「放射性崩壊」と「ビールの泡」の意外な関係!?微積で読み解く物理の世界(高校物理と微積分)
微積で読み解く放射性崩壊 ― 泡でわかる指数関数の世界
理科の授業で「放射性物質の崩壊」を扱うとき、どうやってその数量変化を説明していますか?中学校ではグラフの形や半減期などを扱いますが、高校物理ではさらに一歩進んで、指数関数を使ったモデル化に取り組みます。
ただし、高校物理の検定教科書の多くでは、数学との進度の関係から微分積分を用いずに説明されています。しかし、実は微積を使うことで、崩壊の仕組みがとてもスッキリと、論理的に理解できることがあります。
今回ご紹介するのは、「指数関数的な減少」を身近な現象を通して捉え直す授業アイディア。理論をしっかり学んだ上で、なんとビールの泡を使って実験的に可視化してしまおうという、ちょっとユニークな実践です!
放射性崩壊の基本モデル
放射性物質が崩壊する割合は、その時点に存在している原子の数 N に比例します。よって、次のような微分方程式で表されます。
\[\frac{dN}{dt} = -k N\]
ここで λ(ラムダ)は崩壊定数、マイナスは「数が減っていく」ことを示しています。
変数分離して積分すると…
変数分離をすると、
両辺をtで積分すると、
また初期条件から、時刻0のときの物質の数をN0とすると、
となるので、このことから式Aは、
となります。これをグラフにすると、次のようになります。
身近な題材で実験してみた!
「とはいえ、指数関数って難しい…」と思ったあなた。実はこの現象、身近なもので再現できるんです!
それが「ビールの泡」。泡の数もまた、時間とともに減っていきます。その減少速度は、今ある泡の量に比例しているので、放射性崩壊とよく似た数学モデルが使えるのです。
ということで、科学部の生徒と一緒に実験!
• 左:ビール
• 右:コーラ(→こちらは泡が速く消えて不向き)
ビールの泡の高さを一定時間ごとに記録し、グラフにしてみると…
なかなかきれいな指数減少のカーブに近づいています。初期値や切片のずれは多少ありますが、**「理論と現象の対応」**を生徒が実感するには十分な教材です。
国際バカロレアでも紹介された内容!
ちなみにこの「ビールの泡と指数関数」のネタ、なんと国際バカロレアの物理の教科書にも掲載されているんです。
こうした身近な例から難しい概念に迫るアプローチは、グローバルでも高く評価されています。
微積分を使うことで、放射性崩壊という現象の数理的な本質がクリアに見えてきます。そしてそれをビールの泡という身近な現象で再現できるのは、教える側としても面白く、教わる側にとっても印象に残るはず。次回は、「崩壊定数」と「半減期」の関係について、もう一歩踏み込んでいきます!
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