タコが枕にするウニ?「タコノマクラ」「ハスノハカシパン」に隠された科学のロマン
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
「この夏休み、海に行ったときに何を見つけましたか?」
そう生徒に問いかけて、授業の導入に使える面白い題材を今回はご紹介したいと思います。
先日、筆者が海辺を歩いていると、砂浜に落ちている不思議な物体を見つけました。なんだろうと手に取ってみると、硬くて石のようです。表面には繊細な模様が描かれていて、裏側には穴が空いています。
※追記 この写真の生き物のですが、タコノマクラではなく、ハスノハカシパンであると教えていただきました。このような記事も見つけましたので、併せて紹介します。ご指摘ありがとうございました。
この不思議な物体の正体はハスノハカシパンというウニの仲間であることがわかりました。タコノマクラ目ヨウミャクカシパン科に属するそうです(wikipedia)。
ウニと聞くとトゲトゲした生き物を想像しますが、ハスノカシパンやタコノマクラは平たい形をしています。食用には向かないため、スーパーなどでは見かけません。
「タコノマクラ」という面白い名前は、その名の通り、タコが枕にしそうな形をしていることから名付けられたという説があります。しかし、実際のところは定かではありません。タコノマクラは英語で「sand dollar」と言います。これは「砂の上の1ドル銀貨」という意味で、平らで丸い形を銀貨に見立ててつけられたようです。どちらの名前もロマンがあって想像力をかき立てられますね。
ハスノカシパンは「ウニ」なのか?
ところで、ハスノカシパンやタコノマクラは本当にウニの仲間なのでしょうか。
ウニ綱に分類されるタコノマクラは、ウニと同じ棘皮動物です。ヒトデ、ナマコなどもこのグループに含まれます。タコノマクラはウニのような硬い殻を持っていますが、これは棘皮動物に共通する炭酸カルシウムの骨片でできています。この骨片が繋がって殻を形成しているのです。
この穴の空いた平たい殻は、ハスノカシパンが死んで中身がなくなった状態です。ハスノカシパンの生体は、この殻の表面に短いトゲがたくさん生えています。そして、このトゲを使って砂の中を移動したり、餌を食べたりします。
生徒にハスノカシパンやタコノマクラを見せて、これがウニの仲間だと伝えると、きっと驚きや疑問が生まれるはずです。
「なぜウニなのにトゲがないの?」「そもそもウニって何?」といった問いから、生物の分類や進化について考えるきっかけを与えることができます。
体のつくりと機能: 殻の裏側にある穴は「口」です。そこから砂の中の有機物を食べています。この構造から、生物の体のつくりが、その生活環境や食べ物に合わせてどのように適応しているのかを教えることができます。
身近な自然の不思議: 海岸で拾ったものが、実は奥深い科学の題材になることを知る良い機会です。「砂浜には、どんな不思議なものが落ちているかな?」と生徒に尋ねて、身近な自然への興味を引き出すことができます。
この夏休み、生徒たちが持ち帰った砂浜の「お土産」が、もしかしたら素晴らしい科学の教材になるかもしれません。
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