ピッチャーマウンドはなぜ25cmも高くなっているの?マウンドの高さに隠された科学的な理由
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
白熱する甲子園やプロ野球の中継を観ていて、ふと「なぜピッチャーはあんな高い場所に立っているんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?実は、ピッチャーが立つマウンドは、バッターが立つホームベースよりもおよそ25cmも高く作られています。たかが25cm、されど25cm。このわずかな段差がゲームを面白くする秘訣なんですね。今回は、ピッチャーマウンドに隠された「ボールの軌道」と「物理の法則」のミステリーを解き明かしていきましょう!
わずか0.5秒の間に起きる「自由落下」のドラマ
ピッチャーからキャッチャーまでの距離は、ルールで18.44メートルと決まっています。
参考:スポジョバ https://spojoba.com/articles/182
プロ野球選手の速球が時速140km前後だとすると、ボールがピッチャーの手を離れてからキャッチャーのミットに収まるまでの時間は、わずか約0.5秒です。


瞬きをするほどの短い時間ですが、この「0.5秒」の間にも、地球の重力は容赦なくボールを地面へと引き寄せ続けています。もし、ピッチャーが地面と完全に水平にボールを投げ出したとしたら、ボールはキャッチャーに届くまでにどれくらい下に落ちると思いますか?
物理で考える!「水平投射」の計算式
ここで登場するのが、物理の授業で習う「水平投射」という考え方です。横方向に飛び出した物体が、重力によって垂直方向にどれだけ落下するかを計算してみましょう。空気抵抗を無視して計算すると、自由落下の距離 y は次の公式で求められます。

ここで、g は重力加速度(約9.8m/s^2)、t は時間(0.5s)です。実際に数値を当てはめてみると……。

マウンドの高さ「25cm」がストライクを作る
ここで、ピッチャーマウンドの約25cm(0.25メートル)という高さが効いてきます。ピッチャーがこの高いマウンドから水平に投げたとき、キャッチャーの位置での「地面からの高さ」を計算してみましょう。
一般的な上手投げの場合、地面からおよそ 1.8m〜2.0m くらいの高さからリリースされます。今回は高さを1.8mとします。
またストライクゾーンは、下(地面から約45cm 〜 50cm)、上(地面から約110cm 〜 120cm)の幅となります。今回は下を50cm、上を120cmとして計算しました。高さ約70cmほどの幅がある「透明な窓」が、ホームベースの上に浮かんでいるイメージですね。

<出展> 野球用語辞典 https://www.homemate-research-baseball.com/useful/10151_baseball_dic/index10.php
マウンドがない場合について、図示しました。

1.8mの場所からリリースされると、1.2mほど落ちて、結果として、バッターの場所に届くときの高さは0.6m(60cm)となります。ストライクゾーンには入りますが、やや下になってしまいますね。
今度はマウンドがある場合です。

全体として0.25m上に上がるので、高さとしては0.85m(85cm)となります。ちょうどストライクゾーンの真ん中になりました!
なぜ「水平」に投げることが大切なのか?
ピッチャーが最高のパフォーマンスを発揮するには、体の回転や腕の振りのエネルギーを、100%ボールの勢いに変える必要があります。もしマウンドが平らだったら、低いストライクゾーンの中心に入れるためには、少し「斜め上」に向かって投げ上げなければならず、腕を水平方向に振り抜くことができません。この高さ25cmの高さがあるからこそ、ピッチャーは思い切り水平に腕を振り抜き、力強い剛速球をストライクゾーンに投げ込むことができるのです。
身近なスポーツは物理学の実験場
ピッチャーマウンドの高さは、単なる野球のルールではなく、物理の法則に基づいた緻密な設計であることがわかりますね。野球には、今回の「放物運動」以外にも、空気抵抗や変化球に関わる「マグヌス効果」など、面白い科学がたくさん詰まっています。「なぜ?」という疑問を持ってスポーツを見てみると、教科書の中にある物理の公式が、生きた知識として輝き始めます。次に野球を観戦するときは、ぜひ「25cmの物理学」を思い出してみてくださいね!
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