「ミラバケッソ」に会いに行ったら、壊れたダチョウに遭遇!不思議な行動から考える動物の心理

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

動物園や牧場で、思わず「なんでそんなことしてるの?」と首をかしげてしまうような、動物たちの不思議な行動に出会ったことはありませんか? 今回は、そんな「ナゾ行動」の一つから、科学の面白い考え方を一緒に探求してみたいと思います。

アルパカに会いにいったら、謎のダチョウに遭遇!

数年前、私はある目的で「那須アルパカ牧場」を訪れました。その目的とは、株式会社クラレのCMで「ミラバケッソ」と鳴く(?)ことで一躍有名になった、あの愛らしいアルパカに会うことでした。のほほんとした姿を想像しながら歩いていると、私は思わぬ光景に足を止めました。

一羽のダチョウが、柵の中にある水道管を、何度も何度も、それはもう熱心にクチバシで叩き続けているのです。

一体何をしているのでしょうか? 水が出てくることを期待しているのか、ただ遊んでいるだけなのか、それともダチョウの習性に何か秘密があるのか…? この「なぜ?」を、科学の視点で少し深掘りしてみましょう。

スクリーンショット 2014-05-19 17.01.38

水道管を叩き続けるダチョウ…その理由を科学的に考えてみよう!

動物の不思議な行動を解明しようとするとき、科学ではいくつかの「仮説」を立てて考えます。今回のダチョウの行動についても、いくつかの可能性が考えられます。

仮説1:ストレスサイン?「常同行動」という可能性

一つ目は、「常同行動(じょうどうこうどう)」という可能性です。これは、動物が退屈だったり、ストレスを感じたりしたときに、同じ行動を意味なく繰り返してしまうことを指します。例えば、動物園のクマが同じ場所を行ったり来たりする行動などがこれにあたります。

人間も、緊張すると貧乏ゆすりをしたり、指で机をトントンと叩いたりすることがありますよね。それと少し似ているかもしれません。このダチョウも、もしかしたら何か満たされない気持ちを、水道管を叩くことで紛らわしていたのでしょうか。

仮説2:賢い証拠?「学習」して水を求めている可能性

二つ目は、このダチョウがとても賢いという可能性です。以前、偶然クチバシが当たったときに蛇口から水が少し出てきた、という経験をしたのかもしれません。その成功体験を**「学習」**し、「ここを叩けば水が飲める!」と考えて行動を繰り返している、という説です。

カラスがクルミを道路に置いて車に割らせるように、動物たちは私たちが思う以上に賢く、経験から学ぶ能力を持っています。もしこの説が本当なら、このダチョウはなかなかの策士ですね。

仮説3:ただ楽しいだけ?「遊び」という可能性

三つ目は、もっともシンプルな理由、「遊び」です。金属製の水道管を叩いたときの「コンコン!」という音や、クチバシに伝わる振動が面白いのかもしれません。人間の子どもが、いろいろな物を叩いて音の違いを楽しむように、ダチョウも純粋な好奇心からこの行動を楽しんでいた可能性も十分に考えられます。

動物にとって「遊び」は、狩りの練習をしたり、体の使い方を学んだりするための大切な行動でもあるのです。

本当の理由は、このダチョウに聞いてみないと分かりません。でも、こうして「なぜだろう?」と考えて仮説を立てていくことこそが、科学の面白さの第一歩です。皆さんも動物園や牧場に行ったら、ぜひ動物たちの「ナゾ行動」を探してみてください。きっと、教科書には載っていない面白い発見が待っていますよ。

お問い合わせ・ご依頼について

科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・運営者・桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中

科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!