【科学監修】江頭2:50を絶叫させた1万ボルトの静電気、その正体を科学教師が解説!(エガちゃんねる)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

冬にドアノブを触って「バチッ!」、セーターを脱ぐと「パチパチ…」。誰もが経験したことのある、あの小さな痛みと驚き。そう、静電気です。普段はちょっと厄介なだけのこの現象ですが、そのパワーを極限まで高めると、なんと人気芸人さんを絶叫させるほどのエンターテイメントになるんです!

実は先日、あの大人気番組「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」から、「静電気の実験をしたいので、装置を貸していただけませんか?」と、驚きのご連絡をいただきました。今回は、そんなテレビの裏側でどんな科学が動いていたのか、江頭2:50さんの体を張った実験を題材に、静電気の秘密を一緒に探っていきましょう!

テレビの裏側:科学実験はこうして準備された

番組にお貸ししたのは、私が個人で所有している「バンデグラフ」という、静電気を安全に大量に発生させることができる科学実験装置です。

「どうすればうまく放電(ほうでん)するのか?」「安全性は?」「芸人さんたちに、どういう役割分担をしてもらえば面白い絵が撮れるのか?」など、科学的なアドバイスをさせていただきました。そして、実際に放送されたのが、こちらの衝撃的な映像です!(途中からとなります)

まさに体を張った実験ですね!では、このとき江頭さんの体で一体何が起こっていたのでしょうか?

ミクロの世界:静電気と「電子の大移動」

動画では、江頭さんがバンデグラフの金属球に触れることで、体に電気を溜めています。

この装置は、内部のベルトが高速で回転することで、電気の粒である**「電子(マイナスの電気)」を大量にかき集め、金属球へと送り込みます。金属球に触れている江頭さんの体は、いわば「マイナス電気のタンク」のような状態になるのです。一方、相手役のブリーフ団(ショッカー)さんは、地面とつながっているため、電気的にバランスの取れた「通常状態(プラスマイナスゼロ)」です。

マイナスの電気がパンパンに溜まった江頭さんの体から見ると、通常状態のショッカーさんは、まるで砂漠の中のオアシス! たまりにたまった電子たちが、一斉にショッカーさんめがけて大移動しようとします。そして、指先が触れ合った瞬間、空気の壁を突き破って電子が飛び移る!これが、あの火花「放電」の正体です。

いわば、小さなカミナリを人工的に作り出しているのと同じ現象なのです。

1万ボルトは危険じゃないの?「電圧」と「電流」の話

映像を見て、「1万ボルトって、感電したら危ないんじゃないの?」と心配になった方もいるかもしれません。ご安心ください。これには科学的な理由があります。電気の危険性を考えるとき、大切なのは**「電圧(でんあつ)」と「電流(でんりゅう)」**の2つを区別することです。

電圧(V):電気を流そうとする「圧力」の強さ。

電流(A):実際に流れる電気の「量」。

よく滝に例えられますが、電圧は「滝の高さ」、電流は「流れる水の量」と考えるとわかりやすいです。バンデグラフで作られる静電気は、電圧(滝の高さ)は1万ボルトと非常に高いですが、電流(水の量)はごくわずかしかありません。だから、「バチッ!」という衝撃と痛みはあっても、体に深刻なダメージを与えることはないのです。これが家庭用のコンセント(電圧は100Vと低いですが、電流は大量に流れる)との大きな違いですね。

静電気が苦手な人にとっては、江頭さんのように絶叫してしまうほどの衝撃ですが、その裏側には、こんな壮大な電子の大移動と、安全な科学の知識が隠されていたのです。

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