【静電気力の公式】「バチッ!」の正体は? 目に見えない静電気の力の公式を徹底解剖!

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「先生、下敷きで髪の毛が逆立つのはどうしてですか?」

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静電気力の公式 目には見えない静電気の力

まずは、この不思議な力の大きさを表す「静電気力」の公式から見ていきましょう。

この公式は、静電気の力がどのような要素と関係するのかを示しています。一見難しそうに見えますが、大丈夫。一緒に紐解いていきましょう!

そもそも「静電気」はいったいどこからやってくるのでしょうか? 電気にはプラス(+)とマイナス(-)の2種類があります。想像してみてください。プラスとプラス、マイナスとマイナスといった同符号の電気はお互いに反発し合い、プラスとマイナスのように異符号の電気は引き合う性質があります。この力が「静電気力(またはクーロン力)」と呼ばれているものです。

少しミクロな世界に目を向けてみましょう。電気の正体を知るためには、物質を構成する最小単位である「原子」の仕組みを理解する必要があります。原子は、その中心にプラスの電気を持つ「陽子」という粒子の塊(原子核)があり、その周りをマイナスの電気を持つ「電子」がぐるぐると回っています。

通常の原子は、陽子の数と電子の数が同じで、陽子1個と電子1個が持つ電気の量も等しいため、プラスとマイナスが打ち消し合い、電気的な偏りはありません。しかし、摩擦などの外部からの刺激を受けると、電子が原子から離れて他の物質へと移動してしまうことがあります。これが静電気が発生するメカニズムなのです。

先ほどの「下敷き遊び」の例で考えてみましょう。下敷きを髪の毛にこすりつけると、髪の毛の原子からいくつかの電子がはがれて、下敷きに移動します。

電子をもらった下敷きは、通常よりもマイナスの電気を多く持つことになります。この状態を「マイナスの電気を帯びた」または「マイナスに帯電した」といいます。一方、電子を失ってしまった髪の毛は、マイナスの電気が出て行ってしまった分、プラスに帯電します。

こうして、マイナスに帯電した下敷きとプラスに帯電した髪の毛は、互いに静電気力によって引き合うのです。

静電気力の大きさを調べたのは、フランスの物理学者クーロンです。彼は、静電気力は2つの物体の距離の二乗に反比例し、お互いが持つ電気の量(電気量)の積に比例することを発見しました。これを数式にまとめると、最初に見た静電気力の公式になるわけです。

ここで、公式に出てくる記号の意味を確認しておきましょう。 電気量を示し、その単位には (クーロン)を用います。「物体の持つ電気の量」を電荷といいます。 は、お互いの電荷の間の距離を指します。 クーロン定数という比例定数です。空気中での の値は、およそ という非常に大きな数字です。

万有引力との比較で静電気力のスケールを体感!

さて、この公式、じーっと見つめると何かに似ていませんか? そう、力学分野に登場した「万有引力の公式」です!

万有引力の公式との最大の違いは、その比例定数にあります。静電気力の比例定数 は「」という途方もなく大きな数字であるのに対し、万有引力の比例定数 は「」という、とても小さな値です。

この数字の違いが、それぞれの力のスケールを物語っています。例えば、 の2つの物体を 離しておいたときの万有引力を計算してみると、その力はわずか です。ところが、「」と「」の電荷を 離しておいたときに働く引力は、なんと にもなります! 万有引力に比べて、静電気がいかに桁違いに大きな力であるかがよくわかりますね。

私たち人間も物体ですから、2人いれば互いに万有引力が働いています。しかし、その力は小さすぎて日常生活では全く感じることができません。惑星規模になって初めて感じることのできる力なのです。しかし、電気は少しでも偏ると、私たちの世界に大きな影響を及ぼします。下敷きをちょっと髪の毛にこすりつけただけで電気の偏りが生じ、目に見えない力が働いて髪の毛を持ち上げます。冬には「バチッ!」とドアノブと人間の手の間に火花が発生したり、夏には雷などの巨大な自然現象も引き起こします。

静電気は、私たちの生活のあちこちに潜む、パワフルで身近な自然現象なのです。

【公式の利用】静電気で「空飛ぶチョウチョ」を飛ばそう!

静電気の基本を理解したところで、さっそく面白い実験に挑戦してみましょう。この実験は、準備も簡単で、生徒たちの興味をぐっと引きつけられますよ!

下敷きと髪の毛に限らず、物体をこすり合わせると、どんな物質でも電子の移動が起こり、大なり小なり帯電します。ただし、物体によって電子を手放しやすいもの(プラスに帯電しやすいもの)と、電子を受け取りやすいもの(マイナスに帯電しやすいもの)があります。

静電気でチョウチョが飛ぶ!? ビニール袋でできる不思議実験(電気クラゲ)

注意点! この実験は、夏など湿度の高い日にはうまくいきません。目には見えなくても物体の表面が湿っていて、静電気が発生しても湿った部分を伝わってすぐに逃げてしまうためです。乾燥した日や、エアコンで湿度を下げた理科室で行うのがおすすめです。

アースって何をしているの?

静電気の力は時に大きく、私たちの生活に影響を与えます。身近な例として、大型家電製品の「アース」について考えてみましょう。

冷蔵庫や洗濯機、デスクトップパソコンなど、大型家電のコンセントを見ると、脇から奇妙なコードが出ていることに気がつきませんか? これが「アース」です。

また、台所のコンセントの差し込み口には、このアースを接続する場所があります。このアースの行き先は、コンセントを通ってどこに行くかというと、なんと地面と繋がっているんです!

では、このコードは何のために付いているのでしょうか?

通常、家電に流れている電流は外部に漏れることはありません。しかし、故障など何かのきっかけで、電気が外部に漏れてしまう場合があります。特に大型家電は大きな電流を扱うため、もし故障した家電に触れると、電気が体に流れて感電してしまうかもしれません。

そこで、アースをコンセントにつなげ、その先を地面につけておけば、万が一家電から電流が漏れたとしても、アースを通して安全に地面へと流れていくため、感電を防ぐことができるというわけです。アースは、私たちの安全を守る、縁の下の力持ちなんですね。

静電気は、目には見えないけれど、私たちの身近な現象と深く関わっています。

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