【壁ドンで理解!】なぜ手が痛いの?実はカンタン「作用反作用の法則」

桑子研
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

間違えやすい!作用反作用の法則と力のつり合い

「理科は得意なはずなのに、物理だけはなぜか苦手…」
「教科書を読んでも、力がどうなっているのか全然イメージできない…」

そんな風に悩んでいる人はいませんか?物理の授業で、たくさんの矢印が描かれた図を見て、「うわ、難しそう…」と、思わず目をそらしたくなる気持ち、とてもよくわかります。

中でも、多くの人がつまずくのが、「作用反作用の法則」と「力のつり合い」です。どちらも向きが反対で同じ大きさの力なのに、何が違うのか、どう使い分ければいいのか、頭の中がごちゃごちゃになってしまいますよね。でも、安心してください。実は、この2つの法則を見分けるには、たった1つのポイントを押さえればいいんです。

そのポイントとは、「どの物体に着目しているか」ということ。

これを理解すれば、もう二度と迷うことはありません。今日は、この2つの法則をしっかり見分けるための秘密の方法を伝授します。物理の面白さは、ここから始まります!

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○作用反作用の法則

【今日のポイント!】力は物体と物体の間で**「作用力」と「反作用力」**という2つのセットで現れる!

皆さんは、壁を強く叩いたとき、手が痛くなった経験はありませんか?なぜでしょう?それは、あなたが壁に力を加えた(作用力)と同時に、壁もあなたの手に力を返した(反作用力)からです。

力は、決して単独で発生することはありません。必ず、**「力を与える側」と「力を受ける側」**という2つの物体の間でペアで発生します。この関係が「作用反作用の法則」です。

壁の立場

壁に注目してみましょう。当たり前ですが、壁は人から力を受けています。この力は「人から壁が受ける力」ですね。

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人の立場

次に、人に注目します。壁を叩いたので、手が痛い。これは壁から押されるためです。

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人の立場

この力は「壁から人が受ける力」です。壁を強く叩けば叩くほど、手が痛くなるように、実はこの2つの力の大きさは全く同じなんです。このように、物体Aから物体Bに力(作用力)がはたらくとき、物体Bから物体Aにも、同じ大きさで逆向きの力(反作用力)がはたらきます。これを作用反作用の法則といいます。

作用反作用のペアを見つけるコツは、「〇〇から〇〇が受ける力」というように、主語と目的語を入れ替えてみることです。

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作用力:からが受ける力 反作用力:からが受ける力

○作用反作用の法則と力のつり合い

ここからが最も重要なポイントです。作用反作用の力は、決してひとつの物体にはたらいて打ち消し合ったりはしません! 作用力と反作用力は、お互いの物体、それぞれにはたらく力です。これに対して、力のつり合いは、1つの物体にはたらく力がバランスを取るということを指しています。

この違いをしっかり頭に入れて、下の図で考えてみましょう。

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この物体AとBにはたらく力F₁〜F₆の中で、作用反作用のペアを探してみましょう。

F₂は「物体Bから物体Aが押される力」

F₃は「物体Aから物体Bが押される力」

どうでしょうか?主語と目的語が入れ替わっていますね。このF₂とF₃が作用反作用のペアです。

また、

F₄は「地面から物体Bが押される力」

F₆は「物体Bから地面が押される力」

これも、主語と目的語が入れ替わっているので、F₄とF₆が作用反作用のペアになります。

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次に、力のつり合いを見てみましょう。力のつり合いを考えるときは、特定の1つの物体に注目します。例えば、物体Aにはたらく力は、F₁とF₂の2つです。

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F₁は「地球から物体Aが引かれる力」(重力)、F₂は「物体Bから物体Aが押される力」(垂直抗力)です。このように、どちらの力も「物体Aにはたらく力」なので、これらがつり合いの関係にあることがわかりますね。

次に、物体Bに注目してみましょう。

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F₄、F₃、F₅は、どれも「物体Bにはたらく力」なので、つり合いの関係になります。

このように、たった1つのポイント**「力がはたらく物体は1つか、2つか」**を意識するだけで、作用反作用の法則と力のつり合いを簡単に区別できます。ニュートンがまとめた運動の3つの法則の中でも、第3法則である「作用反作用の法則」は少し難しく感じるかもしれませんが、今日ご紹介した方法でぜひマスターしてくださいね!

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