1年で数ミリ!?鍾乳洞の神秘に迫る、悠久の時を刻む大地の彫刻!(大滝鍾乳洞)

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

岐阜県にある大滝鍾乳洞を訪れました。

https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_1161.html

入口には、この場所がかつて海の底だったことを示す、フズリナの化石が展示されていました。フズリナは、古生代に生きていた小さな生物の化石で、これがあるということは、まさにこの鍾乳洞がある山が、昔は海の底だった証拠なんです。

ケーブルカーに乗って鍾乳洞の入り口までたどり着き、一歩足を踏み入れた瞬間、驚きの体験が待っていました。外の気温はうだるような35度だったのに、鍾乳洞の中はなんと20度くらい! ひんやりとした空気に包まれ、まるで別世界に迷い込んだような感覚でした。

そして、鍾乳洞の奥へと進むと、自然が作り出した、まるで氷柱のような美しい天井や壁が目の前に広がります。しかし、この壮大な造形が、実は1年間でたった0.1mm程度しか伸びないと知ったら、さらに驚くことでしょう。一体、これほどの巨大な鍾乳洞ができるまでに、どれほどの悠久の時間がかかったのでしょうか?

今回は、この大滝鍾乳洞の壮大な景色を楽しみながら、鍾乳洞がどのようにしてできるのか、その神秘的な仕組みを紐解いていきましょう。

■1 大滝鍾乳洞の神秘:石灰岩と水の織りなす大地の彫刻

鍾乳洞の形成には、いくつかの重要な要素が関わっています。その主役となるのが「石灰岩」と「」です。

石灰岩の秘密

まず、鍾乳洞ができる場所は、ほとんどが石灰岩でできた地層です。石灰岩は、サンゴやフズリナのような、昔の海の生き物の殻や骨が堆積してできた岩石で、主成分は「炭酸カルシウム」という物質です。

鍾乳洞ができる仕組み

  1. 二酸化炭素を溶かした雨水が石灰岩に浸み込む: 地上に降った雨水は、空気中の二酸化炭素(CO2)を少しだけ溶かし込みます。二酸化炭素を溶かした水は、わずかに酸性になります。
  2. 石灰岩が溶かされる: この酸性の雨水が、地中の石灰岩の隙間や割れ目にゆっくりと浸み込んでいきます。炭酸カルシウムである石灰岩は、この酸性の水に少しずつ溶かされる性質があるのです。

    このようにして、石灰岩が溶けてできた炭酸水素カルシウムを含んだ水が、地下水として流れていきます。

  3. 鍾乳石や石筍(せきじゅん)の成長: 石灰岩が溶けてできた水が、地中の空洞(これが鍾乳洞の元になります)の天井からポタポタと落ちてくるとき、水の中に溶けていた二酸化炭素が空気中に放出されます。すると、水に溶けきれなくなった炭酸カルシウムが、再び固まって結晶になり始めるのです。
    • 天井から垂れ下がって成長する氷柱のような形を「鍾乳石(しょうにゅうせき)」と呼びます。
    • 天井から落ちた水滴が床に落ち、そこで同じように炭酸カルシウムが固まって上に向かって成長するものを「石筍(せきじゅん)」と呼びます。
    • 鍾乳石と石筍が結合して柱のようになったものを「石柱(せきちゅう)」と呼びます。

鍾乳洞が1年間で数ミリメートルしか伸びないというのは、この炭酸カルシウムが再び固まるプロセスが、非常にゆっくりと進むからです。大滝鍾乳洞のような巨大な空間と美しい造形は、気の遠くなるような長い時間をかけて、地球と水が織りなした壮大な芸術作品なのですね。

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