ぶつかると消えるボール?「波」のフシギな世界へようこそ!「素元波」って何?【スマホで物理#07】

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

#07 波のフシギな性質

もし、投げた野球ボールが2個、空中でぶつかったらどうなるでしょう? カキーンと弾き返されたり、砕けたりしますよね。では、もしボールがぶつかった瞬間に「スッ…」と消えたり、逆に2倍の大きさになったりしたら…?

「そんなの魔法だ!」と思いますよね。でも、実は「波」の世界では、それが当たり前に起こるんです。

ここまでは波の「キホン」を学んできましたが、今回からはいよいよ波の「本性」とも言える、不思議で驚くべき性質に迫ります。サイエンストレーナーの桑子研です。ようこそ、波のワンダーランドへ!

#06のまとめ(前回の復習)

  • 横波表記された縦波をもう一度縦波に直すことができる。
  • 3ステップ解放「縦波への変形1・2・3」

1. ボール(媒質)を置き、上下に矢印を伸ばす 2. 矢印が上に伸びたら右に、矢印が下に伸びたら左に倒す (※ 波の進行方向が右の場合) 3. 矢印の頭にボールを移動させ「疎」「密」を記入

前回は、ちょっとややこしい「縦波」(音など)を、どうやって目に見える「横波」の形で表すか、というテクニックを学びました。これがわかると、目に見えない音の波も、紙の上で考えられるようになりますね。

波が持つ「5つの魔法」

さて、ここからが本題です。波の基礎(波長、振幅、縦波、横波など)を学んだ私たちが次に知るべきは、「波だからこそ起こる、不思議な性質」です。

冒頭でお話ししたように、もし波が野球ボールのような「物体」だったら、ぶつかってもお互いをすり抜けたり、合体したりはできません。でも、波は違います。ボールとボールがぶつかると消えたり

大きくなったりする現象が平気で起こります。

普通では、考えられませんよね。

でも、この「波の魔法」を理解すると、私たちの身近にある光や音の不思議な現象が、すべて「ああ、だからか!」とつながってくるんです。例えば、ノイズキャンセリングイヤホンが周りの音をスッと消せるのも、まさにこの波の性質を利用しています。今回は、そんな波の性質を大きく5つに分けて紹介していきます。これらの性質を一つ一つ見ながら、波のヒミツにせまっていきましょう。

波の性質① すべての波の「タネ」:素元波

では、さっそく性質の1つ目です。洗面器にいれた水の水面をイメージしてください。この水面のように「媒質(波を伝えるもの)」が2次元空間に広がっている場合、波はどのように広がって行くのでしょうか。

水面を指でちょん、と突っついてみます。

これを少し立体的に見てみると…

(Grapherという作図ソフトで描きました)

この図のように、波は突っついた場所を中心として、円形(正しくは同心円状)に広がっていきます。この波が始まった場所(指で突っついた点)を「波源(はげん)」といいます。一番外側の波紋の様子(真上から)を時間順に追っていくと…

Scratchをつかってシミュレーション教材を作りました。こちらから実際に試すことができます。(※PC推奨。スマホの場合はPuffinブラウザなどが必要な場合があります)次のものは、その動画です。

実際に触って試せるインタラクティブ教材も作りました。こちらからどうぞ。

このとき、波の「山」や「谷」の、同じ高さの場所をつなげた線を「波面(はめん)」といいます。水面の波紋でいえば、あの丸い輪っか一つひとつが波面です。

波は波源から離れるように、放射状に進みます。ここで面白い性質があります。それは、波の進む方向と、波面は必ず垂直に交わるということです。

このように、1つの点(波源)から広がる最も基本的な波を「 素元波 (そげんは)」といいます。これは、いわば「波のタネ」あるいは「波の赤ちゃん」のようなもの。「たった1点の波紋のこと?」と侮ってはいけません。実は、この素元波という考え方こそが、今後学ぶ「波が障害物をよける(回折)」や「波がはねかえる(反射)」といった、あらゆる波の複雑な現象を説明できてしまう「マスターキー」になるのです。次回は、この素元波が持つすごい力(ホイヘンスの原理)について見ていきましょう。お楽しみに。(^^)

回折は波の子供(素元波)で考えてみよう【スマホで物理#08】

参考情報 動画授業

動画にて解説をしました。プリントをダウンドードしてご覧ください。

ホイヘンスの原理

波のいろいろな性質について、ホイヘンスの原理をつかって統一的に説明をしてみましょう。

インタラクティブ教材 ・素元波  ・線状の波 ・回折反射 ・屈折

PDF(ホイヘンス)

Jam(ホイヘンス)

 

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