お弁当のフタで波の動きを感じよう!
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
海の波、コンサートで揺れるペンライトの光、そして今あなたが聞いているかもしれない音… 私たちの世界は「波」であふれています。でも、不思議に思ったことはありませんか? 海の波は岸に押し寄せてくるのに、そこに浮かぶボールは上下に揺れるだけ。スタジアムで起こるウェーブは観客席をぐるりと一周しますが、一人ひとりはその場で立ったり座ったりしているだけです。
波は「進む」のに、波を伝えるものは「その場に留まる」。このなんとも不思議な現象を、どうすれば目で見て理解できるでしょうか?今日は、そんな波の正体を解き明かす、とっておきの秘密道具をご紹介します!
見えない「動き」を、見えるようにしたい!
理科の授業で波の動きと、波を伝える「媒質(ばいしつ)」の動きの違いを説明するのは、先生にとっても悩みのタネです。「波が進むなら、媒質も一緒に進むんじゃないの?」という疑問は、とても自然なものだからです。このもどかしさを解消したい!という思いで作ったのが、この手作り立体モデル。なんと、お弁当のフタを16枚重ねて作りました。

一枚一枚のフタに、少しずつずらした波の形を描き、それを重ねることで、波の「時間変化」を空間的に表現しています。百聞は一見に如かず。まずは、こちらの動画をご覧ください。
波が運ぶのは「エネルギー」というメッセージ
動画の中で、波形全体は右へ右へと進んでいくように見えますね。これが波の進行です。では、フタに貼られた青いシールに注目してください。シールは右へ進むのではなく、その場で上下に振動しているだけなのがわかります。このシール一つ一つが、水や空気の粒といった「媒質」の動きを表しているのです。

つまり、波とは「物質そのものが移動するのではなく、振動という『状態』、すなわちエネルギーが隣へ隣へと伝わっていく現象」なのです。まるで伝言ゲームのようですね。言葉という「情報」は伝わりますが、伝えた人自身は移動しません。
金色のシールが教えてくれること

さらに、金色のシールにもご注目。青いシールの少し後ろで、全く同じように上下の振動を繰り返しています。これは、波のエネルギーが少し遅れて伝わってきたことを示しています。このモデルを使えば、波が時間差で伝わる様子まで、直感的に理解できるのが素晴らしいところです。このように、媒質の振動方向と波の進行方向が垂直な波を「横波」といい、光や地震のS波などがその仲間です。ちなみに、媒質が前後に振動する「縦波」の代表は「音」です。
みなさんの周りには、どんな波が隠れているでしょうか?ぜひ、このモデルをヒントに、身の回りの不思議を探求してみてください。もし「こんな面白い教材があるよ!」という情報があれば、ぜひ教えてくださいね!
お問い合わせ・ご依頼について
科学の不思議やおもしろさをもっと身近に!自宅でできる楽しい科学実験や、そのコツをわかりやすくまとめています。いろいろ検索してみてください!
・科学のネタ帳の内容が本になりました。詳しくはこちら
・運営者の桑子研についてはこちら
・各種ご依頼(執筆・講演・実験教室・TV監修・出演など)はこちら
・記事の更新情報はXで配信中!
科学のネタチャンネルでは実験動画を配信中!



