磁石でテレビの画面がぐにゃり!?ブラウン管に隠された物理の秘密

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

皆さんは昔のテレビ、あの分厚いブラウン管テレビが、一体どんな仕組みで映像を映し出していたかご存知でしょうか? 今や薄型テレビが主流となり、ブラウン管テレビを見る機会も少なくなりましたが、実はあのテレビの中には、驚くほど面白い物理の原理が隠されているんです。

ブラウン管テレビの心臓部には、「電子銃」と呼ばれる装置があります。

ここから目に見えない小さな粒、「電子」がものすごい速さで発射され、テレビの画面(スクリーン)にぶつかることで光を放ち、映像を作り出しているんです。まさに、電子の粒が描く光の絵画、といったところでしょうか。

さて、今日ご紹介するのは、そんなブラウン管テレビを使った、ちょっと懐かしくて、でもとってもワクワクする実験です。いらなくなったブラウン管テレビがある方は、ぜひ試してみてほしいのですが、今回はその様子を皆さんにご紹介します。題して、「ブラウン管テレビに磁石を近づけたらどうなる!?」です。

電子と磁石のダンス:映像が歪む秘密

ブラウン管テレビに磁石を近づけると、一体何が起こるのでしょうか? 実際に試してみたのが、こちらの映像です。

テレビの映像が大きくぐにゃりと歪んでしまいましたよね。これは、磁石が作り出す磁場が、テレビの中を高速で飛んでいる電子の動きに影響を与えている証拠なんです。

電子のような電荷を持った粒子が磁場の中を運動すると、「ローレンツ力」と呼ばれる特殊な力を受けます。この力は、電子の進む向きと磁場の向きの両方に垂直な方向に働くため、電子の軌道が曲げられてしまうのです。

ブラウン管テレビでは、電子は本来、画面の決められた場所にまっすぐ飛んでいき、映像を作り出しています。しかし、磁石を近づけることで、この電子の軌道がローレンツ力によってずらされてしまうため、映像が歪んで見えたり、色が変化したりするのです。

身近な現象から物理を学ぶ

ブラウン管テレビは、今ではほとんど見かけなくなりましたが、その中には電子の運動磁場、そしてローレンツ力といった、物理学の基本的ながらも非常に重要な概念が詰まっています。

今回の実験を通して、目に見えない電子の存在や、磁石の力がどのように作用しているのかを、視覚的に実感できたのではないでしょうか。身の回りの「当たり前」の中にも、実は奥深い科学の原理が隠されています。ぜひ、皆さんも日常の様々な現象に「なぜ?」という疑問を投げかけて、科学の不思議を探求してみてくださいね!

お問い合わせ・ご依頼について

科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・運営者・桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中

科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!