肘が地面に!?バイクの衝撃動画から学ぶ「遠心力」の凄まじさ

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

サーキットのコーナーを猛スピードで駆け抜けるバイクレース。ライダーたちは地面スレスレまで車体を傾けて曲がっていきます。「あんなに傾けて、なぜ転ばないんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?実はあの瞬間、ライダーたちは目に見えない巨大な力と格闘しているのです。今回は、物理の教科書に出てくる「遠心力」が、いかに凄まじいものかを視覚的に教えてくれる衝撃の動画をご紹介します。

倒れそうで倒れない?ギリギリの科学

動画をご覧になりましたか? まるで地面にキスをしそうなほど、肘(ひじ)が地面についているような体勢で曲がっていきます。すごい迫力ですよね。これは単なるパフォーマンスではありません。強大な遠心力に対抗するための、理にかなったフォームなのです。

画像:「バイクの遠心力」の動画より引用

画像:「バイクの遠心力」の動画より引用

物体がカーブを曲がるとき、外側へ飛び出そうとする力(遠心力)が働きます。スピードが出れば出るほど、そしてカーブが急であればあるほど、この力は強くなります。もし棒立ちのままカーブに入れば、バイクは外側へ吹っ飛ばされてしまいます。

そこで、ライダーは車体を内側に傾けます。こうすることで、重力(内側に倒れようとする力)を使って、外側への遠心力を打ち消し、バランスを取っているのです。あの傾きは、「遠心力と重力のつり合い」が見事にとれている証拠なんですね。

画像:「バイクの遠心力」の動画より引用

体をずらすテクニック「ハングオフ」と重心

さらに動画をよく観察してみると、ライダーは車体だけでなく、自分の体(お尻)を大きくイン側(内側)にずらしてぶら下がるようにしているのがわかります。これは「ハングオフ(ハングオン)」と呼ばれる技術です。

自分の体重(重心)をカーブの内側に移動させることで、車体を無理に傾けすぎなくても、強い遠心力に耐えられるようになります。しかし、この動画のライダーは、その限界を超えて肘まで接地させています。これは、現代のタイヤの進化と、ライダーの驚異的なバランス感覚、そして物理法則が完璧に噛み合った、まさに極限の物理実験と言えるでしょう。

遠心力と戦うというのは、これほどまでにダイナミックなことなのか!と感じさせられます。皆さんも次に自転車でカーブを曲がるとき、無意識に体を傾けている自分に気づくはずです。それは、あなたの脳が瞬時に物理計算をしている証拠なんですよ。

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