混ぜます。さっきよりもドロドロとした、ねばり気の強いマグマができましたね。
同じように噴火させてみると…どうでしょう? 今度のマグマはあまり遠くまで流れず、噴火口の周りにもっこりと盛り上がった、背の高い火山ができたのではないでしょうか?
この違いが、本物の火山の形を決める!
この甘い実験の結果は、そのまま地球上で見られる火山の違いにつながっています。実は、本物のマグマにも、実験で作った2種類のように「サラサラなマグマ」と「ドロドロ(ネバネバ)なマグマ」があります。この違いは主に、マグマに含まれる二酸化ケイ素(SiO₂)(ガラスの成分)という成分の量で決まります。
サラサラなマグマ(実験の粉が少ない方)
二酸化ケイ素が少なく、流れやすい性質です。ガスが抜けやすいため、爆発的な噴火は起こしにくく、溶岩が静かに広範囲に流れ出します。その結果、ハワイのキラウエア火山のように、傾斜がゆるやかで、盾を伏せたような形の「盾状火山(たてじょうかざん)」ができます。
ドロドロなマグマ(実験の粉が多い方)
二酸化ケイ素が多く、非常にねばり気が強い性質です。内部のガスがなかなか抜けず、圧力が限界まで高まると、大爆発を起こすことがあります。粘り気が強いため溶岩は遠くまで流れず、火口の近くに積み重なって、富士山や雲仙普賢岳のような、急な傾斜を持つ「成層火山(せいそうかざん)」や「溶岩ドーム」を作るのです。
たった少しホットケーキミックスの量を変えただけで、火山の形が劇的に変わりました。この簡単な実験が、地球の雄大な景色を作り出す、ダイナミックなメカニズムを教えてくれるのです。今度、ニュースや図鑑で火山を見かけたら、その形から「きっと、ドロドロのマグマだったんだな」なんて、想像してみてくださいね。
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