「えっ、ここなの?」実物の鳥の心臓を解剖して分かった、驚きのポンプ機能(鳥の心臓の解剖)

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

空高く舞い上がる鳥たち。あんなに激しく羽ばたき続けるエネルギーは、一体どこから湧いてくるのでしょうか?その秘密は、彼らの小さな体の中に隠された「超高性能なエンジン」にあります。それは、私たち人間・哺乳類と同じ2心房2心室、あるいはそれ以上に精巧に作られた心臓です。

今回は、75分という特別な授業時間を使って生徒たちと共に行った、鳥の心臓(鶏のハツ)の解剖レポートをお届けします。この小さな臓器を通じて、生命がどのようにしてエネルギーを全身に送り出しているのか、その神秘に迫りました。なお鳥の心臓の解剖については、同僚のO先生から教えていただきました。

国産 鶏ハツ 2kg

豚の心臓の方が人間の心臓とほとんど同じ大きさで迫力があります。鳥の心臓は発注から含めてお手軽にできますが、豚の心臓の方が値段もしますし、少し高いということが難点ではあります。

豚の心臓解剖「本物」に勝る教材なし!心臓解剖で学ぶ生物のしくみ

実物に触れることで見えてきた、教科書だけでは分からない生命の精巧なエンジニアリングをぜひご覧ください。

注意点もスライドにして伝えています。

まずは構造をイメージしよう

解剖を始める前に、まずは心臓の基本的な仕組みを頭に入れておきましょう。動物の進化の歴史をたどると、魚類は「1心房1心室」、両生類は「2心房1心室」ですが、鳥類と哺乳類はもっとも進化した2心房2心室という構造を持っています。

酸素をたっぷり含んだ血液と、二酸化炭素を運ぶ血液を完全に分けることができるこの仕組みこそが、鳥たちが高い体温を保ち、激しく空を飛ぶための高い代謝を支えているのです。

今回の授業では、スーパーなどでも手に入る「鶏のハツ」を教材として用意しました。2kgのパックには130個ほど入っており、クラス全員が一人一つずつ手に取って観察するのに最適です(2026/10/23に買ってみた袋の中には119個の鳥ハツが入っていました。2kgでも様々なようです。大きさは確かに大きめだったように感じます)。

袋に入っている様子。元々は冷蔵されていたものを水の入った容器に入れて、解凍して使用します。こちらは解凍されたものです。

バットに出した時の様子です。

心臓一つはこんな感じ。シャーレを使って配布します。

ひっくり返した様子

解剖の前に、以下の動画で動く心臓のイメージを膨らませておくと、観察のポイントがより明確になります。

キッチンバサミで挑む、心臓の内部観察

解剖と聞くと「メス」を使う難しいイメージがあるかもしれませんが、中学校の授業ではキッチンバサミが非常に優秀なツールになります。刃先を上手く使うことで、小さな心臓の構造を壊さず、安全に切り開くことができるからです。

観察の手順

1. 心臓を縦方向にカット!

まずはキッチンハサミで縦に真っ二つに切り、断面の様子を眺めます。このとき、心臓が単なる筋肉の塊ではなく、中に部屋(空洞)があることを自分の目で確かめるのが第一歩です。

大きな穴と小さな穴があるのに気がつきます。大きな穴が左心室・小さな穴が右心室です。

実際に切り開いた断面を見た生徒たちからは、あちこちで驚きの声が上がりました。鳥の心臓は非常にコンパクトなため、心房を見つけるのには少しコツがいりますが、それ以上に全員の注目を集めたのが右心室のサイズです。

左心室に比べて、鳥の右心室は驚くほど薄くて小さいのです。「えっ、これだけ?」と疑ってしまうほどですが、それに対して全身へ血液を送り出す左心室の壁は分厚く、強靭な筋肉の塊でした。

肺というすぐ隣の臓器に血液を送る右心室と、全身の隅々まで、時には重力に逆らって血液を押し出す左心室。この筋肉の厚みの圧倒的な差こそが、効率を追求した生命の設計図なのです。

2. 横から切れ込みを入れて広げる さらに構造を詳しく見るため、横からハサミを入れ、全体の3分の2ほどまで切れ込みを広げてみます。こうすることで、左心室、右心室、そして各心房がどのように配置され、つながっているのかが見えてきます。

最後に、血液がどの方向へ流れていくのかを確かめる実験を行いました。左心室に楊枝を差し込み、慎重に奥へと押し進めてみます。すると、スッと楊枝の先が大動脈から顔を出しました!

手前の楊枝が大動脈

この瞬間、バラバラのパーツに見えていた心臓が、一つの完璧なポンプシステムとしてつながっていることが実感できます。図鑑の絵だけでは得られない、実物ならではの圧倒的な説得力。小さな鶏のハツは、私たちが生きるために一瞬たりとも休まず動いている心臓の尊さを教えてくれました。ぜひ、みなさんの学校でもこの「いのちのエンジニアリング」を体験してみてください。

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