光の二人三脚と大合唱!キラキラ鉱物「雲母」の色の秘密を解き明かす
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
石ころをくるくる回すだけで、まるで万華鏡のようにキラキラと虹色に変化したら、素敵だと思いませんか? 先日、実習生のF先生と行った実験で、まさにそんな魔法のような光景に出会いました。主役は「白雲母(しろうんも)」という、どこにでもある身近な鉱物です。

顕微鏡を覗き込み、2枚の板(偏光板)の間で白雲母をそっと回すと…息をのむような美しい色の変化が目の前に現れたのです。今回は、この小さな鉱物がなぜこれほど美しい光のショーを見せてくれるのか、その秘密を一緒に探っていきましょう!
実験室で見つけた、小さな魔法
今回の実験で使ったのは、白雲母と「偏光板(へんこうばん)」という特別なフィルターが2枚だけです。偏光板は、たくさんのブラインドのように、特定の方向に振動する光だけを通す性質を持っています。
まず、顕微鏡の光源の近くに1枚目の偏光板を置きます。そして、観察する白雲母の上(対物レンズの近く)にもう1枚の偏光板をセットします。準備はこれだけ。

そして、上の偏光板をゆっくりと回転させると、透明だったはずの白雲母が、青、黄色、ピンク、緑…と、次々に鮮やかな色に変化していくのです。まるで、石自身が光の魔法を操っているかのようでした。




なぜ色が変わるの?光が織りなす魔法の仕組み
この美しい現象は、決して魔法ではありません。「複屈折(ふくくっせつ)」と「干渉(かんしょう)」という、2つの光の性質が組み合わさって起こる、立派な科学現象です。少し難しく聞こえるかもしれませんが、一つずつ見ていきましょう。
光の分身の術?「複屈折」
まず、1枚目の偏光板を通って一方向に整えられた光が白雲母に入ると、中でなんと2つの光に分かれます。しかも、その2つの光は進むスピードが微妙に違うのです。これを複屈折と呼びます。まるで、二人三脚で走るときに、二人の歩幅が少し違うような状態をイメージしてみてください。スタートは同じでも、ゴールするタイミングがずれてしまいますよね。白雲母の中では、光がまさにこの「二人三脚」をしているのです。
光の波のズレ「位相差」
白雲母の中でスピードが違った2つの光は、外に出るときにはタイミングがずれた状態になります。光は波の性質を持っているので、波の山と谷の位置がずれることになります。このズレのことを「位相差(いそうさ)」と呼びます。この「ズレ」こそが、色を生み出す重要なカギとなります。
波の合唱と打ち消し合い「干渉」
白雲母を通り抜けてズレが生じた2つの光は、最後にもう1枚の偏光板(検光子)を通過します。ここで、再び一つの光にまとめられるのですが、その際に「干渉」という現象が起こります。ズレた波が合わさるとき、山と山が重なれば、より大きな山となり光は強められます(オーケストラで同じ音を重ねて力強くするイメージ)。逆に、山と谷が重なると、お互いを打ち消し合って光は弱くなってしまいます(騒音を別の音で消すノイズキャンセリングのイメージ)。太陽の光には虹の七色(様々な波長)が含まれていますが、白雲母が生み出す「位相差」によって、ある色は強められ、別の色は弱められます。その結果、私たちの目には、強められた特定の色だけが見えるのです。これが、白雲母が色づいて見える理由です。
くるくる回すと色が変わる秘密
では、なぜ偏光板を回すと色が次々に変わるのでしょうか?それは、2枚目の偏光板を回すことで、2つの光をどの角度でまとめるかが変わるからです。角度が変わると、どの色(波長)の光が強められ、どの色が弱められるかの条件も連続的に変化します。そのため、まるで光のパレードのように、私たちの目に届く色が次々と変わっていくのです。この現象は、ただ美しいだけではありません。地質学の世界では、鉱物の種類を見分けたり、その結晶がどのような歴史を経てきたのかを調べたりするための、非常に重要な手がかりとして活用されているんですよ。
実は身近にあふれている「偏光」の世界
今回使った「偏光」の技術は、私たちの生活のいたるところで活躍しています。例えば、スマートフォンの液晶ディスプレイや、運転中の光の反射を抑えるサングラス、映画館の3Dメガネにも、この偏光の仕組みが使われています。また、白雲母自身も、古くから「きらら」や「きら」と呼ばれ、そのキラキラした輝きから、ファンデーションやアイシャドウといった化粧品に加えられたり、日本画の絵の具として使われたりしてきました。何気なく見ていたキラキラの正体が、こんなに面白い科学現象を隠し持っていたなんて、なんだかワクワクしますね!身の回りのものを少し違った視点で見てみると、そこには壮大な科学の物語が隠されているかもしれません。
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