道端の石は地球からの手紙だった!?色と粒の大きさで解き明かす「火成岩」のミステリー
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
道端に転がっている、ありふれた石ころ。もし、その一つひとつが、はるか昔の地球の内部から届いた「タイムカプセル」だとしたら、ワクワクしませんか?「この石、何に見える?」そう問いかけると、子どもたちは「ただの石」と答えるかもしれません。しかし、その色、模様、手触りには、地球の奥深くで繰り広げられた、マグマの壮大な物語が刻まれているのです。
今回は、中学校の地学で学ぶ「火成岩」をテーマに、単なる暗記で終わらせないためのヒントをお届けします。「色」と「結晶の大きさ」という2つの手がかりを頼りに、石に秘められた物語を読み解く探偵になってみましょう!
手がかり①「色」でわかるマグか?
まず最初のヒントは「色」です。火成岩の色は、もとになったマグマの性質、いわば「性格」を教えてくれます。
白色系(ドロドロな性格のマグマ)
白っぽい石は、「ケイ酸塩鉱物」を多く含み、粘り気が強いドロドロのマグマから生まれます。このタイプの代表選手がこちら。
- 流紋岩(火山岩)
- 花崗岩(花コウ岩)(深成岩)
この二つ、実は成分がほぼ同じ兄弟のような石。それなのに、見た目が全く違うのはなぜでしょう?その謎は、次の手がかりで明らかになります。
国立科学博物館の展示より。生まれた場所が違うと、見た目もこんなに変わります。
そう、流紋岩は地上付近、花崗岩は深い場所でできた空なんですね。
黒色系(サラサラな性格のマグマ)
黒っぽい石は、「鉄」や「マグネシウム」を多く含み、粘り気が弱いサラサラのマグマから生まれます。ハワイの火山から流れ出る溶岩をイメージすると分かりやすいですね。
- 玄武岩(火山岩)
- 斑れい岩(斑糲岩)(深成岩)
グレー系(中間的な性格のマグマ)
白と黒の中間、グレー系の石もあります。日本の火山に多いのがこのタイプです。
- 安山岩(火山岩)
- 閃緑岩(深成岩)
手がかり②「結晶の大きさ」が語るマグマの“育ち方”
同じ色のグループでも、石をよーく観察すると、キラキラした粒(結晶)の大きさが全く違います。この違いこそ、マグマがどこで、どのように冷やされたか、つまり「石の育ち方」を教えてくれる最大のヒントなのです。
結晶が大きい【深成岩】― 地下でのんびり育った石の物語
花崗岩や閃緑岩、斑れい岩のように結晶がはっきりと見える石を「深成岩」と呼びます。
彼らは、地下深くのあたたかい場所で、何万年、何十万年という長い時間をかけてゆっくりと冷え固まりました。まるで、あたたかいお布団の中でぬくぬくと育つように、結晶が大きく成長する時間がたっぷりあったのです。その堂々とした姿は、まさに「地下で長い眠りから目覚めた」王者の風格ですね。
結晶が小さい【火山岩】― 地表で急に冷やされた石の物語
一方、流紋岩や安山岩、玄武岩のように、粒がほとんど見えない石を「火山岩」と呼びます。
彼らは、火山噴火によってマグマが地表に飛び出し、冷たい空気や水に触れて一瞬で固まってしまいました。あまりに急激に冷やされたため、結晶が大きく育つ時間がまったくなかったのです。せっかちなマグマから生まれた、ちょっぴり慌てん坊な石たちと言えるかもしれません。
物語は火成岩だけじゃない!石たちの多様な世界
石の世界は奥深く、火成岩のほかにも様々な物語を持つ石たちがいます。
- 砂岩: 砂が固まってできた石
- 泥岩: 泥が固まってできた石
- チャート: とても硬い、生き物の死骸からできた石
これらの石を手に取り、「これはどんな場所で、どうやってできたと思う?」と問いかけることで、子どもたちの想像力と探究心はさらに広がっていくでしょう。火成岩の分類は、単なる言葉の暗記ではありません。石ころ一つを手に取り、その色と結晶の大きさから、地球内部のダイナミックな活動に思いを馳せる、壮大な物語の解読作業なのです。ぜひ、この探偵ごっこを通じて、石の物語を語りかけてみてください。
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